岐阜県の中ほどにある美濃加茂市が今、「美濃加茂焼きそば」で大きく盛り上がっている。近年大流行の「ご当地グルメで地域活性」という取り組みの一環だと思うが、実際のところ味はイケているのか? 現地で調査を敢行してみた。
最初は塩味、それから濃厚ソースを
まず足を運んだのは、「居酒屋 き助」。オーダーする前に店主の若宮俊夫としおさんに話を聞いてみた。「昔、美濃太田駅(美濃加茂市の中心的な駅)の駅前に『福寿堂』っていう食堂があったんだよ。その店の味を再現しているのが『美濃加茂焼きそば』ってわけ」。
若宮さんも若い頃は福寿堂でよく焼きそばを食べたそうで、「40代以上の美濃加茂の人にとってはソウルフードといってもいいくらい懐かしい味なんだよ」とほほ笑む。まずは食べてみよう。ということで「焼そば」(600円)をオーダー。「お待たせ」と出てきたのは塩焼きそばだった。
焼きたての麺がシコシコしてほのかな塩味と絡んでおいしい。若宮さんが「これをかけてね。味が変わるから」とおもむろにウスターソースを手渡してくれた。美濃加茂焼きそば特有のシャビシャビな感じのソースだ。また、具材はというと、600円という値段だけあってかなり豪華だ。蒸し鶏、ゆでイカ、キャベツ、ニンジン、モヤシ、さらにその上に定番の目玉焼きである。
「最近は、うちも具材を入れて少し高級にしてるけど、本来、美濃加茂の焼きそばっていうのは子供や学生でも食べられるリーズナブルなものだったんだよ」と若宮さん。なるほど、歴史がある味なんだな。
●information
居酒屋 き助
岐阜県美濃加茂市森山町2-1-22
ルールを守りつつ個性を生かした焼きそば
若宮さんによると、福寿堂の味を懐かしんだ地元の人たちがその味を再現しようと、2011年に「復刻会」を立ち上げ、福寿堂のご当家に話を聞くなどして復刻を試みたという。そこにイマ風の感覚も加えて新しく完成させたのが、復刻版の「美濃加茂焼きそば」というわけだ。そんな経緯もあるため、復刻会が行う各店の料理人への指導にも熱が入っている。
ちなみに、復刻会では「美濃加茂焼きそば」のルールを設けている。「麺は中太麺を使用」「後がけソースは指定のオリジナルソースを使用」「塩、こしょう、魚粉で味付け」などがルールで、ソースはとろみがあって濃厚、かつ、やや甘めな味わいとなっている。
ルールがあると「どの店に行っても同じ味になってしまうのでは?」と感じてしまうかもしれない。しかし、実にユニークな個性で輝いている店もあるのだ。そのひとつが「CONEY」である。
普段は岐阜県内の公演やイベント会場で移動販売をしているこの店の「美濃加茂焼きそば」は、なんと驚きのラップサンドスタイル。タコスのトルティーヤの皮で包んでいるのだ! しかも300円とリーズナブルなのもうれしい。
「食べ歩きできるからイベント会場で人気ですよ」と言うのは店長の伊左治栄子さん。肝心のソースはというと「別添でお渡ししています。お好みでかけてくださいね」とのこと。片手でパクっと食べられるカジュアルさ。それでいて、中の味は本格的な焼きそばだ。皮で包んであるから熱が逃げないので、最後まで熱々が楽しめる。
●information
CONEY(移動販売)
岐阜県美濃加茂市田島町1-1-16
朝一から食べ放題で楽しめる
最後にもうひとつ、変化球を紹介したい。それは「ホテルのモーニングバイキング」。「ホテルルートイン美濃加茂」では水曜日と日曜日限定で、朝のモーニングバイキングで「美濃加茂焼きそば」を提供している。
味は素直な塩焼きそばといった印象で、もちろんソースは後がけ。バイキングだから、ご飯やトーストの上に載せたりいろんな楽しみ方ができる。え? 炭水化物×炭水化物は太るって? そんなことは気にしない!!
「宿泊されていない方でも、1,080円でお楽しみいただけますよ」とチーフフロントクラークの杉浦実さん。ちなみに小学生未満は540円。3歳以下は無料というからうれしい。モーニング提供時間は6時45分から9時まで。美濃加茂に出張がある人は、ここなら早朝からご当地グルメ「美濃加茂焼そば」を楽しめるぞ!
以上ざっと駆け足で紹介した「美濃加茂焼そば」。変わり種からスタンダードな一品まで、今後も様々な焼そばがエリアに登場するに違いない。ぜひ一度ご賞味あれ!
※記事中の情報・価格は2014年4月取材時のもの