M大学を卒業した女性が23歳~60歳まで働いた場合の生涯賃金は2億1000万円(厚生労働省「賃金構造基本統計調査」2013年・大学・大学院卒女性の正社員の勤続年数別平均賃金から23歳で就職した場合の生涯賃金と年金額を計算)

専業主婦に該当者が多い国民年金の「第3号被保険者」。国民年金加入者の中で厚生年金や共済に入っている「第2号被保険者」に扶養されている配偶者のことで、年収が130万円未満である必要がある。老後のことも踏まえて「専業主婦と有職主婦、どちらを選択すれば……」と考えたとき、目先の保険料などだけにとらわれず、第3号被保険者が配偶者控除と同様に見直しが検討されていることも頭に入れておかないといけない。ファイナンシャル・プランナーの村松祐子さんに解説していただいた。

専業主婦は年金保険料がタダだけど……

国民年金の被保険者は、職業などにより3つに分類されています。

1.第1号被保険者: 自営業者や学生等

2.第2被保険者: 厚生年金や共済年金の加入者

3.第3号被保険者: 第2被保険者に扶養されている配偶者で年収130万円未満の人

第3号被保険者に該当する人は、保険料を払わなくても配偶者の扶養家族として健康保険や国民年金に加入できます。基礎年金の給付に必要な費用は、厚生年金制度全体で支えています。そのため、夫婦共に厚生年金の保険料を払う共働き世帯や、夫婦とも国民年金の保険料(月額15,250円〈平成26年度〉)を払う自営業世帯からは、不公平と指摘されてきました。また、第3号被保険者に該当する専業主婦は、年収が130万円以上にならないよう勤務を調整する傾向があり、これまでも見直しの議論が繰り返されてきました。

第3号被保険者の適用には、前述の通り年収130万円未満という条件があります。それ未満であれば、パートタイム等により収入を得ていても、年金の保険料はタダ。その点で専業主婦の方が得と思われがちですが、果たして、本当にそうでしょうか。

女性が結婚、出産後も就業を続けていけば、将来の年金額もより多く受け取れ、生涯賃金も大きく増えます。大学を卒業した女性が、23歳~60歳まで働いた場合の生涯賃金は2億1000万円、将来の年金額は月額15.6万円になります(厚生労働省「賃金構造基本統計調査」2013年・大学・大学院卒女性の正社員の勤続年数別平均賃金から23歳で就職した場合の生涯賃金と年金額を計算)。一方、子育てのために30歳で退職し、その後再就職せず専業主婦で過ごした場合の生涯賃金は2,000万円、将来の年金額は月額7.5万円。40歳から定年まで週40時間程度の非正社員として働いた場合の生涯賃金は推計8,200万円です。このように働き方の違いにより、金額に大きな差が生じることは周知の通りです。

ただ、多くの女性が働いていくには、「仕事・育児・介護を両立できる働き方」の整備など課題も多いのが現実です。働きたくても子供を預けられないなどさまざまな事情がある人もいます。とはいえ、今後も、第3号被保険者制度はその対象範囲の縮小など見直しが検討されることから、可能な限り働き、保険料や税金も負担する働き方を選択することも必要になると思われます。

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