日本航空(以下、JAL)は7月23日、国内線では初となる機内インターネット接続サービス「JAL SKY Wi-Fi」を導入する。今回、一足先に体験できたので、使い勝手をレポートしてみたい。
今回の体験試乗機は、羽田~福岡間に就航しているボーイング777-200型機。「JAL SKY Wi-Fi」はインテリアや座席をリニューアルした新サービス「JAL SKY NEXT」の一環であり、今後、777-300ER、767-300、767-300ER、737-800と合わせ全77機に順次導入される。
国内線のネット先進国・アメリカの事情
最近は国際線で衛星を使ったインターネット接続サービスが急速に普及しているが、国内線のネット先進国といえばアメリカである。国際線以上のスピードでWi-Fiが使える便が増えている印象があり、普及のスピードも速ければ、通信速度のスピードも速いのだ。筆者は実際にアメリカの国内線で利用したことがあるが、上空ではなく地上でネットにつないでいるようなスムーズさを感じた。
そのスピードの秘密は、アメリカの国内線はハワイとアラスカ州の一部を除き、洋上(海の上)を飛ぶことがないため、衛星ではなく地上のアンテナから電波を送る仕組みを使って機内Wi-Fiのサービスを提供しているからだと思われる。
ところが国際線や日本の国内線は、「洋上飛行が多いことと当局の規制がアメリカほど緩和されていないため、衛星を使ったシステムを採用せざるを得ない」(関係者)という事情がある。とはいえ、今回JALはアメリカの航空会社と同じGogo社を採用している。
この企業はアメリカ国内のみならず、航空機向けのインターネットおよび機内デジタル・エンターテインメントの世界的なリーディングカンパニー。同社が提供する通信容量の大きさやスピード、混信の懸念の少なさなどの点で最良とされる衛星通信「Kuバンド・システム」をJALも採用している。
SNSやウェブサイトの閲覧は快適
実際、「JAL SKY Wi-Fi」でSNSやウェブメールの利用、各種ホームページやウェブニュースの閲覧などをしてみたが、どれもサクサクとした感触でアメリカ国内線のそれと全く変わらない快適さだった。「YouTube」の10分程度の動画なら、それほど遅いとは感じなかった。
ただ、今回は体験試乗だったため、10人程度しかアクセスがない状況である。あまりに大きなデータを扱ったり多くの乗客が一斉に動画を見始めたりすれば、1機に割り当てられる30MBの回線速度では通信速度が遅くなる可能性も否定はできず、状況次第といった面もあるだろう。
なお、料金プランの設定はきめ細かく良心的な印象で、国内線はフライト時間が短いため、最低30分・400円からと安めだ。また、スマートフォンとモバイル端末が1フライト500円または700円(飛行距離により異なる)、タブレットとラップトップパソコンが500円、700円、1,200円(同)と細かく設定され、例えばスマートフォンでSNSを利用する観光旅行者などは、より安価に利用できるように考えられている。
無料の機内コンテンツを充実させていく
また、インターネットに接続せず機内で提供されるコンテンツだけを楽しむなら無料だ。「JAL SKY Wi-Fi」には国際線に比べエンターテインメントが手薄な国内線のサービスを充実させるという目的もあり、観光やスポーツ、音楽、ビジネスなどの多彩なカテゴリーから乗客の要望を踏まえつつコンテンツの充実を図っていく。
サービス開始当初(7月・8月)は旅先の観光地情報「SKYるるぶ」や「あたらしあらし」、「カンブリア宮殿」、「ひつじのショーン」などがラインアップされている。機内のコンテンツはインターネットに接続しないため、通信速度が落ちる心配もほとんどない。
若い乗客はスマートフォンやタブレットで友人とSNSを楽しみ、ビジネスパーソンはパソコンで仕事を効率よくこなす。そんなアメリカ国内線のような光景が今後、日本の空の上でも普通に見られるようになりそうだ。
筆者プロフィール : 緒方信一郎
航空・旅行ジャーナリスト。旅行業界誌・旅行雑誌の記者・編集者として活動し独立。25年以上にわたり航空・旅行をテーマに雑誌や新聞、テレビ、ラジオ、インターネットなど様々なメディアで執筆・コメント・解説を行う。著書に『業界のプロが本音で教える 絶対トクする!海外旅行の新常識』など。