米Googleは6月26日(米国時間)、欧州委員会(EC)が規定した"(インターネット上での)忘れられる権利"について、申請に基づいて当該リンクの削除を開始した。これはインターネット上で個人のプライバシーを侵害する古い情報が残っており、それをオンライン検索で容易に探し出せることを問題視し、ECが法制度化してGoogleらに対して遵守を求めたもの。すでにGoogleには多数の削除リクエストが寄せられており対応を進めているものの、検索不可能になるのは欧州内からのアクセスのみであり、それ以外の地域については引き続き検索可能というもので、削除手順やECの法制度の妥当性も含め、今後も引き続き議論は続いていく可能性が高い。
同件はWall Street Journalなどが報じている。それによれば、GoogleはECの求めに応じて先月からリンク削除の登録フォームを公開しており、このうちの第1弾を削除した旨を申請した個々人に対してメールで告知しているようだ。Googleは今回の問題に対処するためにシステム改修や「削除屋」とも呼べる専門チームを新たに雇い入れており、リクエストに対して可能な限り迅速な処理と検証を可能にするという。
ただ当初も指摘されていたように、申請フォーム公開直後にGoogleに対して4万1000件ものリクエストが殺到するなど、検証も含めれば膨大な人的リソースの負担がGoogleにのしかかることになる。欧州内外でも人権擁護派と検閲否定派の議論が続いており、今回の対応はその試金石的な意味合いを持つ。削除の是非を巡る裁判や訴えも今後は起こる可能性があり、運用手順も含めて経過をしばらく見ていく必要がありそうだ。
そして冒頭でも指摘したように、対応の範囲が欧州内からのアクセス限定という点だ。著名なものは「Mario Costeja Gonzalez」という人物に関して、1998年に掲載された借金返済を求める新聞広告の話がある。問題自体はすでに解決して10年以上の時間が経過しているものの、広告とそれに関する情報だけは現在もオンライン上に残り続けており、同人物の名前をGoogleで検索するだけでトップ候補の1つとして容易に引き出せてしまう。
WSJによれば、「www.google.es」「www.google.co.uk」といったスペイン版Googleや英国版Googleの検索では同人物の名前を入力しても検索結果には反映されないものの、「www.google.com」といった米国版や日本版のサイトではこれまで通り情報が表示される。つまりGoogle内部で欧州向けサイトにフィルタを追加しているだけで、Google検索データベースそのものに手を入れたわけではない。もちろん欧州地域からのGoogle検索は現地のサイトを通して行われるためECの基準的には問題ない可能性が高いと思われるが、制限を迂回する手段はあるため、インターネット上から完全に"忘れられる"というわけではない。
なお、Yahoo!やMicrosoftといったオンライン検索エンジンを提供している競合他社もECのルールに則る形での導入を順次進めている最中だとコメントしているが、具体的な対応手順や時期については明言していない。Googleと同様の負荷や対応に関する問題が発生するとみられ、やはりGoogleでの対応ケースが各社の参考になるだろう。