4年に一度のサッカー界最大の祭典「2014 FIFAワールドカップ」が日本時間6月13日、ついに開幕した。オープニングゲームはホスト国・ブラジルが3対1でクロアチアを降し、地元ファンは歓喜の渦に包まれた。
ところで、今大会に出場する各国の代表選手たちの中で、ファン必見の最強イレブンを結成するとしたら一体誰を思い浮かべるだろうか。今回は、リオネル・メッシ(アルゼンチン)やネイマール(ブラジル)らのビッグネームをあえて除外した上で、「1国で1人のみ」「フォーメーションは4-3-3」という条件で選出してみた。
GK: ジャンルイジ・ブッフォン[イタリア代表/36歳/ユベントス]
味方に安心感を与える上で、何よりも経験が求められるポジションということを考えれば、5大会連続で大舞台に臨む不動のキャプテンを超える適役はいない。前回南アフリカ大会はパラグアイとの初戦で負傷退場し、残り試合を棒に振った。衰えを知らない瞬発力と判断力を武器に雪辱を期す。
右SB: ステファン・リヒトシュタイナー[スイス代表/30歳/ユベントス]
無尽蔵のスタミナを駆使して右サイドをアップダウンするプレースタイルから、「スイス・エクスプレス」の異名を持つ。堅実な守備はもとより、クロスやゴール中央へ切れ込んでのダイナミックな攻撃参加で、ブラジルのダニエウ・アウベスと並んで世界最高峰の右サイドバックに数えられる。
CB: ヴァンサン・コンパニ[ベルギー代表/28歳/マンチェスター・シティ]
攻撃陣に個性豊かなタレントがそろい、ダークホースの期待がかかるベルギーを天性のキャプテンシーでまとめ上げる。精密機械のような正確さとフィジカルの強さ、高度な判断力を同居させた守備は、所属チームを3シーズンで2度のリーグ優勝に導いたことでも証明されている。
CB: ソクラティス・パパスタソプーロス[ギリシャ代表/26歳/ドルトムント]
堅守ギリシャを象徴するハードマーカー。前回南アフリカ大会のアルゼンチン戦では、身体能力と鋭い洞察力を駆使してリオネル・メッシを完璧に封じた。砂利だらけの広場でボールを追いかけ、夢を膨らませた少年時代に育まれた強靱(きょうじん)な精神力はどんな強敵にも屈しない。
左SB: ジョルディ・アルバ[スペイン代表/25歳/バルセロナ]
なかなか顔ぶれが変わらない王者スペインにおいて、前回南アフリカ大会後にデビューし、主力に定着した一人。群を抜くスピードを誇り、勢いを緩めることなく敵陣で正確なテクニックを発揮できる。けがによる離脱と復帰を繰り返しただけに、コンディションに若干の不安が残る。
MF: フィリップ・ラーム[ドイツ代表/30歳/バイエルン・ミュンヘン]
世界屈指のサイドバックとして評価されていた男が、その高度なインテリジェンスを絶賛するバイエルンのペップ・グァルディオラ監督のもと、中盤のアンカーとして新境地を切り開いた。不動のキャプテンは6大会ぶりの優勝を狙うワールドカップにおいても、中盤の底でのプレーを希望している。
MF: ポール・ポグバ[フランス代表/21歳/ユベントス]
恵まれたサイズ、豊富な運動量を駆使した守備、突出したスピードからの攻撃参加、そして高い決定力。サッカーに必要なすべての要素を兼ね備え、代表デビューからわずか1年でフランスの顔となりつつある。今大会でブレークを果たせば、サッカーの歴史を変えるミッドフィールダーとなる。
MF: アルトゥーロ・ビダル[チリ代表/27歳/ユベントス]
ユベントスのリーグ3連覇を支えた、運動量と攻撃力を兼ね備えた中盤のファイター。チリのホルヘ・サンパオリ監督をして「中盤のメッシ」と言わしめ、グループリーグでスペイン、オランダの2強に割って入るけん引役として期待される。5月上旬に手術した右ひざも順調に回復している。
FW: ジェルビーニョ[コートジボワール代表/27歳/ローマ]
ドリブル勝負ならば100mの世界記録保持者ウサイン・ボルトに勝てる、と豪語する男のスピードは文字通り爆発的だ。昨夏に移籍したローマで得点力にも磨きをかけ、国民的英雄ディディエ・ドログバ以上に厄介な存在となった。日本戦で対峙(たいじ)するのは長友佑都。壮絶な戦いとなるのは必至だ。
FW: エディン・ジェコ[ボスニア・ヘルツェゴビナ代表/28歳/マンチェスター・シティ]
ヴォルフスブルクで同僚だった大久保嘉人から、こんな話を聞いたことがある。「ジェコのシュートは飛んでくる音が違う。同じFWとして自信をなくすよ」と。高さとパワー、うまさを兼ね備えた「ボスニアのダイヤモンド」は、民族紛争を乗り越えた末に初めて臨む夢舞台に武者震いを隠せないはずだ。
FW: ルイス・スアレス[ウルグアイ代表/27歳/リバプール]
33試合で31ゴールと驚異の決定率でプレミアリーグ得点王を獲得した男は、得意の形を持たない。ドリブル突破、スピードに乗ったワンツー、虚(きょ)を突くミドルシュート。何よりもスパイクすら買えなかった貧しい幼少期に芽生えたハングリー魂が、嗅覚鋭い異能のストライカーの礎になっている。
守備は「高さと強さ、スピードを兼ね備えた最終ライン」、中盤は「歴史を塗り替える可能性を秘めたフランスのポグバ」、前線は「高さと速さ、執念がハーモニーを奏でる3トップ」をポイントとした。大会観戦中は、この11人のプレーに注目してもらいたい。
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筆者プロフィール : 藤江直人(ふじえ なおと)
日本代表やJリーグなどのサッカーをメインとして、各種スポーツを鋭意取材中のフリーランスのノンフィクションライター。1964年、東京都生まれ。早稲田大学第一文学部卒。スポーツ新聞記者時代は日本リーグ時代からカバーしたサッカーをはじめ、バルセロナ、アトランタの両夏季五輪、米ニューヨーク駐在員としてMLBを中心とするアメリカスポーツを幅広く取材。スポーツ雑誌編集などを経て2007年に独立し、現在に至る。Twitterのアカウントは「@GammoGooGoo」。