年内にようやく登場する個人向けOffice 365

日本マイクロソフトは7月2日、2015年度の経営方針を報告する記者会見を行った。その概要は大河原克行氏の記事に詳しくまとめられているので、本レポートでは、同社代表執行役社長の樋口泰行氏が発言した「コンシューマー向けクラウド展開として、Office 365個人向けを2014年内に提供開始」に注目する。

Office 365は、オンラインアプリ版の「Office Web Apps」やデスクトップアプリ版のOfficeスイートと、Office OnlineやOneDrive for Businessなどを組み合わせたクラウドサービスを指すブランド名である。国内では現在、法人向けに展開しており、価格は最下位プランであるOffice 365 Small Businessでユーザー1人当たり年額4,920円(月額490円)と、決して高いものではない。

「2015年度経営方針記者会見」で個人向けOffice 365を提供すると発表

「Office 365 Small Business Premium」の試用版

米Microsoftでは、個人向けエディションとして以前から「Office 365 Home」や「Office 365 Personal」を展開してきた。前者は家族向けプランで年額99.99ドルながらも5台までのPC/タブレットで使用可能。後者は個人向けプランに相当し、年額69.99ドルで使用できるのはPC/タブレット1台のみとなる。

Office 365の「Outlook Web Apps」を起動した状態。無償で使用可能な「Outlook.com」とはデザインも機能も異なる

MicrosoftのOffice 365個人向けプラン紹介ページ

多くのユーザーは、「なぜ日本で個人向けプランを展開しなかったのか」という疑問が頭に浮かぶはずだ。関係者はこのタイミングでの発表について口が堅かったものの、以前からの取材をまとめると、"国内のOffice利用シーンが影響している"ようだ。

そもそも我々はWordやExcelをビジネスアプリケーションとして認識している。仕事とプライベートの境目も不明確で、サラリーマンが業務で使用する書類を持ち帰り、自宅で完成させるといった話は枚挙に暇がない。

だが、米MicrosoftはOffice 365を「for home」「for business」として分別し、前者はビジネス利用を制限しているのである。デスクトップアプリのOffice 2013でも、海外では「Office 2013 Home and Student」というエディションが一般的だが、日本マイクロソフトは国内独自の「Office 2013 Personal」を用意した。

米MicrosoftのOffice 365公式ページ

Office 2013 Home and StudentとOffice 2013 Personalでは構成も異なり、「Personal」にはPowerPoint 2013を含まない代わりにOutlok 2013を加えている (Home and Studentとは逆)。このように市場背景や用途が異なり、米国のスタンスをそのまま日本に持ち込んでもうまくいかない、との理由からOffice 365の日本市場投入が遅れてきたのだ。

デスクトップ版Officeスイートとの価格差は?

樋口氏はOffice 365 for Consumerの市場投入タイミングとして、「2014年度ではなく、カレンダーの2014年内」と強調していた。Office 365はすでに完成した製品のため、営業体制なども含め数カ月内に準備完了となるはずだ。

会見で樋口氏が「Office 365 for Consumerを日本市場に最適化する」と述べた点について、執行役コンシューマー&パートナーグループ オフィスプレインストール 事業統括本部長の宗像淳氏は次のように補足した。「日本はMicrosoft Officeスイートのプレインストールモデルが多く存在するため、パートナー企業を築き上げたエコシステムを最大限に活用する」という。

筆者の推測だが、日本マイクロソフトとしてはOffice 2013を生かしつつ、Office 365 for Consumerという新しい商品を投入するため、各方面にネゴシエーションが必要なのだろう。

さて、多くのユーザーはOffice 2013をインストールし、利用していると思うが、年内登場予定のOffice 365 for Consumerへ切り替えるべきだろうか。そこで国内のOffice 2013と米国のOffice 365を比較してみた(1ドル=102円で計算)。

Office 2013とOffice 365の比較表

PowerPointを含む「Office Home & Business 2013」(37,584円)が比較対象には適切だったかもしれないが、いずれにせよ、Office 365 Personalであれば4年半の利用でOffice Personal 2013とほぼ同額となる。また、Office 365には20GBのOneDriveと60分/月のSkype無料利用権がおまけで付く。Office 365 Homeなら、家族も利用できるのでさらに有利だ。

日本版となるOffice 365 for Consumerの詳細な構成は未発表だが、既存のOfficeスイートユーザーにアピールするため、海外で展開中のOffice 365 for home / for businessから若干の変更を加えてくると思われる。

さらに前述した日本未公開のOffice for iPadも、同様のタイミングでリリースさせる可能性が高い。日本市場に最適化したOffice365 for Consumerが、どのような形で披露されるのか。今から楽しみだ。

日本市場への投入時期が未定の「Office for iPad」

阿久津良和(Cactus)