インテルは25日、同社の次世代UI技術「RealSense」のソフトウェア開発キット(SDK:Software Development Kit)のパブリックベータを2014年第3四半期に提供すると発表した。これに伴い、都内で記者説明会を開催し、「RealSense」そのものやSDKの概要について紹介した。

「Intel RealSense」は、タッチやジェスチャー、音声や顔認識などの技術を活用し、PCのUIに取り込んでいくもので、Intelでは従来よりこうした技術について「perceptual computing」として研究を続けてきた。2014年1月に行われたCES 2014で、あらためて「Intel RealSense」というブランド名で製品化を進めることを表明した。

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CES 2014 - 米Intel、3次元UIを実現する「RealSense」技術 - 今年後半にも搭載PCが登場へ

インテル アジア・パシフィック・ジャパン UXプロダクト・マーケティング・マネージャーの岩本由香里氏

Intelでは5年前からUIに関するユーザー調査を行っているが、2013年には45カ国22万人におよぶ大規模な調査を実施した。「調査の結果、PCのパフォーマンスといったことだけではなく、"PCをもっと感覚的に使えるようになりたい"というニーズが強いことが分かった」とインテル アジア・パシフィック・ジャパン UXプロダクト・マーケティング・マネージャーの岩本由香里氏は説明する。

「Intel RealSense」は、この調査に基づいて、人間の感覚に近い形で自然にPCを使えるようにすることを主眼に開発が進められているという。2013年のPCではタッチ操作に加えて、音声認識を導入している。2014年ではPC内蔵型の3Dカメラモジュールを提供する。

2013年に大規模ユーザー調査を実施

より直感的な操作を目指してRealSenseを進める

このカメラモジュールもCES 2014で公開されていたが、赤外線プロジェクタ、2Dカメラ、赤外線カメラ、RGBカメラの構成で、ジェスチャーによる操作から3Dによるモーションセンシングなどが行える。

AcerやASUS、Dell、富士通、HP、LenovoといったPCベンダから搭載製品が登場する予定。モジュールは小型で奥行きは硬貨よりも小さい

実際のカメラモジュール

「RealSense」カメラモジュールは、デスクトップPCやクラムシェルのノートPCに向けた「F200」、2in1 PCやタブレットに向けた「R200」、スマートフォンなどの小型デバイスに向けた「R100」の3製品をラインナップする。

「RealSense」カメラのラインナップ

「F200」と「R200」は映像をリアルタイムで処理するモデル。「R100」は撮影した写真のピントやぼけを後から変更するといった用途に向けたモデルとなる。このうち「F200」はインカメラ向け、「R200」「R100」はアウトカメラ向けで、モーションセンシングの方式も異なるという。

AcerやASUS、Dell、富士通、HP、LenovoといったPCベンダから早くて2014年末ごろから搭載デバイスが提供される予定だ。また、Microsoftを筆頭に40社以上のソフトウェアベンダがアプリケーションの3Dカメラ対応を表明しているという。

ソフトウェアベンダも対応を表明している

Intelでは2014年第3四半期から「RealSense」ソフトウェア開発キットのパブリックベータを提供する。これは従来「Perceptual Computing SDK」として提供されていたものの強化版で、手や指のトラッキングポイントが従来の10点から22点に、顔のトラッキングポイントも7点から78点と大きく増加。顔の表情から感情を読み取ったり、顔の血管からある程度の脈拍も測定できるという。

「RealSense」のSDKを2014年第3四半期より提供開始

「RealSense」で開発可能なアプリケーションの例

SDKの概要

また、ジェスチャーや音声認識のパターンも、これまではプリセットされた内容しか利用できなかったが、「RealSense」のSDKでは独自のパターンを登録することができるという。「RealSense」のカメラモジュールを搭載した外付けカメラもSDKと同様に2014年第3四半期をターゲットに販売する予定だ。

開発者向けの外付けカメラも販売する予定だ。一般コンシューマ向けの販売も検討しているが、年明け以降になるとのこと

説明会では「RealSense」のカメラを使ったデモも行われた。まずは絵本のページをカメラで読み取って、そのページの内容に合わせた世界をPCの中に表示するというもの。カメラに向かって手を動かすと映し出された世界に風が吹いたり、波が起こったりといったインタラクティブな仕組みもそなえる。

PCに外付けカメラを設置したデモ機

タブレットのデモ機にはカメラを内蔵するが"ほぼ手作り"という

デモを担当したのはインテル 戦略事業企画室 ディレクター 亀井慎一朗氏。絵本は脚をけがした少年が冒険をするという内容

ベッドに座っている絵を読み込ませると、そのままの世界がPCの中に描かれる

船に乗っているページを読み込むと今度はPCには船に乗っている少年が表示される。ここでカメラに向って手を動かすと海に波が生じる

従来はページに2次元のマーカーを印刷して、情報を読み取っていたが、今回のデモでは絵の内容を解析して表示する内容をマッチングする。あらかじめマーカーを付けておく必要がないので、すでに日常にある製品でもこうしたシステムの中に取り入れることができる。

続いては3D Systemsの「3DMe」というサービスを利用したデモ。カメラで顔の正面や左右を撮影、顔の立体モデルを作成し、ファンタジー風の戦士の胴体と合成することができる。作った合成データを基に3Dプリンタでフィギュア化することも可能だ。

カメラで顔の立体画像を撮影する

撮影した立体画像をキャラクターに合成する

「3DMe」ではプロスポーツ選手やあるいはSF映画のキャラの体に自分の顔を合成して、フィギュア化することが可能で、これは亀井氏とプロゴルファーの体を合成してフィギュアにしたもの

最後にタブレットに内蔵したカメラで深度情報を取得し、机の表面と机の上に置かれたものを利用して高低差のあるフィールドを作るというデモも行われた。

脱いだジャケットをテーブルのうえに置く亀井氏

この状態で3Dスキャンすると

ジャケットが置かれた部分が小高い丘のように表示されたフィールドが生成される

フィールド上をロボットが移動するというデモも

Intelでは「RealSense」を用いたアプリケーションコンテストを開催している。現在アプリケーションのアイデアを募集中で、2014年第3四半期はじめをめどに応募されたアイデアの中から優秀なものを選考し、実際に開発に入る。優秀なアプリケーションは2015年のCESで表彰される予定だ。

現在コンテストを開催している。2013年にも「Perceptual Computing」として同様のコンテストを開催しているが、日本のしくみデザインという企業がグランプリを獲得している