KDDIは6月18日、第30期定時株主総会を開催し、「週刊ダイヤモンド」に掲載された「不正な取引」の真相について、同社の田中孝司代表が株主から問われる一幕があった。

株主総会に登壇し説明する、KDDI代表取締役社長の田中孝司氏

株主が質問したのは、週刊ダイヤモンドが報じたKDDI内部で生じた不正取引疑惑の真相について。同誌によると、KDDIは2013年8月に、スマートフォン向けの外付けメモリ10万個(6億円相当)を一括で発注。しかし仕入れ商品のうち売れたのは5000個あまりで、残りの9万5000個のうち、6万5000個は減損で償却されたとするもので、本取引における、発注量や仕入れ値、仕入先など複数の不可解な点を指摘していた。

これについて田中社長は「今般の記事によって、株主の皆様にご心配をおかけしてしまい申し訳ありません。厳正かつ徹底的に調査した結果、不正な取引は確認されていません。しかし疑惑が発生したことを問題と受け止め、改善すべき課題がないか検討した上で、さらなる経営改善に努めていきます」と説明した。

疑惑の真相

田中社長によると、事の顛末は以下の通り。2013年の夏、KDDIでは秋に発売される「iPhone 5s/5c」の発売を前に、iPhoneのデータを移行するための外部メモリを準備していた。予約販売や下取りを利用するユーザーに、端末とセットで外部メモリを提供する予定だった。秋以降の数か月で約100万台のiPhoneを販売する見込みだったため、その1割のユーザー向けに外部メモリを用意。それが"スマートフォン向けの外付けメモリ10万個"の正体だった。

しかし実際には、想定していたよりもはるかに少ない台数しかiPhoneが供給されなかった。そのためセット販売を取り止めたという。田中社長は「引き続き売っています。でも外部メモリというものは、タイミングを逃すと売れない商材。そのため、前期末に(6万5千個を)廃棄させていただきました」と、疑惑の背景を説明した。

この説明を受け、株主は「そうした事実がなかったことは喜ばしいことです。記事を掲載したダイヤモンド社に、謝罪広告を出させるお気持ちはありますか」と質問。田中社長は「取りうる措置があるのか、今後検討していきたいと思います」と回答した。

(記事提供: AndroWire編集部)