歌手の吉幾三が、吉永小百合主演作『ふしぎな岬の物語』(10月11日公開)で27年ぶりに映画出演を果たすことが4日、明らかになった。
本作は、作家・森沢明夫氏の小説『虹の岬の喫茶店』を原作に、『孤高のメス』(2010年)や『八日目の蝉』(2011年)などで知られる成島出監督がメガホンをとった作品。のどかな太陽と海に抱かれて、独特の時間が流れる岬村に佇む・岬カフェを舞台に、吉永演じる店主・柏木悦子と周囲の人々の温かい人間模様を描いた。
吉の映画出演は、1987年に公開された『ドン松五郎の大冒険』以来のこと。吉が演じるのは、悦子の甥・浩司(阿部寛)と漁師の娘・みどり(竹内結子)が通っていた岬中学校の行吉先生。成島監督が吉の名前をもじって役名(行吉)を考案するなど、監督のイメージに一致したキャスティングとなった。
登場シーンは、問題児の浩司を心配して岬カフェを訪れる場面、中学校で浩司とみどりに出会う場面の2つ。成島監督からの台詞の細かな言い回しの要望にも応え、カフェの常連客・タニさん役の笑福亭鶴瓶とも共演した。旧知の2人は撮影の合間も会話を弾ませていたという。
27年ぶりの映画出演に吉は、「映画独特の雰囲気を楽しませてもらいました」と振り返り、「たくさんの人が一つ一つ、手作りしてできる様子は大好きですね」とコメント。「吉永さんとの共演は短い時間ではありましたが、ずっと変わらない憧れの方なので、いい緊張感がありました。今度はまたじっくりお芝居できればと思います」と吉永との再共演を望み、「役を通しての人との出会いがある。なんだか、また演技にはまってきましたね」と演じることの魅力を再認識していた。
一方の吉永は、「撮影初日から吉さんとご一緒で、『よし、行くぞ!』という気持ちになれました」と語り、「温かなお人柄が、そのまま役に出てらして、とても優しい雰囲気のシーンになったと思います」と分析。成島監督は「吉さんご自身の素朴な雰囲気がぴったりで、この作品全体の空気を作るうえで大きな役割を果たしていただきました」とたたえ、「また映画とは違う"匂い"を持っていらっしゃるので、作品の舞台になる岬村に住まう人々の豊かな個性という部分を自然と表現していただいたと思います」と評価していた。