ブラジルで開催される「2014 FIFAワールドカップ」に臨む日本代表。今大会のダークホース的存在でもある強敵コロンビア代表とのグループリーグ最終戦を、勝ち点獲得を義務づけられる状況下で迎えたときにこそ、燃える男・大久保嘉人の存在感が増してくる。
ファルカオ抜きでも侮れないコロンビア
コロンビアのエースストライカー、ラダメル・ファルカオがワールドカップ本大会に臨む23人から外れた。今年1月に左ひざの前十字じん帯を損傷したファルカオは復帰を目指し、懸命なリハビリに努めてきたが、100%の状態に戻ることはかなわなかった。
コロンビアが4大会ぶりのワールドカップ出場を果たし、最新のFIFA世界ランキングでも5位躍進を果たしたダークホースへと急成長を遂げた背景には、世界屈指の得点感覚を誇るファルカオを抜きには語れない。
だが、ファルカオの欠場は必ずしも日本にとって追い風にはなり得ない。理由は単純明快。ファルカオに触発されるかのように、コロンビアには強力なFW陣が台頭してきているからだ。
相手を力でねじ伏せる3トップ構想の脅威
南米予選でファルカオに次ぐチーム2位の6ゴールをマークしたテオフィロ・グティエレスは、味方をうまく使う術にたけている。柔らかいプレーでポスト役をこなすジャクソン・マルティネスは、ポルトガルリーグで2シーズン連続の得点王を獲得。リーガ・エスパニョーラのセビージャで14ゴールをあげたカルロス・バッカはスピードがあり、ゴール前の密集地帯で巧みにシュートコースを見つけだす。
基本布陣は4‐4‐2だが、ホセ・ペケルマン監督はワールドカップ用に3トップ構想も温めている。タイプの異なるアタッカー陣の長所を前面に押し出して、相手を力でねじ伏せんとする意図が伝わってくる。
日本としては2勝をあげ、グループリーグ突破をほぼ確実にした状況でグループ最強のコロンビアと対戦したい。選手をある程度入れ替え、主力の疲労を取り除きながら、ある意味で「消化試合」とすることが理想的なシナリオとなる。
大久保の闘志と得点感覚に勝利を託す
もっとも、青写真通りにことが運ばないのがワールドカップだ。決勝トーナメント進出へどうしても勝ち点が必要な状況でコロンビア戦を迎えた場合、ザックジャパンは前回大会のように守備に比重を置いた戦い方から勝機を見いだすオプションを持ち合わせていない。
それならば、FIFA世界ランキング46位の日本が総力を結集させて、実力的に格上となるコロンビアに文字通りの真っ向勝負を挑むしか選択肢がない状況においては、切り込み隊長役となるワントップを大久保嘉人に託したい。
常に戦う姿勢を前面に押し出し、ゴールを貪欲に狙い続ける大久保は、他の攻撃陣にはない正確かつ強烈なミドルシュートの秘密をこう語っている。
「いまはシュートを打つ前に弾道をイメージすると、ホントにその通りに飛んでいくんですよ」。
強豪コロンビアに臆(おく)することなく点の取り合いを挑む。大久保の頼れる背中が、勝利への羅針盤となる。
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筆者プロフィール : 藤江直人(ふじえ なおと)
日本代表やJリーグなどのサッカーをメインとして、各種スポーツを鋭意取材中のフリーランスのノンフィクションライター。1964年、東京都生まれ。早稲田大学第一文学部卒。スポーツ新聞記者時代は日本リーグ時代からカバーしたサッカーをはじめ、バルセロナ、アトランタの両夏季五輪、米ニューヨーク駐在員としてMLBを中心とするアメリカスポーツを幅広く取材。スポーツ雑誌編集などを経て2007年に独立し、現在に至る。Twitterのアカウントは「@GammoGooGoo」。