「Carl's Jr.(カールス・ジュニア)」というハンバーガーブランドをご存じだろうか。アメリカで圧倒的存在感を誇る南カリフォルニア生まれの本格ハンバーガーチェーンが、今まさに日本に上陸しようとしている。品質は「プレミアム」で、価格はお手ごろ。ブランドのイメージは「セクシー」で「エッジー」……。本格進出に先がけて、謎に包まれたその全容をお届けする。

ブランドイメージは「セクシーで、エッジー」

始まりは1台のホットドッグ屋台

「Carl's Jr.」の誕生は、70年以上前にまでさかのぼる。1941年、アメリカ・南カリフォルニアで、1組の夫婦が自家用車を担保に311ドルのホットドッグ用屋台カートを購入。やがてカートは4台にまで増え、5年足らずで「炭火焼(Charbroiled)ハンバーガー」を提供するハンバーガーショップにまで成長したという。

そして、現在。「私たちはアメリカ国内においてファストフード業界のリーダー的立場を確立している」。そう語るのは、同店を運営するCKEレストランホールディングス社長のE・マイケル・マーフィー氏である。

同ブランドはアメリカ国内の2,890店舗だけでなく、世界31カ国に600店舗を展開。同氏によると、「全体の売り上げは40億ドル」にのぼるといい、また、「革新的なプレミアム・プロダクツ戦略」と「時代を先取りする宣伝戦略」にその成功の一因があるという。

CKEレストランホールディングス社長のE・マイケル・マーフィー氏

「プレミアム品質」へのこだわり

「プレミアム(premium)」は、同店のハンバーガーを紹介する上で欠かすことができない言葉だ。同店の信条は、「イートイン・レストランに匹敵する質の高いメニューを提供しつつ、同時にファストフードのお手ごろな価格と便宜性をお客さまに提供」すること。できたての商品を提供するために、注文を受けてから調理を開始するという。

ハンバーガーに使うパティは、牛肉の場合ブラックアンガスビーフを100%使用。鉄板ではなく、全て炭火焼きで調理している。また、レッドオニオンやトマト、レタスといった野菜の新鮮さにもこだわり、野菜の調理も全て店舗内で行っているという。

高品質な素材と調理への細かな気配り、リノベーションを繰り返す貪欲なメニュー開発などのさまざまなこだわりが、社長自身をして「最高品質(premium quality)」と言わしめるハンバーガーを生み出している。

それでいて、価格はお手ごろなのも特徴だ。アメリカでの客単価は約7ドル75セント。ベーシックなハンバーガーは3ドル95セントで提供している。日本で展開する際も、品質はそのままに「十分な競争力を持った価格」で商品を提供するという。

アメリカで展開しているメニューとしては、「ハラペーニョバーガー」「マッシュルームバーガー」「ステーキハウスバーガー」「テキサス トースト ベーコンチーズ」などのハンバーガーや、バンズをレタスに変えた低炭水化物の「low・carb」シリーズなどがある。

同店の定番商品「オリジナル シックバーガー」

ハラペーニョバーガー

マッシュルームバーガー

ステーキハウスバーガー

テキサス トースト ベーコンチーズ

low・carb シックバーガー

広告はちょっと刺激的?

「Carl's Jr.」のもうひとつの特徴が、個性の強い「ブランドイメージ」と「広告戦略」にある。同店の主なターゲットは「若く、空腹で、男っぽい人(Young Hungry Guys)」で、18歳から34歳までの男性客がメインだという。そんな同店が構築するブランドイメージは、「若々しく、肉体美にあふれ、セクシーで、エッジー、かつ不良っぽく革新的」なもの。一度聞いただけでは、とてもハンバーガーチェーンの売り文句とは思えない。

そんな顧客へのアプローチとして同店の出した答えが、「無数の競合から抜き出る広告」だった。同店のテレビCMに登場するのは、もっぱら若い男性やセクシーな女性たち。ハンバーガーをほお張る彼らの姿は、時として少々刺激的である。

CMに登場する人々

また、若者に人気の映画「X-MEN」シリーズや「SUPER MAN」とのコラボレーションCMなども作成。「世界のバーガー好きヤングのハートをつかむブランディング」が、同店の地位を確固たるものにしているようだ。

「X-MEN」の登場人物「ミスティーク」

「X-MEN」の登場人物「コロッサス」

日本での展開はこれから

徹底した品質と味へのこだわりを価格と両立させ、「セクシーでエッジー」というとがった個性を貫き通すハンバーガーチェーン「Carl's Jr.」。アメリカで存在感を放つ同店は現在、日本でのフランチャイズ・パートナーを募集している。

同社の国際筆頭副社長であるネッド・ライリー氏によれば、パートナー企業と相談の上、日本だけのオリジナル商品なども販売する予定だという。今後の進行にもよるが、9~12カ月以内には日本での第1号店を見ることができるそうだ。

CKEレストランホールディングス国際筆頭副社長のネッド・ライリー氏

カリフォルニア州カーペンテリア市の店舗

デンマークの店舗内装

ちなみに、アメリカで打っていた刺激的な広告については、店舗を展開する国に合わせて「文化的に適切な内容」、それでいて「印象に残るエッジーなもの」にするという。プレミアム品質のハンバーガーに、セクシーでエッジーなブランディング。これまでにないハンバーガーチェーンの、今後の展開から目が離せない。