セブンーイレブンの店舗数は、国内と海外でどちらが多いか? 親会社であるセブン&アイ・ホールディングスの発表資料によると2014年2月末時点で国内には16,319店が存在する。これに対し、海外子会社で展開するセブンーイレブンは8,636店ある(うち8,292店は北米のフランチャイズおよび直営店)。これに海外の地域ライセンシー店27,478店を加えると、海外に36,114店あり、国内の2倍以上である(日本以外の店舗数は2013年12月末時点)。

セブンーイレブンが「日本的」と思われていたのは、もはや過去の話。セブンーイレブンは、今や世界の小売業を革新するビジネスモデルとなっている。

日本の小売業は、新たに海外で成長するステージに入りつつある。「セブンーイレブン」「ユニクロ」「無印良品」などは、海外事業が成長中である。かつて海外で飛躍した「ソニー」が次第に競争力を失う中、代わって日本の小売業がグローバル企業として脚光を浴びつつある。

セブンーイレブンの強さは何か。ただの小売業ではない。商品を提供する専用工場や、1日に原則4回の配送を行う物流網まで構築した「装置産業」といっても問題ないだろう。セブンーイレブンというシステムを構築して集中出店した地域では、セブンーイレブンに対抗するコンビニを作るのは難しい。そのビジネスモデルを海外にも輸出し始めている。

セブンの強さは、需要密着の供給管理をしていることにある。リアルタイムの需要情報が本部で把握され、供給サイドの生産管理に生かされる。

需要密着の商品開発を続けていることも強みである。売れない商品は徐々に販売スペースが縮小し、最後には撤去される。代わりに新しい商品が常に入ってきて、売れればスペースが拡大していく。

小売業において、5年・10年の間に起こる需要の構造変化を、前もって正確に予測することは誰にもできない。セブンーイレブンは毎日の販売データを見ながら、商品戦略を毎日少しずつ見直していくことで、結果的に5年・10年の大きな構造変化にも正確に対応している。

セブンーイレブンは、過去10年で商品構成ががらりと変わっている。20代の若者が外で食べる商品が減り、代わって40代・50代の女性が家庭食用に買っていく製品を増えている。その効果で、少子高齢化が進む日本で、セブンーイレブンは今でも成長を続けている。こうした大きな商品戦略の転換は、1人の天才的な経営者のひらめきで実現したことではない。毎日の販売データの分析と、毎日の小さな商品戦略の見直しが、結果的に大きな変化を生むのである。昨年は、入れたてコーヒーが大ヒットとなり、セブンは、一気に大手コーヒーチェーン並みのコーヒーを売り上げるようになった。小さなヒットの積み重ねが、「セブン・プレミアム」という他のコンビニにないブランドを生んだことも大きい。

セブンーイレブンが世界に通用するビジネスモデルであることを証明したのが、北米の子会社7-Eleven,Inc.である。アメリカ式の経営を行っている間は収益性が低かったが、日本のビジネスモデルを導入してから収益力が高まり、2014年2月期には、営業利益で512億円を稼ぐまでになっている。国内で稼ぐセブンーイレブン・ジャパンの営業利益2,127億円にはかなわないが、海外でも国内と同等の高収益を確保できることを証明した意義は大きい。

その7-Eleven,Inc.と、アラブ首長国連邦(UAE)の「SEVENEMIRATES INVESTMENT L.L.C」(2014年5月28日設立)がこのほど、マスターフランチャイズ契約を締結した。これにより、アラブ首長国連邦おいて、「セブン‐イレブン」店舗の展開を開始する。「SEVENEMIRATES INVESTMENT L.L.C」がUAEでのセブン‐イレブン運営会社となるので、7-Eleven,Inc.が直接事業リスクを負うことにはならない。

中東に、セブンーイレブンが作ってきたインフラをそのまま持ち込むのは、むずかしい。気候も風土も異なる中東でも通用するビジネスモデルとなるか、今後の展開が注目される。

執筆者プロフィール : 窪田 真之

楽天証券経済研究所 チーフ・ストラテジスト。日本証券アナリスト協会検定会員。米国CFA協会認定アナリスト。著書『超入門! 株式投資力トレーニング』(日本経済新聞出版社)など。1984年、慶應義塾大学経済学部卒業。日本株ファンドマネージャー歴25年。運用するファンドは、ベンチマークである東証株価指数を大幅に上回る運用実績を残し、敏腕ファンドマネージャーとして多くのメディア出演をこなしてきた。2014年2月から現職。長年のファンドマネージャーとしての実績を活かした企業分析やマーケット動向について、「3分でわかる! 今日の投資戦略」を毎営業日配信中。