KDDIが6月25日に新料金プラン「カケホとデジラ」を発表した。これにより、NTTドコモ、ソフトバンク、KDDIの主要3キャリア各社の新料金プランが出揃ったことになる。各社の新料金プランは、国内の音声通話を定額にした基本プランと、パケット通信のデータ量を複数から選択できるパケット定額サービスを組み合わせたものとなっており、いち早く新料金プランを導入したドコモに残りの2社が追随した格好だ。
しかし、ソフトバンクとKDDIは、データ量の繰り越しサービスや家族にデータ量を贈れるなど、ドコモの新料金プランには無い独自性をそれぞれ打ち出している。本稿では、各社の新料金プランの違いや注意点を見ていきながら、どのキャリアのプランが最もお得なのかを考えてみたい。
3社の新料金プラン、その概要とは?
まずは各社の新料金プランについて簡単におさらいしておこう。前述の通り、ソフトバンクとKDDIの新料金プランはドコモに追随した形で、ほぼ同様の内容となっているため、ここではドコモの「カケホーダイ&パケあえる」を中心に見ていきたい。
新料金プランの特長のひとつは、国内の音声通話を24時間定額で利用できる「カケホーダイ」で、スマートフォン向けの基本プランは2年契約で月額2,700円。インターネット接続に必要なISP料金の「spモード」が月額300円で、さらに、パケット定額サービスとして、月間データ量の異なる「パケットパック」を選択して組み合わせることになる。
ドコモでは、個人向けプランとして月間2GB・5GB、家族でデータ量をシェアできるプランとして月間10GB・15GB・20GB・30GBの各パケット定額サービスを用意。一方、ソフトバンクの「スマ放題」では、個人・家族の区別なく、ドコモと同様の2GBから30GBまでのパケット定額サービスを用意している。ただし、家族でシェアできるのは10GB以上のプランとなる。
また、KDDIのカケホとデジラでは、上記の2社よりも月間データ量のプランを細かく区分し、月間2GB・3GB・5GB・8GB・10GB・13GBというパケット定額サービスを用意。なお、家族でデータ量をシェアすることはできず、その代わりに「データギフト」として0.5GB単位で家族に自身のデータ量を贈ることができる。
以上が各社の新料金プランの基本であり、パケット定額サービスのラインナップや分け合い方に違いがあるものの、大まかな構成は同様だ。次に、各社の独自サービスなどに的を絞って見ていこう。
各社の独自サービスと長期優遇サービスをチェック
ソフトバンクの新料金プランで独自に提供されるのが、余ったデータ量を翌月に繰り越せる「データくりこし」だ。契約したパケット定額サービスの月間データ量を使い切らなかった場合、100MB単位で翌月に繰り越せるというもので、月間5GB以上のプランが対象となる。
ただし、注意が必要なのが、データくりこしは家族でデータ量をシェアする「家族シェア」とは併用不可である点だ。そのため、家族でデータ量をシェアすることで、パケット定額サービスの料金を節約しようと考えている人は対象外となる。繰り越したデータ量は個人でしか使えないため、月間5GB以上のデータ量を使うことがあるユーザーがおもな対象となり、メリットを受けられるケースはかなり限定的と言えるだろう。
また、KDDIの新料金プランでは、固定回線とのセット割である「auスマートバリュー」の対象となり、2年間最大1,410円の割引を受けられることがメリットとして打ち出されている。なお、パケット定額サービスのプランによって割引額が異なり、月間2GB・3GBのプランの場合は最大934円割引となるほか、5GB以上のプランでも2年経過後は最大934円割引となる。
すでに自宅でも、KDDIまたは同社提携の固定通信サービスを利用している人にとってはメリットのある割引と言えるが、現在は他社の光ファイバーなどを利用している人の場合、トータルの通信費が本当にお得になるかどうかは、他社の割引なども踏まえて、よく検討する必要がある。また、NTT東西の光回線ではサービス卸が開始される予定で、今後、NTTの光回線とドコモのセット割が展開される可能性もあるため、こちらにも注目だ。
また、3社とも新料金プランでは、長期契約者向けの優遇サービスを提供するが、内容は各社で大きく異なっている。最も優遇サービスが手厚いと言えるのがドコモで、契約年数とパケット定額サービスのプランに応じて、300円から2,000円の割引を受けられる。さらに、家族データ量をシェアする場合、代表回線の契約年数によって割引額が決まるため、ドコモを長く使っている人が1人でもいればメリットが大きくなる。
一方、ソフトバンクの長期契約者向け優遇サービスは、毎月の利用料金に応じて付与される「Tポイント」の付与率アップで、通常1,000円につき5ポイントのところ、契約年数3年目以降は10ポイント、11年目以降は25ポイントとなる。1ポイント=1円として、利用料金が10,000円だとしても最大250円の還元となり、ドコモの長期優遇割引と比べると見劣りする内容と言える。
また、KDDIの長期契約者向け優遇サービスは、割引ではなく月間データ量の増量として提供される。契約年数6年目以降が対象となり、プランと年数に応じて毎月0.5GBから2GBを増量。データ量をよく使う人にとっては一定の需要はありそうだが、割引とは違い、メリットは感じづらいかもしれない。
家族利用ではドコモの新料金プランが優位?
