気温・湿度が上がって梅雨を迎える6月は、朝夕の通勤電車が苦痛になる時期でもある。車内はムシムシ、体中汗でベトベト、普段は気にならない周囲の喧騒にもイライラ……、という経験を持つ人も多いのではないだろうか?
そんなときこそ気分転換。駅や車内で、「脳トレ」を試す良い機会かもしれない。現在、20万部突破のベストセラーとなっている『脳の強化書』(加藤俊徳著、あさ出版)の中から、通勤中でもトライできそうなトレーニングを一部紹介しよう。
1. 「1日の目標」を20文字以内でつくる
同書によれば、人間の脳は8系統の「脳番地」に分かれており、いずれも左脳・右脳の両方にまたがって存在しているとのこと。中でも「思考系脳番地」は、他の脳番地に影響を与える主要な脳番地のひとつ。これを鍛える方法として、「朝、1日の目標を決め、20文字以内で表現」することが紹介されている。
目標を立てる過程で、その日のスケジュールについて思いを巡らせ、さらに「20文字」という制約を課すことで、思考系脳番地が活性化するのだそう。トレーニングを始めるにあたり、強いストレスを感じることなく試せる方法でもあるので、「今日は『電話が鳴ったら誰よりも早く取る』を目標にしよう!」など、朝の通勤時に決めておくと良さそうだ。
2. 電車内で見かけた人の心理状態を推測する
「人間観察が趣味」という人は多い。見知らぬ人が多く乗車する電車の中は、人間観察にもってこいの場所といえる。車内で絶えずため息をつくスーツ姿の男性を見ながら、「この人はよほど会社でうまくいっていないのだろうか?」「いや、むしろ、『うまくいっていない自分』を周囲に見せたいだけでは?」などと想像を膨らませるのも楽しい。
このように、他人の表情・言動を観察することは、目や耳で得た情報への理解度を深める「理解系脳番地」の活性化に役立つとのことだ。とはいえ、人間観察も度が過ぎると他人に不快感を与え、トラブルの元にもなりかねないのでご注意を。
3. 外の看板を見ながら数字の「5」を探す
通勤電車の見慣れた車窓風景も、自分なりにテーマを決め、注意深く観察すると興味深いものに変わる。「今日は『5』の付く看板を探してみよう」と決めて窓の外を眺めると、それまでまったく気づかなかった「5」の付く看板が、不思議とたくさん見つかるはず。
車窓風景から特定の文字を探す訓練によって、動体視力が養われるのと同時に、「視覚系脳番地」も刺激される。なお、車窓だけでなく、車内の中吊り広告も「視覚系脳番地」に効果あり。1文字ずつ読むことで言語関係を司る脳番地が鍛えられ、色使いやデザインに注目して製作者の意図を探ることで、視覚系脳番地における「目利き」機能も強化される。
4. 階段を1段とばしで下りてみる
毎朝の満員電車も疲れるし、仕事を終えて電車に乗るときはもっと疲れている。駅に着いて改札口へ向かう途中、少しでも楽をしたいがために、階段ではなくエスカレーター・エレベーターを利用する人も多いだろう。
そこを我慢して階段を使い、「1段とばし」で上り下りするなど変化をつけてみよう。単に運動になるだけでなく、足腰を動かす「運動系脳番地」も鍛えられる。とくに「1段とばし」で階段を下りるのは意外に難しく、普段使わない注意力が必要となることから、脳が新鮮な刺激を受けるのだそうだ。
5. 「楽しかったことベスト10」を決める
毎日の仕事が順風満帆であるはずがない。大小さまざまなミスやうまくいかない人間関係が原因で、気持ちが沈んだまま、あるいはイライラしたまま帰りの電車に乗る日もあるだろう。そんなときこそ切替えが大事。無理やりでもいいから過去の楽しかった思い出をいくつか挙げ、「ベスト10」形式で並べてみよう。
この訓練で、「思考系脳番地」と並んで主要な脳番地とされる「感情系脳番地」が鍛えられる。過去の記憶を蘇らせ、当時の楽しかった感情を再現することで、現在の感情も意識的にコントロールできる。このプロセスが感情系脳番地に刺激を与えるのだという。
「脳の学校」代表を務める医師・医学博士、加藤俊徳氏の著書『アタマがみるみるシャープになる! 脳の強化書』(あさ出版)は2010年発行。今年に入ってじわじわと売上げを伸ばし、20万部突破のベストセラーに。「2014年 上半期ベストセラー 単行本 - ビジネス書」でも7位にランクイン(トーハン調べ)している。
ここで紹介したトレーニングの他にも、「ゲームでわざと負ける」「『大好きなもの』を10日間絶つ」「10年前に読んだ本をもう一度読む」など、計66のトレーニングが紹介されており、その内容はどれもユニーク。普段の何気ない行動が意外な形で脳を鍛えていることに、改めて気づかされるはずだ。なにかと気分が沈みがちな梅雨のこの時期、同書を手に、通勤中の「脳トレ」でリフレッシュしてみてはいかがだろうか?
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