6月26日(現地時間)、米国で開催されたGoogle IOで、次世代アンドロイドについての発表がありました。ただし、製品や出荷の発表ではなく、開発者向けのプレビュー開始の発表です。このため、名称は"L"とだけ呼ばれ、Lollipopなどの具体的なコードネームについての言及はありませんでした。ただ、アルファベット一文字、特に小文字表示にしてしまうと数字の1と区別が付きにくい文字なので、ここではダブルクオートで括って"L"と表現することにします。

"L"で大きく変わるのは、ユーザーインタフェースの「コンセプト」です。新しいユーザーインタフェースは「Material Desgin」(あるいは単にMaterial。ここではマテリアルとします)と呼ばれます。「マテリアル」は、「デザイン」であり、おもに見た目の変更が大きくなっています。ただし、アプリケーションに対して、「スタイル」というかたちでユーザーインタフェースの方向性を決めています。

たとえば、Kitkatまでは、機能に応じて画面が切り替わっていくという見え方が、マテリアルでは、アニメーションで画面が変化するという見え方が推奨されます。ただし、これは、開発者が細かくアニメーションを作れ、ということではなく、用意されたGUI部品を使うだけで、基本的なアニメーション動作は勝手にやってくれるという感じです。

デザインガイドによればアニメーションとは「共有しているステージの振り付け」とされていて、「(アプリ内の)すべてのアクションは同じ環境の中で行われ」るとなっています。また、画面内のオブジェクトは「(ユーザー)が変形と認識するような途切れることがない連続した経験として提示され」る、となっています。KitKatまでは、アプリは複数のビュー(画面)を持っていて、必要に応じてこれを切り替えて表示していました。実際問題としては、アプリ内で画面構成が大きく変化せざるを得ない部分はどうしてもあるので、ページ遷移的なアニメーションも含まれるとは思いますが、基本的には、ページ切り替えではなく、アニメーションで画面を変化させていくというのがマテリアルの基本になるようです。

また、色使いも大きく変わるようです。アンドロイドは、GUIにテーマ機能があって、差し替えることで全体的な配色などを変えることができました。ただ、あまり使われておらず、システムのバージョンアップで、ときどき変更される程度、あるいは、メーカーによっては、テーマ機能で全体的な統一感と他社との差別化を行っているところもあります。

マテリアルでは、どちらかというとワンポイント的なものも含めて、色、特にパステル調の色を使うようにするのが基本方針のようです。ユーザーの注目を惹くというような目的で、どこかに色を使い、逆に、さほど注目を集める必要がなければ、白いままにしておくといった感じでしょう。このため、これまでのKitkatなどに比べると、全体的に画面の印象が明るくなった感じがあります。

マテリアルの「物質」らしいところとしては、影による奥行き方向の表現があります。たとえば、画面上の2つの領域を区別するために、片方の領域が上にあるような表現として周囲に影(ドロップシャドウ)を付けるといった使い方がされます。たとえば、電卓のアプリケーションで、結果の表示される部分と、キーの部分は色が違っていますが、結果の表示される部分には、影がつけられていて、キーボードの部分とは奥行き(高さ)が違うことが表現されています。

"L"開発者プレビュー

マテリアルでは、1つのデザインで、多くの解像度に対応するようになっているといいます。そうした実際を公開されたデベロッパープレビュー(Nexus 5および2013年版Nexus 7)で見てみることにしましょう。プレビューに付属する標準アプリのうち、スマートフォン、タブレットに共通なのは、「電卓」アプリのようです。

起動してみると、KitKatとはデザインが違っており、まず気がつく「マテリアル」らしさは、結果表示の部分に「影」が付けられていてテンキー部分とは違った領域であることが示されていることです。

白と緑の間に影が表示されている

スマートフォン(Nexus 5)では、関数キーは、右側に隠れていて、緑のラインが見えています。これを左側へドラッグすると、関数キーが表示されるのですが、このとき、テンキー部分はだんだんと暗くなっていき、関数キーが完全に出ると影に入ったようにテンキーの数字はうっすらとしか見えない状態になります。

スマートフォン版では、関数キーは右側にしまわれた状態で、ドラッグすることで左側に引き出すことができる。このとき、背景になるテンキー部分は段々と暗くなっていく

スマートフォンでは、本体を横向きにすれば、関数キーは画面の右側に表示されます。これに対して、タブレットでは、縦向きのとき、関数キーは、テンキーと表示領域の間に最初から置かれています。ですが、横向きにしたときには、スマートフォン同様、関数キーは右側にテンキーとならんで表示されます。

スマートフォンとタブレットの縦向きと横向きの表示。実際のサイズに合わせて調整してある。"L"ではテンキー部分の高さがほぼ同じになるように調整されている

Android 4.4.4 (KitKat)の電卓は、スマートフォンでは、縦向きの場合、関数キーをメニューを使って切り替えるようになっています。横向きにしても、これは同じです。これに対してKitKatタブレット(Nexus 7)では、関数キーは縦向きでも横向きでも常に表示されています。

KitKatの電卓アプリの縦、横表示。テンキーの高さが違い、また、配列も変わってしまっている

KitKatと"L"を比べると、"L"では、スマートフォンとタブレットで、テンキー部分のサイズがほぼ同じになるように表示されているのに対して、KitKatでは、このあたりがあまり考慮されているようには見えず、さらに横向きでは、テンキー内部の数字の配置までも変化しています。

また、KitKatでは、電卓のキーは区切られて表示されているのに対して、マテリアルでは、テンキーや演算キー、関数キーで背景の色はかえてあるものの、キー自体を区切っては表示していません。このあたりがマテリアルの「シンプル」、「フラット」という感じでしょうか。また、KitKatの電卓は、全体がかなり暗い印象ですが、"L"では、パステル調の緑や青、そして結果表示は背景が白とかなり明るくなった印象があります。

マテリアルでは、用途や目的の違った領域を示すために影を付けるので、できるだけシンプルな表示のほうが影があることがわかりやすい、という配慮なのかもしれません。

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