それでは、具体的な利用ケースを想定して、各社の新料金プランを検証してみよう。新料金プランでは、パケット定額サービスのデータ量を家族でシェアしたり、家族にギフトとして贈れるため、家族で利用したいと考えている人も多いだろう。
家族で利用する際に、まず検討しておきたいのが、パケット定額サービスのデータ量をどのように分け合うかだ。前述の通り、ドコモとソフトバンクでは、データ量をシェアするデータシェア型を採用しているが、KDDIではデータ量が足りなくなった家族に、ギフトとして贈れるデータギフト型を採用している。
データギフト型は、たとえ家族の誰かが大量にデータ量を消費してしまっても、家族全員が速度制限を受けることがないといったメリットはあるものの、そもそもデータ量が足りなくなった時にギフトを頼んだり、それに応じて自身のデータ残量を確認し、ギフトを申請して贈るという手続きは、かなりの手間になりそうだ。また、ギフトとして贈れるのは0.5GB単位のため、自身が余っているデータ量が0.5GB未満の場合は分け合うことができない。
実際の使い方としては、月末に自身のデータ量が余りそうな場合にギフトとして贈るケースが考えられるが、プレゼントされたデータ量が利用できるのは当月内に限られるため、せっかくデータギフトを貰っても、日数が少なくて使い切れないということも起こりそうだ。
一方、データシェア型であれば、ギフトを贈ったりする手間なく、データ量をシェアし、効率よく利用することが可能。また、もしも毎月利用しているデータ量が足りないと感じた場合に、家族それぞれのプランを個別に見直すことなく、全体のプランのみを見直すだけで良いというのもメリットと言える。家族で利用するのであれば、ドコモやソフトバンクのデータシェア型が便利と言えるだろう。
また、家族で利用する際に注目したいのが、学生などの若者向けの割引サービスだ。ドコモとソフトバンクの新料金プランでは、25歳以下のユーザーを対象とした割引サービスを提供しており、25歳以下のユーザーの基本プランがそれぞれ500円割引になる。また、ボーナスパケットとして、データ量1GBが毎月追加される。
家族でデータ量をシェアしている場合、追加される1GBを皆で利用でき、25歳以下のユーザーが複数人いれば、その人数分だけデータ量が増量される。学生などが多い家族にとっては、かなりお得な割引サービスと言える。なお、KDDIの新料金プランでは、若者向けの割引サービスは用意されていない。
また、長期契約者向けの優遇サービスも、家族で利用する際のポイントになる。前述の通り、ドコモの優遇サービスでは、代表回線の契約年数に応じて、パケット定額サービスの料金が割引される。子どもの契約年数は短いが、父親または母親がドコモを長く利用しているという家庭は多いと思われ、そのような家族にとってはピッタリの優遇サービスだ。
以上のことから考えると、データシェア型で効率よくデータ量をシェアでき、家族全員でメリットを享受できる若者向け割引サービス、長期契約者向け優遇サービスがすべて揃ったドコモの新料金プランが、家族で利用するには最も実用的で優位と言えそうだ。
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ドコモ、KDDI、ソフトバンク3社の新料金プランについて、違いや注意点を見てきた。音声通話定額の基本プランと、選べるパケット定額サービスをベースに、各社それぞれ独自のサービスを盛り込んでいるが、自身や家族の利用状況にそれらのサービスが合っているかどうかは、よく見極めておいたほうが良いだろう。もちろん、音声通話定額をはじめとして、家族でデータ量を分け合えるなど、使い方によっては現在のプランよりもお得になる場合があるので、この機会に家族全員の利用状況を見直し、新料金プランを検討してみてはいかがだろうか。