さて、山田井くん。やってみようか。

なるほど。理屈としてはよくわかった。無回転シュートってすごいんだなあと深く納得していると、担当編集がポツリととんでもないことをつぶやいた。

「それって、山田井さんでも蹴れるものなんですかね」

えっ?

「原理がわかったんだから、蹴ってみましょうよ!」

いやいや、ちょっと待って。そんな簡単に蹴れるもんじゃないでしょうよ。

「蹴りましょう! そして4年後のロシアを目指しましょう!」

えー!

……ということで、「無回転シュートの原理を解析する」という趣旨だったはずが、なぜか「サッカー経験なしのライターが無回転シュートを蹴れるのか」という企画になってしまったのだった。

ともあれ、やると決まれば本気でやろう。ソフトウェアクレイドルさんにお願いして「無回転シュート」の原理はわかったが、どのように蹴れば打てるのか。

YouTubeを見ながら素人が頭を悩ませてもさっぱりわからないので、専門家に聞いてみることにした。

都内から電車に揺られて約2時間。やってきたのは筑波大学だ。

ここで人間総合科学研究所教授として教鞭をとっておられる浅井武氏に、今回ご協力いただけることになったのである。

筑波大学大学院 人間総合科学研究所 浅井武教授

浅井教授は筑波大学のサッカー部総監督でもあり、サッカーにおける様々な研究を通してプロサッカー選手やスポーツメーカーとも交流を持っている。つまり、無回転シュート研究においても第一人者なのだ。

そんな浅井教授に「どうすれば僕でも無回転シュートを打てるんですか?」と尋ねてみると、「難しいと思うよ」とバッサリ。……いや、僕も無理だろうとは思っていたけど、そこを何とかなりませんかね?

「重要なのは、ボールの芯を正確にとらえること。あとは脚を振り抜くスピード。この2つが両立すれば、回転を減らすことはできるかもしれないね。でも実践でちゃんと使える無回転シュートを打つのはまず無理でしょう」

本田レベルのシュートは、当たり前だが打つのは無理。しかし、威力がなくてもいいなら、コツさえつかめば打てる可能性はゼロではないということらしい。そういうことなら挑戦してみたい!

ということで、今回は特別に筑波大学のサッカー場をお借りして、無回転シュートにチャレンジすることになった。しかも、運が良いことに、浅井教授の研究撮影のために居合わせたジョイフル本田つくばFCの選手・斉藤さんにコーチしていただけることになったのだ! これはひょっとすると、ひょっとしたりして……?

筑波大学のサッカー場をお借りできた

このために購入した日本代表のユニフォームに着替えて、さっそく練習開始だ。日頃から運動不足な上に特に練習などはしてこなかったため、練習の前の準備運動でさっそく息が上がる。

この日のために上から下まで用意しました。気分だけは日本代表

準備運動ですでに息が上がる

一抹どころではない不安が押し寄せる中、さっそく浅井教授に教えていただいたコツを思い出しながらシュートを放ってみた。

どうだ!