映像制作関連ツールの新機能について
4K関連などの最新技術への対応機能に加え、アプリ間の連携が強化され、これまで以上に生産性が高まったのが映像制作関連ツールだ。カットを繋ぐ「Premiere Pro CC」、モーション追加や特殊効果を追加する「After Effects CC」、カラーグレーディングのためのツール「SpeedGrade CC」、ファイルベース収録用の「Prelude CC」のほか、「Audition CC」では新たに5.1chのドルビーデジタル対応、「Media Encoder」はデジタルシネマDCP出力に対応するなどそれぞれが一新している。また、デモは、Premiere Pro CC 2014年版の機能を活用して編集したディスカバリーチャンネルのCMを例に行われた。
■Adobe Speedgrade CC
デジタルシネマカメラの普及によるカラーグレーディング作業の増加を見据えた、「Speedgradeへダイレクトリンク」機能が追加。Premiere Pro CCとSpeedgrade CCの連携により、カラーグレーディングツールにもレンダリングなしにテロップやエフェクト情報を含めたデータを開くことができるようになった。カラーグレーディングの作業中はテロップを消したり、あるカットのみの色や明るさの調整、暗い部分のみを調整したりすることも可能だ。
また、初心者用の色補正ツール「ショットマッチャー」を使えば基準カットの色調に一発で合わせられるほか、「マスタークリップエフェクト」と「ショットマッチャー」の組み合わせにより、点在する関連カットにも一括してカラーグレーディングを適用できるように。マルチカメラで収録した素材も効率よく作業できる。編集情報も含めた作業データはPremiere Proに戻して詳細な編集を続けることもできるという。
■Adobe Premiere Pro CC
「Adobe Premiere Pro CC」には、映像の部分的な調整を行う「マスク&トラック」機能を追加。After Effectsを使わなくても、ナンバープレートや顔のモザイクなどをPremiere Pro内でかけることが可能になった。デモでは実際に、3分ほどでマスクとパス、トラッキングボタンや選択方法を組み合わせて追いかけるモザイクを作成していた。
マスクの詳細設定や領域の調整、選択範囲の反転加工や一部分の色変更なども簡単にできるため、モザイクをかける作業の多い番組制作者の作業効率化はもちろん、After Effectsが苦手だがもう少し詳細な設定をしたいユーザーにも便利な機能だ。
■REDデベイヤGPU高速処理
こちらはツール全体にかかる高速処理技術の新機能。デジタルシネマカメラのREDで撮影した素材のデベイヤに着目し、GPUを活用した高速処理を実現するものだ。例えば、4K対応の画像処理には3840×2160=829万4400画素の計算が必要になるという。デモではMac Pro(Late 2013)、AMD FireProD700、GPUコアが2048のプロセッサー環境で、REDで撮影した4096×2304、23.97毎秒の映像素材を表示。CPUのみでは1秒間に1コマ程度だった動きがGPU高速処理を適用すると確かにスムーズに表示されており、会場にそのパフォーマンスの高さを証明していた。このパフォーマンスはNVIDIAのGPUでも同様のものが得られるとのことだ。
最新ハードウエアに対応するために開発されたGPUのフル活用機能のように、最新カメラや映像の最新標準に今後も随時対応していくこと。これが映像ツールをアップデートする理由であり、同社の使命なのだと西山正一氏はこのセッションの終わりに語っていた。
最新技術やデバイスに対応するための機能、関連ツールやクラウドサービスとの連携強化の流れが見られた両分野の発表となった。変化のスピードが速いWeb制作業界と今まさに進化しつつある映像制作業界だけに、今後もこの傾向は続いていくだろう。