読みモノ的に楽しめる「制作コラム」と「インタビュー / レポート」

――同サイトのメニューに「入門」と「使い方」がありますが、どういった区別でコンテンツを掲載されているのでしょうか?

「入門」は、初心者がその製品を使って6つ程度のステップで学んでいくコンテンツです。基礎的な内容で完結させるようにしてあります。一方、「使い方」は、各テーマにフォーカスを当てた3~4回程度、多くても5~6回の連載という形式となります。

「入門」の項目ではPhotoshopなど6製品に関して、初心者向けに解説を行うコンテンツを公開している

――その「入門」と「使い方」に、Web制作の初心者向けソフト「Adobe Muse」が含まれていない理由は何ですか?

MuseがHTMLやCSSの知識を必要としないツールだからです。Webサイト制作をメインにしていないDTP系の制作者が利用したり、ワンショットのランディングページ制作のために利用したりするのに便利なツールだと言えます。つまり、サイト管理をHTMLソースコードで行う必要性が低い場合にはオススメのツールです。

私はWeb製品全般のマーケティング担当なのですが、対象ユーザーが異なるため、実はMuseは担当製品ではなく、温かく見守っているところです(笑)。しかし、最近のMuseの進化はすごいなと感じているので、近いうちにプライベートのWebサイトをMuseで作ってみようかなと思っています。

――解説だけでなく、第一線で活躍するWebデザイナーやエバンジェリストによる「制作コラム」や「インタビュー / レポート」を掲載した狙いは何でしょう?

やはり、勉強するためだけのサイトにしてしまうと、初心者のためのWeb制作の情報源として偏ってしまうかと思います。ほかにも色んな情報が得られるように、製品と直接ひも付いていない「制作コラム」、そしてもっとアドビ社員の人となりを紹介して身近に感じていただけるようなコンテンツとして「インタビュー / レポート」を追加しました。6月中には、Creative Cloud 道場でおなじみのエバンジェリスト・仲尾も登場します。「制作コラム」は、時々チェックして読みモノ的に楽しんでいただけるのではないかと思っています。

「Adobe Pinch In」には、各ソフトの解説記事のほか、「制作コラム」や「インタビュー / レポート」のコーナーも。アドビオリジナルかな書体「りょう」および「りょうゴシック」ファミリーを手がけたタイプフェイスデザイナー・西塚涼子氏など、同社の社員のインタビューも掲載されている

"アドビ公式"の入門者向け情報への反応

――「Adobe Pinch In」を公開して約3カ月が経ちますが、読者からの反響や活用例などは届いていますか?

いただいた反響で一番多かったのは、「アドビ公式の入門記事が出ているのか!」という驚きの声でした。先述のADCで扱っているのは中級以上のユーザー向けの記事ばかりで、初心者向けの入門記事となると、情報サイトやユーザーブログの記事を読むか、あるいは書籍に頼るほかありませんでした。そのため、アドビ自身が公開したことに対して驚かれた方が多かったようです。

また、PhotoshopやIllustratorをWeb制作用ツールとして紹介したのはこれが初めてでしたので、実際の現場でどのように使われているのかがわかると言う意味で、勉強になったという声もありました。私はデベロッパー出身のため、仕事としてのWebサイト制作経験がありません。そこで、Web制作現場での作業のポイントなどを私自身が知りたいと思うようになり、初心者の読者目線に立って企画しています。

――サイトトップで掲げている「HTML、CSS、JavaScript、Webデザイン、Flash」のうち、今後注力していく部分はどこでしょう?

しばらくはWebデザインに関するコンテンツに注力したいと考えています。アドビのWebコンテンツのうち、Webデザインの分野はこれまで力を入れていませんでした。Web制作用のツールはいくつも提供していたのですが、Webデザインという観点の道しるべになるようなWebコンテンツはほとんどありませんでしたので、そちらを重点的にやっていければと思います。

――これから始まる予定の新連載では、どういった解説を考えていますか?

矢野りんさんのスマホデザインに関する連載、浅野桜さんによるPhotoshopのスマートオブジェクトを扱う連載が最近始まりました。そのほかに、個人的にも楽しみにしている今後の連載を少しご紹介しておきます。

Web制作ワークフローへの意識向上を目的として、Webデザインにルールを持ち込むことで、その縛りや余計な手間が実は効率化につながることを発見する内容をテーマとした連載が、近日公開予定です。例えば、どんなレイヤー構造のPSDファイルを作成すれば次の行程がスムーズになるか、という非常に大切な内容です。その他にも、随時アップデートされる新機能を活用した連載を掲載していきます。

矢野りん氏が担当するスマートフォン向けのWebデザインを解説する連載「モバイルWebのUIデザインことはじめ」

――HTMLやCSS、JavaScriptなどの言語関連の解説については?

HTMLに関しては、優れたレファレンスがほかに多数存在していますので、それほど積極的に作る必要性は感じていません。また、JavaScriptに関してはもう少し扱うことができれば良いのですが、こちらも優れたレファレンスが世の中に多数ありますので、どう取り扱うべきか検討しています。

その一方で、CSSに関しては、アドビが主導になって進めている「CSS Shapes」や「CSS Regions」などの新しいWeb標準に取り組んでいるものがありますので、有用な情報を公開できるかと思います。こうした新しいCSSの仕様はアドビ製品の新機能としてサポートされていきますので、その解説と使い方を提供していきたいです。

――「Flash Professional」の「使い方」の第1回が「HTML5書き出し機能」ということに驚いたのですが、やはりHTML5の普及とiOSデバイスへの対応などを目的としたコンテンツになりそうですか?

そういう目線というよりは、Flash ProfessionalのSWFへの書き出しについては熟成している感があるものの、HTML5への対応に関してはまだまだこれからだという状況に向けての情報という意味合いが大きいですね。開発チームもHTML5対応に注力していますので、第1回がHTML5書き出しについての解説となりました。Flashの基本的な使い方に関しては「入門」でカバーしています。

――最後に、「Adobe Pinch In」をどのようなサイトにしたいかなど、抱負がありましたら教えてください。

ゆくゆくは、Web制作に関わることになった人々が、最初にアクセスしてもらえるようなサイトになってくれたらと思っています。もちろん、「Web制作の経験はあれど、Photoshopに関しては初心者」というような方が有用な情報を簡単に入手できるようになり、締め切りぎりぎりに入稿されたPSDカンプと悪戦苦闘することなく、作業時間の短縮につながったりしたらとても嬉しいです。

――ありがとうございました。