イタリア・リミニで6月9日~12日の期間に開催されていたバリスタの世界大会「2014 ワールド バリスタ チャンピオンシップ」。日本からは、「丸山珈琲 小諸店」の井崎英典バリスタが出場し、見事日本人初となるチャンピオンとなった。

写真は日本開催の「2007 ワールド バリスタ チャンピオンシップ」。優勝はイギリス代表・James Hoffmanバリスタ

同大会には、54カ国から国内大会を勝ち抜いたバリスタがそれぞれ1名出場。各選手15分の競技時間が与えられ、エスプレッソ4杯、カプチーノ4杯、シグネチャービバレッジ4杯をジャッジに提供する。提供されたドリンクの味わいはもちろんのこと、プレゼンテーション能力など、ドリンク提供に至るまでのすべての作業が評価対象となる。井崎バリスタは2013年に行われた「ジャパン バリスタ チャンピオンシップ」で優勝し、世界大会への切符を手にした。

使用するコーヒー豆は、各バリスタ持ち込みが可能。井崎バリスタが今回の大会で使用した豆は、コスタリカのコーヒー生産者、エンリケ・ナヴァロさんによるもので、井崎バリスタとは2年来の友人という。土壌や品種、乾燥方法など、生産者とエスプレッソに合うコーヒーを作るために徹底的に話し合い、大会のために準備してきたとのことだ。エスプレッソとカプチーノでは異なる豆を使用し、それぞれで豆の味わいを最大限に引き出した。シグネチャービバレッジには、両方の豆で抽出したエスプレッソに蜂蜜やピーチネクターなどを加えたものを提供した。

バリスタと生産者が二人三脚で

2008年に開催された「ジャパン バリスタ チャンピオンシップ'08 - '09 兼 ワールド バリスタ チャンピオンシップ 2009 日本代表選考会」出場時の井崎英典バリスタ。当時18歳で、父の経営するコーヒー豆専門店「ハニー珈琲」(福岡)に所属していた

井崎バリスタは、「(競技時間の)15分間はつまり、エンリケと自分が歩んできた道のりそのものと言えます。私たちのような生産者とバリスタの関係性が、きっと未来のバリスタと生産者のロールモデルになると信じています。消費者のニーズを知るバリスタが生産者と一緒にコーヒーをつくることで、よりお客様に沿ったコーヒーを提供できます。生産者はその反応を直に感じ取り、次につなげることができるのです」としている。

これまでのワールド バリスタ チャンピオンシップでの日本人最高順位は、2005年アメリカ・シアトル大会に出場した門脇洋之バリスタ(島根・安来「CAFE ROSSO」オーナー)の2位だった。昨年も井崎バリスタは「2013 ワールド バリスタ チャンピオンシップ」(オーストラリア・メルボルン)に出場していたが、53名中予選13位で準決勝進出を果たせなかった。今回の大会、井崎バリスタはその雪辱を果たす大会となり、日本にとっても長年の悲願が実る大会となった。

カフェ雑誌「カフェ&レストラン」の前田和彦編集長によると、「ワールド バリスタ チャンピオンシップでの優勝は日本人バリスタとして初の快挙です。わずか2回目の挑戦で、昨年13位から一気に優勝まで駆け上がりました。ここまでの大躍進は、世界でも過去に例がないように思います」と称えた。

さらに前田編集長は、井崎バリスタの所属先である丸山珈琲のオーナーやトレーナー、その他の優秀なバリスタたちといったサポートメンバーの存在も見逃せないと続けた。

「井崎バリスタが所属する丸山珈琲の強みの1つは、オーナーやトレーナー、バリスタが一丸となった『チーム力』。そして、独自に海外のトップバリスタを招いた講習会を開催するなど、『世界基準』の考え方にもあると思います。今回の優勝によって、井崎バリスタと同年代の次世代バリスタたちがさらに奮起し、アメリカのサードウェーブのような新しいムーブメントを日本のコーヒー業界にもたらすかもしれません。以前、ラテアートの世界大会『ワールド ラテアート チャンピオンシップ』で『小川珈琲』の村山春菜バリスタ、吉川寿子バリスタが優勝した際もそうでしたが、今回の快挙でバリスタという職業にスポットが当たり、バリスタの地位向上につながるはずです」。