俳優・陣内孝則が、21日に公開を迎える映画『超高速!参勤交代』で"極悪非道"な老中・松平信祝(のぶとき)を演じている。その役作り秘話が、このほど明らかになった。
『のぼうの城』を輩出した脚本賞として注目を集める城戸賞の第37回で、土橋章宏氏が最高得点の入選を果たした『超高速!参勤交代』。『鴨川ホルモー』(2009年)や『すべては君に逢えたから』(2013年)などで知られる本木克英監督がメガホンをとり、主演・佐々木蔵之介、ヒロイン・深田恭子で映画化が実現した。
元文元年、磐城国(現在の福島県いわき市)のわずか1万5千石の小藩・湯長谷(ゆながや)藩は、幕府から突然の参勤交代を言い渡される。湯長谷の金山を手に入れようとたくらむ老中・松平信祝の差し金だった。通常の参勤交代では8日かかるところ、命じられた期日は4日。その上、多大な費用がかかる。藩主・内藤政醇(佐々木蔵之介)は激怒しつつ、知恵者の家老・相馬兼嗣に命じ、ある作戦を計画する。
画像を見ても分かるとおり、陣内が演じる信祝は"悪"そのもの。湯長谷藩の江戸屋敷に務める家老がこの無理難題を阻止しようと必死に嘆願すると、信祝が彼の目の前に差し出したのは鳥の泥のような餌。「これを食うてみよ…したら話を聞いてやろう」と甘い言葉でささやきながら、家老が意を決してそれを口にすると「ほほほ! 本当に食いようたわ! もはや決まったことじゃ。下がれ!」とあしらうなど、独特の存在感を放っている。
この信祝を演じた陣内の起用理由は「意外にも悪人顔になりやすい大物俳優」。助監督時代の『結婚』(1993年)でも撮影を共にした本木監督も「外見が明快に悪党であることを重視しました」と明かす。また信祝の"残忍さ"を際立たせるために、メイクの陰影を強くする一方、口封じのために平気で部下を切り捨てる"小心さ"も表現。武家社会においてお上の命に背くことは"死"を意味するため、その"すごみ"は重要だった。
本木監督のオーダーは「観客の誰もが『死んでほしい』と憎しみを覚えるほどの、一分の隙もない悪辣(あくらつ)さを出してほしい」。これに陣内は「わかりました」と答え、「俺はトレンディー俳優出身だけど、今回は『半沢』で行く」と個性的なヒールが数々登場したドラマの"半沢直樹モード"で、この極悪キャラを作り上げていったという。
(C)2014「超高速!参勤交代」製作委員会