アドビ システムズが2014年2月に公開したWeb制作情報サイト「Adobe Pinch In」は、HTMLやCSS、JavaScriptをコーディングするWebクリエイターやWebデザイナーに向け、Web制作に関するTipsや同社製品の使い方を分かりやすく解説する新しい情報サイトだ。今回は、アドビ システムズ マーケティング本部の轟啓介氏に、同サイトを開設した経緯や狙い、今後の展望などについてお話を伺った。

アドビ システムズのWeb制作情報サイト「Adobe Pinch In」

Web制作者、特に初級者が必要な知識を得られるように

――まずは、「Adobe Pinch In」の概要についてお聞かせください。

アドビが提供するWebコンテンツとしては、すでに「Adobe Developer Connection(ADC)」がありますが、その名の通り、Web開発に携わるデベロッパー向けの内容が多いです。そこで、WebデザイナーをはじめWeb制作にかかわる方々、特に初級者を対象として、アドビ製品を使うために必要な知識を得られるサイトを目指して始めたのが「Adobe Pinch In」です。トップページに「HTML、CSS、JavaScriptからWebデザインまで」という記載があるとおり、アドビ製品と必ずしも直接関わりのないコンテンツを含め、Web制作に必要な情報はひととおりカバーしていく予定です。

アドビ システムズ マーケティング本部/「Adobe Pinch In」担当・轟啓介氏

――「Photoshop」や「Illustrator」といったグラフィック系ソフトの「入門」や「使い方」といった解説コーナーもありますが、これらに関してもWeb制作者向けというわけですね?

Web制作現場では、デザイナーが作成したデザインカンプが、Photoshopやllustrator形式のファイルで届くケースが増えているという話をユーザーの方々から聞いています。それを受け取ったコーダーがPSDファイルを開き、それをHTMLやCSSで実装していくというプロセスでは、厄介なこともあるようです。

例えば、Photoshopは画像編集ツールのため、デフォルトの単位がpixel(ピクセル)ではありません。では、それをピクセルにする方法は?ということから始めていくと、PhotoshopをWeb制作シーンで使うにあたって、実は学ぶことが多いのです。ですが、内容を「Photoshop入門」にしてしまうと画像加工の手順ばかりになってしまいますので、ここでは「Web制作者向け」と割り切って、PhotoshopもしくはIllustratorをWeb制作に使うための環境設定の手順から始め、少しずつWebデザインの用途で使えるような手順を踏んでいくというやり方で進めています。

――掲載されているコンテンツのなかには、「レイヤー」についての記事もありますね。

レイヤー関連は、どちらかと言えばデザイナー向けの内容です。最近の傾向として、PhotoshopとアドビのWeb作成アプリケーション間での連携を強化が図られているのですが、その際に「レイヤー」の概念が重要になっています。

例えば、PhotoshopからレスポンシブWebデザインを実現するためのツール「Edge Reflow」へデータを渡す際にはHTML化されるのですが、レイヤー構造を理解していなければ、期待するHTMLソースにならない場合もあります。デザイナーは、レイヤーがどのようにHTML化されるのかを知らなければ、正しい構造は作れませんし、その逆もしかりです。やはり、デザイナーとコーダーは、お互いの作業を理解しておく必要があるのです。

Web案件の"発注者"へのアンケートを行った理由

――5/22に公開された「企業のWeb担当者に聞いてみた17の質問 [2014年上半期]」について、調査を実施した経緯を教えてください。

雑誌「Web Designing」に掲載されている「Webデザイナー白書(※)」のアンケートが楽しみで、いつも興味深く拝見しています。このアンケートではWebデザイナーの意見を聞いていますが、その反対の立場である「発注者側」がどう思っているのか?ということを知りたかったというのが動機ですね。

実は、Web制作者に「発注者側の考え方をご存じですか?」と問いかけても答えがバラバラであることが多く、制作者の方々も(発注者側の考え方を)知りたいという声も伺っていたので、これはよい機会だと思い、Adobe Pinch In の企画として調査を実施しました。できれば上半期、下半期と年2回のペースで実施したいと考えています。

(※ マイナビ発行のWebデザイナー向け月刊誌「WebDesigning」に、年に1度掲載されている、Web制作者に対するアンケートを集計した特集記事)

――アンケート結果を知ったWeb制作者からの反響はいかがでしたか?

Twitterでの反応では、「モバイルファーストで進めるべきなのかな」というコメントがありました。特に、タブレット端末について、現状ではターゲットとして決して多くはありませんが、将来的にはかなり注目すべき数字が出ていました。今後は仕事のやり方、Web制作の方法も変わってくると思います。