COMPUTEX TAIPEI 2014の会場で、マウスコンピューターが新規開発中のコンセプトモバイルノートの試作機を見ることができた。会場を訪れていた同社の小松永門社長が特別に公開してくれたもので、試作機には、本機の最大の開発コンセプトである「良い意味での、"古き良き"パソコンを、モバイルノートとして復活させたい」という思いが仕様として盛り込まれている。
今回のモバイルノートは製品化を前提としているが、現時点ではコンセプトのみが反映された試作機であるため、必ずしもこのまま製品になるわけではない。ただ、"古き良きパソコンを"というコンセプトは既に確定したもので、伝統的なパソコンの使いやすさを、中身は最新の技術で、しかも価格プレミアなく(つまり安く)提供したいという部分については、必ず実現したいという。
最近のノートパソコンは、特にUltrabookや2-in-1に代表されるモバイルノートにおいては、ハードウェア技術の進化は薄さや軽さ、あるいは可変機構などのギミックといった部分の重点的に反映され、価格も比較的上がってしまう傾向にある。一方で、例えば薄さの極端な追求が、ユーザーの利便性を損ねてしまう部分も多かったのではないか、と同社では考えた。
そこで、"パソコン"として本当に使いやすいモバイルノートを考え直してみたい、と開発がスタートしたのが、今回、小松社長が見せてくれたコンセプトモバイルノートだ。「昔はこうだったのに、という部分で、良い部分はあえて"戻そう"と考えた」という。13.3型サイズの試作機の外見は、パッと見はちょっと古めかしい感じもするコモディティノートに見える。しかし、中身のハードウェアが最新世代であることはもちろん、さまざまな細かなこだわりを見て取れる。
13.3型の液晶の解像度は1,600×900ドット。BTOオプションで高解像度のIGZO液晶など用意する可能性もあるが、標準仕様はこの解像度だ。これもあえての解像度で、dpiが小さすぎない見やすさを考えたもの |
例えばキーボードは、打ちやすさ重視であえて厚くつくっており、1.8mmのかなり深めのキーストロークを確保。「これだけで仕事ができるキーボード」(小松氏)といい、キーストロークが1mmちょっとしかないようなモバイルノートに、外付けキーボードを接続して使う……、これでは本末転倒で、本当にモバイルなのか疑問があったのだという。実はキートップからメンブレンから、全て作り直しているため、通常の薄いキーボードよりもコストがかかっているそうだ。タッチパッドのボタンも、内蔵でもシーソーでもない、押しやすさだけを重視した独立2ボタンだ。
キーボードやタッチパッドなどは、こういった仕様を採用すると本体の厚みがでてしまうため、部品サプライからも「なんで今時こんな仕様で? 部品を交換するだけで簡単にもっと薄くできるから変えよう」と何度も言われたそうだ。だが、同社では「だってこっちの方が使いやすいじゃないか」と、現在の試作機に見られるようなキーボード/タッチパッドを採用した。
インタフェースも使い勝手が最優先だ。D-SubとLANコネクタは残しているし、ケーブルや接続機器の設置の取り回しを考慮して、USBポートは必ず本体左右両側に分散して配置し、D-SubとLANも左右に分けて配置している。バッテリも内蔵ではなく、ユーザーが交換可能な着脱式だ。本体内部へのアクセスも、(おそらく製品で行うと保障対象外になるが)ねじを外すだけで底面のカバーがまるごと解放でき、ユーザーが自らメモリやストレージを交換したいというケースを想定したつくりとなっている。
一方で中身は最新世代だ。試作機でも、HaswellベースのU型番のプロセッサを搭載するプラットフォームを採用し、同じ設計でIntel次世代のBroadwell(開発コードネーム)プロセッサまで搭載できるようにしてある。ストレージではM.2のほか、2.5インチSATAのスペースも確保し、SSD+HDDのデュアルストレージに対応。メモリスロットもあえて1スロットではなく2スロット用意した。また、内部のレイアウト的には、アンテナの取り回しも含めて4G/LTEものせれるようになっており、MVNOのSIM利用を想定した4G/LTE対応も検討している。
一方で"モバイル"を前提としたコンセプトなので、本体の重量は抑え、バッテリ駆動時間もある程度確保する必要がある。重量は、HDDを搭載するデュアルドライブ構成で1.5kgを切るように、最小構成では1.1~1.2kgにおさまるよう開発を進めている。バッテリは2セルか4セルの容量を想定し、現時点ではバッテリ駆動時間5時間以上を目指しているとのことだ。
本コンセプトのもともとの開発のきっかけは、同社がUltrabookの初期世代として世に送り出した「LuvBook X」の存在だったという。両面カーボンで900グラム代の薄型モバイルで、評価も高かったが、生産性や価格の面では、ユーザーメリットにつながらなかったかもしれないという振り返りがあった。今回のモデルは、「Ultrabookにならないこと=プレミアムではないこと」を目指し、普通のノートPC感覚で提供できるものにしたいという。
登場時期については、開発の真っ最中であり、販売チャンネルなども決まっていない状態だそうだが、今年の夏から秋にかけての製品化を目指す。今回のコンセプト自体も、本機の製品化による単発のものではなく、真面目なクラムシェルを作り続けるといったかたちで、継続的なコンセプトとして続けていく意向という。