ブラジルで開催される「2014 FIFAワールドカップ」に臨む日本代表。テクニックとボールポゼッションで日本が優位に立つギリシャ代表との第2戦だが、油断は禁物だ。日本が主導権を握る展開こそが、ギリシャにとっての理想のゲームプランとなるからだ。
ギリシャのメンタルを支える2つの得点パターン
我慢比べ―。日本時間6月20日に行われる、ギリシャとのグループリーグ第2戦のキーワードだ。テクニックを比較すれば、間違いなく日本に軍配が上がる。日本は試合を支配し、ボールポゼッションでも圧倒するだろう。
しかし、こうした展開をギリシャはむしろ得意としている。ヨーロッパ予選とプレーオフを合わせた12試合で、失点はわずか「6」しか許していない。粘り強く、歯を食いしばってゴールを守り抜く戦い方は、ヨーロッパ選手権を制した2004年から変わっていない。
「つまらないサッカー」「時代遅れのスタイル」とやゆされても意に介さない。ある意味で強靱(きょうじん)ともいえるメンタルを支えているのが、攻撃における絶対的な武器だ。ギリシャが得意とする乾坤一擲(けんこんいってき)のカウンターと正確なセットプレーを、じつはザックジャパンは苦手としている。
昨年6月のコンフェデレーションズカップ以降の13試合(国内組で臨んだ東アジアカップは除く)で喫した24失点のうち、半分以上の「13」がカウンターとセットプレーに起因している。
日本のセンターバックに求められる細心さ
カウンターではボールを奪うと、まず左サイドに張り出した193cmのFWゲオルギオス・サマラスへとロングパスを通す。サマラスが起点となり、10年前の栄光を知る37歳の司令塔、ゲオルギオス・カラグーニスが仕掛け、チーム得点王のFWコンスタンティノス・ミトログルが仕留める。
セットプレーではサマラス、189cmのミトログルだけでなく、同じく186cmのDFコンスタンティノス・マノラスやMFアレクサンドロス・ツィオリス、185cmのDFバシリス・トロシディスらの高さが日本の脅威となる。
日本としては、ギリシャの分厚い守備網に攻撃がはね返され続けても、絶対に焦らないことが肝心となる。前のめりになってバランスを崩す、あるいはパスミスなどを犯した瞬間を、ギリシャは絶対に見逃さない。センターバックに入る吉田麻也と森重真人には、日本が主導権を握っている時間帯でもリスクマネジメントを徹底する細心さが求められる。
本田と遠藤が操るセットプレーを生かせ!
相手のセットプレー時では、日本はマンツーマンで守るが、サイズで対抗できるのが189cmの吉田だけでは心もとない。内田篤人に代えて185cmの酒井宏樹、今野泰幸に代えて183cmの森重、ワントップには182cmの大迫勇也を起用して、「高さのミスマッチ」を最小限に食い止めたい。
日本は本田圭佑、遠藤保仁とセットプレーにおける優れたキッカーを左右対で擁している。ドリブルやワンツーなどで仕掛けて、ファウルを誘うのも有効な手段だろう。ゴールは流れの中だけで奪うものではない。攻守における我慢比べを制した先に、勝利が見えてくる。
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筆者プロフィール : 藤江直人(ふじえ なおと)
日本代表やJリーグなどのサッカーをメインとして、各種スポーツを鋭意取材中のフリーランスのノンフィクションライター。1964年、東京都生まれ。早稲田大学第一文学部卒。スポーツ新聞記者時代は日本リーグ時代からカバーしたサッカーをはじめ、バルセロナ、アトランタの両夏季五輪、米ニューヨーク駐在員としてMLBを中心とするアメリカスポーツを幅広く取材。スポーツ雑誌編集などを経て2007年に独立し、現在に至る。Twitterのアカウントは「@GammoGooGoo」。