明治元年の兵庫開港(現在の神戸港)、および外国人居留地の設置によって、多くの西欧文化がもたらされた神戸。その中には外国人菓子職人による本格的な洋菓子もあり、神戸には老舗洋菓子店をはじめとしたスイーツの名店が多い。それらのお店を代表的商品とともに紹介していこう。
日本に本場ドイツのバウムクーヘンが登場
日本人に初めてバウムクーヘンを提供したドイツ人菓子職人カール・ユーハイム氏と、その妻エリーゼさんによって創業された「ユーハイム」。ユーハイム氏が中国の青島で菓子&喫茶店を開業した明治42年(1909)から数えると、その歴史は100年以上となる。
香料などの添加物は一切使わず、卵、小麦粉、バターといったシンプルかつ上質な素材だけを使って職人技で焼き上げられた「バウムクーヘン」は、甘く優しい香りとしっとりとした舌触りが魅力だ。
「フランクフルタークランツ」も同店の看板商品と言ってもいい人気の一品。バターをたっぷり使ったきめ細かく柔らかなスポンジ生地に、独自製法のアーモンドシュガーを泡雪のようにふりかけた、ドイツ・フランクフルト地方では定番のケーキである。
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ユーハイム 本店
日本におけるウイスキーボンボン発祥店
「ゴンチャロフ」はロシア人、マカロフ・ゴンチャロフ氏によって大正12年(1923)に北野で創業された洋菓子店。その歴史は日本で初めて手作りのファンシーチョコレートである「ウイスキーボンボン」を製造・販売したことに始まる。
現在は焼き菓子やゼリー菓子類が主力となっており、中でも代表的なのが「コルベイユ」。アーモンド風味のチュイールとバター風味のラングドシャ生地に、アーモンドミルクチョコレートとホワイトチョコレートが流し込まれたロールクッキーだ。
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ゴンチャロフ 北野工房のまち店
日本で初めてバレンタインチョコを提案
神戸・三宮トアロードにてチョコレートショップを営んでいたモロゾフ一家によって大正15年(1931)に設立されたのが始まりとなる「モロゾフ」。日本に初めてバレンタインチョコの習慣を持ち込んだことでも知られている。
チョコ以外に同店を代表する商品のひとつが、デンマーククリームチーズケーキ(直径14cm/648円(税込)~)。デンマーク産クリームチーズのコクが、レモンの風味で引き立てられる絶妙な味わいだ。また、厳選された材料を卵の力だけで固めた、シンプルかつ奥深い味わいのプリンも人気である。
●information
モロゾフ センター街ショップ店
お手頃価格で懐かしい味わいのケーキが人気
百貨店などにも出店する大手であり、外国人創業の洋菓子メーカーを紹介してきたが、日本人が立ち上げ、地元で長く親しまれ続けている老舗も存在する。"ママのえらんだ"というキャッチフレーズでも知られている「元町ケーキ」というお店だ。
創業は終戦間もない昭和21年(1946)。神戸市花隈界隈でリヤカーを引いてシュークリームを売り歩いていた先代が店舗を構えたことに始まる。パイやバタークリームを用いたケーキが、当時珍しかったこともあり、評判となったようだ。
同店の名物であり看板メニューとして有名なのが「ざくろ」(270円(税込))というケーキ。卵黄のみ使用のフンワリとしたスポンジはカステラのような素朴な味わいで、甘さ控えめの生クリームと相性抜群。そこにイチゴの甘酸っぱさがアクセントを加えている。
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元町ケーキ 元町本店
神戸市中央区元町通5-5-1
オシャレなカフェ&スイーツ店の先駆け
JR新神戸駅から南へ徒歩10分弱のところにある「G線」というお店は、もともと昭和27年(1952)に三宮センター街で開業したカフェ&スイーツ店。開店当時、まだ珍しかった喫茶室併設をすでに実現。グラフィック界の巨匠・早川良雄氏が店名ロゴや商品パッケージを手掛けるなど内装やデザインにもこだわり、かなりモダンなお店として話題になっていたようだ。
創業時から人気なのが「G線職人の手焼きワッフル」(5枚入り/800円(税別)~)。サクサクとした歯ごたえと香ばしい味わいが好評。また、「G線のベイクドチーズケーキ」(直径15cm/2,600円(税別))は、ベースとなる北海道産フレッシュクリームチーズと、仕上げに使われるオランダ産エダムチーズ、2種類のチーズのハーモニーが楽しめる逸品だ。
「スイーツの街」という魅力も兼ね備えている神戸。神戸観光の際には、こうした洋菓子・スイーツの名店も押さえておきたい。
※記事中の情報・価格は2014年5月取材時のもの