今年1月にドイツを出発し、14カ月かけて32カ国をまわる世界1周ツアーに挑戦中の「スマート フォーツー」が、インドや中国などアジア諸国を経て、このほど日本へ到達した。樹脂製のパーツを使ってドイツで改造されたもので、関西から九州、東北も走り、その性能を証明していくという。
ドイツで生産されるすべてのクルマに純正採用されるパーツとは?
今回の世界1周ツアーは、ドイツの自動車部品メーカーであるイグスの創業50周年と、その主力製品「イグリデュール」の開発30周年を記念して企画されたキャンペーン。日本での旅程のスタートにあたり、都内でプレスカンファレンスが開催された。
ツアー中の「スマート フォーツー」は、ドイツのケルン工科大学にて、樹脂製ベアリング「イグリデュール」を用いて改造されたもの。ワイパーやスロットルボディをはじめとしたクルマの可動箇所には、通常、金属製ベアリングが使われていることが多いのだが、同車ではこれを樹脂製に置き換えているという。ベアリングの交換とは、ちょっと地味な改造だが、金属から樹脂への交換によって軽量化が図れるなど、さまざまなメリットがあるそうだ。
イグス日本法人の代表取締役社長、北川邦彦氏が行ったプレゼンテーションによると、改造を加えたのは全部で56カ所。室内ではブレーキペダルやシートアジャスター、外装ではワイパーやコンバーチブルの幌、エンジンルームではスロットルボディやオルタネーターなど、さまざまな部分のベアリングを換装したとのことだ。
北川氏はドイツで生産されるすべてのクルマに「イグリデュール」が純正採用されることにも触れ、今回の「スマート フォーツー」では手を付けなかったサスペンションやステアリングシステムなどのシャーシにも使われると説明。「日本では他国に比べて、イグリデュールをまだ使っていただけていない」と、このキャンペーンを機に周知を図るとした。
32カ国を走破するツアーで、耐摩耗性を証明する
プレスカンファレンスの会場には、同社の製品が多数展示され、樹脂製ベアリングのメリットをアピール。金属に比べて軽量であることはもちろん、素材自体に潤滑剤が配合されているため、グリスなどが不要であること、隙間を最小限に抑える精密設計で、きしみ音の発生を低減できることなどが解説されていた。
耐摩耗性については、来年4月にドイツで開催される予定の「ハノーバーメッセ(国際産業技術見本市)」にて、「スマート フォーツー」を解体し、世界1周ツアーを走り終えたベアリングの摩耗具合を確認して公開するとのこと。ドイツ生まれのテクノロジーの性能が、ここで証明されるはずだ。
「スマート フォーツー」は日本滞在中、東北から九州にかけて走行する予定。古都・京都や広島の原爆ドーム、阿蘇、伊勢神宮、富士山などを巡っていくという。東日本大震災の被災地でチャリティのセレモニーも企画されており、最後はイグスの栃木工場で日本の旅程を締めくくるそうだ。6月17日に日本を離れ、サッカーW杯が開催されるブラジルへ。その後、北米とヨーロッパの27カ国をまわる日程となっている。