常に肌身離さず持ち歩いている愛用のスマートフォンを擬人化したら、一体どんな人物になるだろうか? そんなユニークな発想を形にしたサービスが、5月22日から期間限定で提供されている。このスマートフォン擬人化診断サービス「スマ診」は、早稲田大学広告研究会とNTTドコモが共同で開発したもので、想定以上の反響・診断数を集めているのだという。

ユーザーのライフスタイルからスマートフォンを擬人化させる「スマ診」。Webサイトにアクセスすれば、誰でも気軽に診断できる

早稲田大学で体験イベントが開催! 自身のスマホ人格を診断

「スマ診」は、早稲田大学広告研究会とドコモが共同で開発したサービス。同サービスのWebサイトにアクセスし、簡単なアンケートに答えるだけで診断結果が得られる。契約キャリアは問わず、誰でも利用可能。SNSの利用頻度や充電の状況など、いくつかのデータがもとになりスマートフォンのキャラクターとセリフが生成される仕組みだ。提供期間は5月22日から6月30日まで。

5月22日、23日には早稲田大学構内にて「スマ診」を体験できるイベントが開催された。「スマホは何色? 」「普段予備バッテリーを持ち歩いていますか? 」「1日のツイート数はどのくらいですか? 」など17の質問事項が用意されており、それらに全て答えると「スマ診カルテ」(診断結果)が作成される流れ。参加者は、カルテに印刷されたQRコードをスマホで読み込むことで、自分のスマホのキャラクターを知ることができる。

22日と23日には、早稲田大学の構内で体験イベントが開催された

17の質問事項が用意されており、それらに全て答えるとスマ診カルテが作成される

参加者はドコモグッズ(弁当箱、箸、タオルのいずれか)がもれなくもらえる(写真左)。筆者も実際に体験してみた(写真右)

スマ診を体験したばかりの女性2人に話を聞くことができた。ともに教育学部の2年生。たまたまブースの横を通りがかり、スマ診を知ったという。2人の診断結果は「実は甘えん坊な、オシャレお姉さん」と「色気ムンムンツンデレタイプ」だった。前者は「どんな小さな秘密も絶対に漏らさない、信頼できる相手。甘えん坊な一面もあるが、やっぱりしっかりしたお姉さんタイプ」、後者は「あなたのスマホは新しいものをいち早くゲットしたい!最新のLINEスタンプを使って、友達とのおしゃべりも弾む」という解説がついている。2人は「まさか!そんな」「どの回答がこの結果に結び付いたんだろう」と笑った。お互いの診断結果も気になるようで、2人でスマートフォンの画面を見せ合っていた。

教育学部の2人は「実は甘えん坊な、オシャレお姉さん」と「色気ムンムンツンデレタイプ」という結果になった

ブースでは、早稲田大学広告研究会 ディレクターの藤原宏成さんに話を聞くことができた。スマ診はドコモが課題企業を務めた「早稲田大学広告研究会 広告戦略チーム」のコンペティションで最優秀賞を受賞したプロモーション企画がもとになっている。そもそも、どのような経緯でこのアイデアが生まれたのだろうか。藤原さんは「俳優の渡辺謙さんが出演しているドコモのテレビCMが話題になった頃、サークルの会議では"自分のスマホがどんな人か知りたいよね"という話で盛り上がりました。また、同じときにTwitterでは"診断メーカー"が流行っていました。これらがヒントになり、スマ診のアイデアにつながりました」と話してくれた。

早稲田大学広告研究会 ディレクターの藤原宏成さん

藤原さんに話を聞いている間も、スマ診のブースを訪れる人は途切れることがなかった。そこで周りの反響について聞いてみると「サイトがオープンしてから、友人からは"広告研究会はすごいことをやっているね"と言われるようになりました。早稲田の学生にはだいぶ広まったかな、と思っています」と笑顔になった。

22日のイベントブースは、行列が途絶えることのない盛況ぶりだった

どんな人に使ってもらうことを想定しているのだろうか。藤原さんは「携帯電話は、大学生が肌身離さず持っているもの。人との連絡もすべて、携帯電話を介して行われます。大学生にとって一番身近な存在で、個人の秘密が全て詰まっているんですよね」と前置きした上で「なので、全ての大学生にスマ診を使ってほしいと思っています」と言葉に力を込めた。

