ボタン電池を誤飲した1歳女児のレントゲン写真(消費者庁提供)

消費者庁と国民生活センターはこのほど、乳幼児のボタン電池(※)の誤飲に関する事故情報が相次いで消費者庁に寄せられていることを明らかにした。乳幼児のおもちゃなどに使われるボタン電池は、飲み込むと潰瘍(かいよう)ができるなどして、場合によっては命に危険が及ぶケースもあるという。

ボタン電池は、おもちゃをはじめ、時計、タイマー、LEDライトなど子どもが簡単に手にできるさまざまな日用品に使われている。コイン型とボタン型の2種があり、コイン型は直径2cm前後。乳幼児が手に取りやすい大きさであるだけではなく、口に入れやすい形状であるため、乳幼児が誤飲する可能性が高いという。

同庁によると、飲み込まれたボタン電池は、消化管に接触すると放電し、その影響によって消化管の壁に損傷が起こるという。わずか1時間という短い時間でも消化管に潰瘍(かいよう)ができ、穴が開く危険性もあると指摘されているため、一刻も早く身体からボタン電池を取り出す処置が必要とされている。

ボタン電池の一例(消費者庁提供)

特に注意が必要なのが、コイン形のリチウム電池だ。平たく幅広い形状のため、食道などに停滞しやすい。さらに、電池を使い切るまで他の電池よりも高い電圧を保持する特性があるため、誤飲したときの危険性がより高くなる。

同庁によると、子どもがボタン電池を誤飲したという報告は、誤飲の疑いも含めると、平成22年12月から平成26年3月31日までの間に93件寄せられたという。中には入院するほど重篤なケースも報告されている。年齢別に見ると、3歳以下が91件と多くを占めており、中でも1歳児の誤飲が54件(約58%)と最も多くなっている。

ボタン電池の誤飲年齢(消費者庁提供)

具体的な事故例を挙げると、「タイマーのフタを取って遊んでいて、電池を誤飲(1歳男児)」「壊れたおもちゃの中のボタンを誤飲した(0歳女子)」などが多い。しかし中には、「電池保管するケースのフタを開けて、ボタン電池を取り出し飲み込んだ(2歳男児)」「引き出しの中にしまっておいたLEDライト付き耳かきを取り出し、中の電池を誤飲(1歳男児)」など、収納しておいたにもかかわらず取り出して誤飲したというケースも報告されている。

危険な例が報告されているボタン電池誤飲事故だが、同庁が平成26年3月に乳幼児の保護者3,248人を対象に行った調査では、「ボタン電池の誤飲の恐れを知らない」「重症事例の存在を知らない」と6割の保護者が回答した。ボタン電池誤飲の危険性が周知されていないことがわかる。

また、実際に飲み込んだだけではなく、「舐(な)めた」「手にして遊んでいた」など危ない経験がある人も全体の1割以上いることがわかった。どこにボタン電池を置いていたかという問いに対し、多くが「電池交換などのために一時的に置いた場所」と回答しており、ちょっとしたすきに誤飲の危険性がひそんでいるようだ。

ボタン電池誤飲による重症事例の認識(消費者庁提供)

同庁は、ボタン電池誤飲を避けるために「どの製品にボタン電池が使用されているかチェックする」「電池ふたが外れやすくなっていないか確認する」ことが大事だとしている。

※JIS 規格(JIS C8500)で規定されたもののうち、総高が直径未満の小型円形電池