楽天証券は6月12日、楽天証券経済研究所の窪田真之チーフ・ストラテジストによるレポート「4Kテレビに大きな期待はできない」をリリースした。
レポートは、消費増税後に懸念されていた家電の売上が大きく落ち込んでいない1つの要因として、4Kテレビの好調な販売があるとした上で、「4Kテレビは、民生電機業界の救世主になるのでしょうか?」と、疑問を提起。
窪田氏はまず、フルHD(1,920×1,080ドット)の4倍という4Kテレビの高精細画質に言及し、「実物を見るのに近い感覚が得られる」とする。サッカー中継を引き合いに出し、観客席のひとりひとりまで見えるほどの高精細さだとコメント。客席に友人が写っていても従来のテレビでは見つけにくかったが、4K画像ならば見つけることも可能と、その高精細さを強調している。
一方で、現状ではコンテンツが乏しい点について指摘。次世代放送推進フォーラムが6月2日に待望の4K試験放送を開始したことを紹介しつつも、対応するシャープ製チューナーが6月25日発売でまだ市場にないことに触れ、「一般家庭で視聴することは、まだできない」と説明する。試験放送を見るには家電量販店に行くなどするしかなく、そうした方法で試験放送で4K放送の良さを視聴者に体感してもらった上で、2016年のリオデジャネイロ五輪までに本放送をスタートさせたいのが政府の考えであると紹介している。
しかし、そのような青写真に対して窪田氏は、一般家庭への本格普及には数々のハードルがあるとコメント。まず1つに、本格的な普及にはテレビや専用チューナーの価格がさらに下がる必要がある一方、電機メーカーにとってそれは受け入れにくいとする。これまで赤字を計上し続けてきたテレビ事業で、せっかくヒット商品に育ちつつある4Kテレビの急激な価格下落は、開発費の回収を困難にしてしまうためだ。
2つめは、地上デジタル放送への完全移行からまだ間もない点を挙げる。「アナログ放送用のテレビが使えなくなる」と言われてテレビを買い換えたばかりの人には、4Kと言われても買い換えの動機として弱いと、窪田氏は指摘。
3つめの理由として窪田氏は、地上デジタル放送へ移行したばかりのため、放送局も4K化の負担にはすぐに対応できない点を説明。放送局は及び腰のところがあり、4Kの放送コンテンツが増えるのは時間が掛かるとみている。
4つめには、NHKが4Kのさらに次の規格として「スーパーハイビジョン(8K)」の開発を進めていることを紹介。4Kの4倍の解像度を持つ8K放送の対応まで待とうと考える人もいるのではないかと、窪田氏は予測する。
窪田氏はこのような普及へのハードルを紹介しつつも、高価格で推移する4Kテレビを活用することがテレビ事業の収益改善においてラストチャンスとなるとする。ただし、現状では技術面で日本メーカーが先行しているが、3Dテレビのように量産段階になるとアジアの他メーカーに(シェアを)持って行かれるおそれもあると危惧する。