MMD研究所が6月4日に公表した調査結果によれば、全国14都市95カ所で実施した主要3キャリアの通信速度調査において、ダウンロード平均スピードはAndroid、iPhoneともソフトバンクが最速となったという。本稿では、調査結果について詳しく見ていくとともに、各社の最新の取り組みをおさらいしていきたい。
同調査は各社より夏モデルのAndroidスマートフォンが発売されたことを受け、ネットワーク状況の実態を把握するために実施したもの。使用端末は、各社の夏モデルのAndroidスマートフォンおよびiPhone 5c。Androidスマートフォンは、ドコモの「Xperia Z2 SO-03F」、KDDI(au)の「GALAXY S5 SCL23」、ソフトバンクの「AQUOS Xx 304SH」を使用した。
調査スポットは札幌、盛岡、仙台、東京、横浜、金沢、名古屋、京都、大阪、岡山、高松、広島、福岡、熊本の全国主要14都市95カ所で、各都道府県における主要都市の駅・ランドマークをランダムに抽出して選定した。なお、調査には「RBB TODAY SPEED TEST」アプリを利用し、10時から19時の時間帯に同条件下で各端末3回計測を行い、平均値を記録した。期間は5月24日から28日まで。
ダウンロード平均スピードはソフトバンクが首位に
調査結果を詳しく見てみると、14都市95カ所のダウンロード平均スピードは、Android端末では、ソフトバンクが29.89Mbps、ドコモが28.02Mbps、KDDIが25.12Mbps。iPhoneでは、ソフトバンクが29.67Mbps、ドコモが25.33Mbps、KDDIが20.67Mbpsとなり、Android、iPhoneともに、ダウンロード平均スピードで首位となったのはソフトバンクという結果だった。また、両端末ともに、2位がドコモ、3位がKDDIと順位は同じだった。
また、調査結果では、ダウンロード平均スピードの結果を10Mbpsごとに6段階に区分けした分布状況も公表されている。ダウンロード平均スピードが20Mbps以上となった調査スポット数は、Androidでソフトバンクが95カ所中78カ所、ドコモが65カ所、KDDIが58カ所だった。また、iPhoneでは、ソフトバンクが72カ所、ドコモが59カ所、KDDIが40カ所となり、20Mbps以上を記録したスポット数でも、Android、iPhoneともにソフトバンクがもっとも多く、次いでドコモ、KDDIという順番だった。
結果をまとめると、14都市95カ所におけるダウンロード平均スピードでは、Android、iPhoneともにソフトバンク首位となり、ダウンロード平均スピードが20Mbps以上となった調査スポット数においても、Android、iPhoneともにソフトバンクが最多だった。今回の調査が行われたスポットでは、機種に関係なくソフトバンク端末の通信速度が、最速かつ安定していたことを示す結果となっている。
各社のネットワークの最新状況をチェック
今回、全国主要14都市95カ所におけるダウンロード平均スピードで首位となったソフトバンクだが、同社のネットワークの特長としては、2.1GHz帯と1.7GHz帯の「倍速ダブルLTE」、Android向けのAXGP/FDD-LTEの両方の通信方式に対応した「Hybrid 4G LTE」が挙げられる。また、パケット通信ログのビッグデータを活用した電波の品質改善にも取り組んでおり、それらの「つながりやすさ」への取り組みが、今回の首位にも影響していると考えられる。
また、ソフトバンクでは今夏より、900MHz帯を利用したプラチナバンドLTEを提供開始する予定だ。"つながりやすい"とされるプラチナバンドLTEは、すでにドコモやKDDIが800MHz帯で提供しているが、今回の調査結果のように現状でも通信速度で優位であるソフトバンクがプラチナバンドLTEを開始することで、さらなる品質改善が期待できそうだ。
また、ドコモはダウンロード平均スピードでAndroid、iPhoneともに2位となった。同社による最新のネットワークの取り組みとしては、6月下旬から提供開始する、LTEを利用した音声通話サービス「VoLTE」が挙げられる。
従来の回線交換方式の通話と比べて高音質なのがVoLTEの特長だが、実際に高音質通話ができるのは、夏モデル以降に発売された対応端末間のみに限られる。また今後、他キャリアがVoLTEを開始しても、当面は互換性がない見込みで、同じキャリア間でしかVoLTEを利用できない。そのため、自身が最新機種を持っていたとしても、VoLTEで通話できる相手はごく一部に限定され、しばらくはメリットを感じられる機会は少ないかもしれない。
今回の調査では、KDDIはAndroid、iPhoneともにダウンロード平均スピードで最下位だった。同社では、複数の周波数帯を同時に利用するデータ通信技術「キャリアアグリゲーション(CA)」を5月より導入した。2.1GHz帯と800MHz帯という2つの周波数の下り最大75Mbpsをまとめて合算し、下り最大150Mbpsの通信を可能にするというものだが、現時点では、下り最大150Mbps対応エリアはごく一部に限られているからか、今回の調査結果ではその恩恵を見て取ることができなかった。また、キャリアアグリゲーションに対応する端末も、夏モデル以降の一部機種となるため、メリットを享受できるユーザーは限定されるだろう。
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全国14都市95カ所で行われた通信速度調査の結果を見ていくとともに、各社のネットワークの最新状況についておさらいしてみた。ドコモのVoLTEや、KDDIのキャリアアグリゲーションといった目新しいサービスは、なにかと注目されがちだが、実際には利用できる端末やエリアなどが限られ、浸透するまでには時間がかかりそうだ。
今回の調査でも、既存のネットワークの強みを活かしたソフトバンクが、ドコモとKDDIに勝利した。LTEの次世代となる「LTE-Advanced」に向けては、各社ともにスタートラインに立った段階と見ることができ、今後の各社の取り組みが注目される。