スマ診には男女で12ずつ、合計24ものキャラクターが用意されている。さらに、同じキャラクターでも質問の回答によって変化する、さまざまなセリフや解説が用意されているようだ。キャラクターの設定、コメントなどはすべて広告研究会のアイデアによるものだ。このキャラ設定について、藤原さんは「まずは、多くの利用者の方にツイートしてもらうことを考えました。したがってキャラクターの髪型、体型、ポージングはとても個性的なものになっています。シルエットから顔を想像して楽しんでいただければ幸いです」と解説する。ちなみに藤原さんは、自分が手掛けた「ちょっぴりキザな人気者」というキャラクターに強い思い入れがあるという。

登録キャラクターの例。左から「アフロダンサー」「色気むんむんツンデレタイプ」「飛べ! リーゼント番長」

キャラクターの解説も"大学生らしい"砕けた表現になっており、そんなところも楽しみの要素となっている。藤原さんは「今後は早大生全員に、そしてできれば他大学の学生にも利用していただければ。まずは診断結果をツイートしてもらい、サイトが流行るようになると嬉しいですね」と話していた。インタビュー中、藤原さんの表情や口ぶりからは"貴重な機会"を手にした喜びや感謝の思いが伝わってくるようだった。学生サークルがドコモのような企業とコラボするケースはまれだ。今回の例は、両者にとって意義深いものになるだろう。

学生の企画を最大限に活かす - ドコモ担当者が狙いを語る

このほか、コラボが決定したいきさつについて、NTTドコモのプロモーション部 戦略担当の安部早織氏にも話を聞くことができた。サービスの概要について、安部氏は「皆さんが普段持ち歩いているスマートフォンが、持ち主に対してどんなことを思っているのかを知れるサービスです」と解説した。早稲田祭(大学の学園祭)で協賛したのが、今回のコラボ企画につながったという。「協賛にとどまらず、学生の意見を取り入れた共同企画をやりたい。ドコモを身近に感じてもらうために、何かできることはないか。そう考えていたときに、早稲田大学広告研究会から話をもちかけてもらいました。コラボが決まってからは、実際に会って話しながらサービスのイメージを膨らましていく、その繰り返しでした」と安部氏。

共同でサービスの開発を進めていく過程で、これまで気付かなかった学生の動向を知ることができたという。例えば、学生はスマホのバッテリーの減り方を常に気にしており、モバイルバッテリーの需要も極めて高いということ。この事実に、安部氏は「頭では分かっていたけれど、ここまでかと驚きました」。今後のサービス改善につなげていきたい考えだ。

今回の企画でこだわった点を聞くと「学生の企画なので、学生が一生懸命に考えたアイデアを最大限に活かすことを考えました。そのため、最終判断はいつも学生側に委ねました。ドコモが前面に出ないよう、後ろから目立たないようにバックアップしていくというスタンスをとりました。スマ診を通じて、利用者に"こんな企画を実現した学生たちがいるんだ"と感じてもらえたら嬉しいです」。今回の取り組みに刺激を受けて、他大学を含めたほかの学生からも新たなアイデアが出ることを期待しているという。

ちなみに筆者も実際に体験してみたところ、「デレデレ系ヤンキー」という結果だった。「あなたのスマホは、あなたと一緒にいることにうんざりしがち。でもそれは愛情の裏返し。仲が良くて羨ましい」とある。常にべったりと寄り添う間柄なので、この解説には妙に納得してしまった。自分だけのキャラクターが生成されたことで、スマホにさらなる愛着が沸いた気がしている。

筆者のスマホを診断した結果、デレデレ系ヤンキーだった。診断結果はワンタップでシェア(ツイート)することができる

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ドコモによると、6月2日現在、スマ診の利用者数はのべ10万人を突破したという。また、「スマ診」を含む単語がTwitter上で呟かれた回数を調べたところ、こちらは6000件を突破したとのこと(ドコモの発表による)。日本でも屈指の"マンモス大学"と言われる早稲田大学だが、その学部学生総数でさえ約4万5000人である。スマ診が早稲田大学の学生の中にとどまらず、多くの若年層に受け入れられて、Twitterのシェアを重ね広がっていったことが示されている。しかも、サービスの提供開始からわずか2週間足らずで利用者数がここまで伸びていることに改めて驚く。

ディレクターの藤原宏成さんは「診断結果をツイートしてもらい、サイトが流行るようになると嬉しい」と話していた。狙い通りの結果と言えるのではないだろうか。学生のアイデア・感覚を大切にしつつ、ドコモという大きな企業が黒子に徹しサービスとしてのクオリティを磨き上げたコラボレーションの形が、スマ診のこの反響を生んでいると感じた。スマ診の提供期間は6月30日までを予定している。今後の利用者数の推移にも注目したい。