「管理栄養士」という職業を聞くと、どういう仕事をしているイメージを持つだろうか。我々の多くが小中学校などでお世話になったであろう、給食を作る給食室も管理栄養士が働く場の一つだ。だが、近年は"給食のおばちゃん"というイメージとはかけ離れた管理栄養士も数多く存在している。その一例を紹介する。
栄養士と管理栄養士の違いとは
意外と知られていないかもしれないが、栄養士と呼ばれる資格には2種類ある。それは「栄養士」と「管理栄養士」だ。
栄養士になるには特別な試験は必要なく、厚生労働大臣の指定した栄養士養成施設を卒業すればその資格を名乗れる。管理栄養士は「管理栄養士国家試験」に合格しないと管理栄養士を名乗れず、受験をするには栄養士として一定期間、実務経験を積むか、管理栄養士養成施設を卒業する必要がある。すなわち、管理栄養士の方がより"敷居"の高い栄養士なのだ。
栄養士法では、栄養士を「都道府県知事の免許を受けて、栄養士の名称を用いて栄養の指導に従事することを業とする者」と定めている。一方で、管理栄養士を「傷病者に対する療養のため必要な栄養の指導、個人の身体の状況、栄養状態等に応じた高度の専門的知識及び技術を要する健康の保持増進のための栄養の指導」などができる者と定めている。この栄養士法に記載されている文言を見るだけでも、いかに管理栄養士が高度かつ専門的な知識を有しているか、容易に想像できるのではないだろうか。
管理栄養士が働く場
では実際、管理栄養士はどのようなフィールドで活躍しているのだろうか。企業や学校・病院など、グループ全体で国内の約3,800カ所にて毎日約120万食を提供するエームサービス所属の管理栄養士・松岡未希子さんに話を聞いてみた。
「管理栄養士にはさまざまな働き口があると思います。働き場所は給食を提供する学校をはじめ、病院やスポーツ施設、企業で栄養や食品の研究している人もいます。仕事の内容も多岐にわたります。例えば、病院では食事を作る人もいれば、栄養指導・栄養サポートをする人もいます」。
近年はスポーツ栄養に関する高い専門性を有した管理栄養士「スポーツ栄養士」の活躍の場が増えてきたり、「NST」(Nutrition Support Team: 栄養サポートチーム)のメンバーとして、病院で医師や看護師らと一緒に病棟を回り、患者の栄養状態を直接チェックしたりする管理栄養士も出てきている。
また、大手食品メーカーなどに勤務し、優れた栄養価を持つ栄養補助食品の研究・開発を行ったり、健康栄養について大学などで教鞭(きょうべん)を振るったりするケースもある。「ベースには皆、『管理栄養士』という資格を持っていますが、それぞれの部分で専門性を高めて活躍している人が多いと思います」。
どんどん活躍の場が広がる管理栄養士。会社の社員食堂や学校、病院、ホテル・レストランなどで、おいしくバランスの良い食事を摂(と)れるのは、管理栄養士の尽力による部分が大きい。今度それらの施設を利用する際には、彼(女)らに感謝しながら食事をしてみてはいかがだろうか。