電車から降りると醤油の匂いが漂ってくる。そう、ここは古くから醤油の生産地として知られている千葉県野田市。ここにはデカ盛りの聖地と言われている食堂があるらしい。数々のデカ盛りを食べてきた筆者としては、可及的速やかに足を運ばなくては!
大正15年創業! 88年前に誕生したレトロな店
野田市駅では、どこからともなく醤油の香りが漂ってくる |
東武アーバンパークライン野田市駅から徒歩20分ほどの場所にある、デカ盛りの聖地「やよい食堂」。なんと大正15年創業の老舗食堂で、"デカ盛りのパイオニア"とも言われている。
早速店内に入ってみると、これまたレトロな雰囲気! 厨房からは「いらっしゃ~い」との声が。その声の主は、やよい食堂名物店主の久保坂はるさん。なんと御年83歳! 「来てくれてありがとうねぇ」というはるさんの優しい言葉に、思わず故郷にいる母を思い出してしまう。おかあさーーーん!!
いやいや、郷愁の念にかられている場合ではない。今日は聖地のデカ盛りを食べに来たのだ。そこで「ラーメン」(460円)や「焼肉定食」(660円)など、豊富なメニューの中から「かつ丼・大」(660円)を注文。そして、せっかく聖地に来たので「カレーライス・大」(610円)も合わせて注文した。
皿や丼からこぼれてしまうほどの超デカ盛り!
そして、先に運ばれてきたかつ丼に目をやると……で、で、でかぁああああい!!!! 蓋が意味をなしていなかったり、盛りすぎて受け皿に具がこぼれていたりとツッコミどころ満載だが、この量でたった660円とは。さすが聖地っす!
それでは、いただきます! ……かつの衣にしみこんだ甘めのつゆが、噛むたびにジュワッと口の中にあふれだす。見た目のインパクトとは裏腹に、とっても優しい味だ。どんどん箸がすすみ、完食! とっても美味でした。
そして次に運ばれてきたカレーにまたも仰天。まるでマグマがあふれだす火山のように、山盛りのご飯をカレールーが覆い尽くしているではないか! そしてかつ丼同様、当たり前のように受け皿が(笑)。
2品も注文したことを少し後悔したが、とにかくいただこう。ぱくりといただくと、大量に入った玉ネギの甘みがルーにコクをもたらしている。カレー専門店にあるようなスパイシーなものではなく、まるでお母さんが作ってくれるカレーのような懐かしくて優しい味わいだ。おかあさーーーん!!
……でも、スミマセン。正直、かつ丼の時点でおなかいっぱいで全部は食べられなかったです。これではデカ盛りファン失格だ。
「あら、お腹いっぱいになっちゃったの? でも大丈夫。パックに詰めてあげるから」と、はるさんから救いの声が。まさか持ち帰りまでできるとは。ありがたいです。
誕生秘話! 採算度外視の愛情から生まれた盛り盛りメニュー!!
今でも厨房で鍋をふるっている、店主の久保坂はるさん(83歳) |
でも、なぜデカ盛りを始めたのだろう。はるさんに聞いてみた。「うちは大正15年創業で、私たちが継いだころは支那そば屋だったの。もう50年ぐらい前かしらね。それから、お客さんの要望で支那そば以外のメニューを増やしたから『やよい食堂』を名乗るようにしたのよ。この辺は学生さんが多くてね、おなかを空かした学生さんを見ているうちになんだかかわいそうになってきちゃって、おまけでご飯の量を増やしていったの。どんどん量を増やしていくうちに、いつの間にか今の量になったのね」。
いきなり「デカ盛り始めます! 」ではなく、長年の日々の積み重ねでここまで盛り盛りになっちゃったと……いい話すぎる! なんて愛に満ちあふれた人なんだ!(涙)
「実は赤字が続いた時期はつらくてやめようかと考えたの。でも、お客さんが1人でも来てくれるうちは頑張ろうと思ってねぇ。でも最近は経営が厳しくて、お客さんには申し訳ないんだけど、持ち帰り用のパックも1つ10円もらうことにしたの……」。
いやいや。むしろ、あれだけ量が多いんだからメニューの値上げしたって良いぐらいですよ!
おなかいっぱいになって、はるさんの愛情にも触れられてとっても幸せ! はるさんが丹精込めて作ったメニューの数々は、おなかを空かした人のためのデカ盛り、否! 愛情てんこ盛りご飯だったのだ!!
(文・A4studio千葉雄樹)