5月28日から30日、東京ビッグサイトでワイヤレスジャパン2014が開催。ワイヤレスネットワーク系の比較的"堅い"内容だが、ここではコンシューマー目線で、今は実用になっていないが近い将来に使われるであろういくつかのテクノロジーを紹介したい。

VoLTEはLTEのままなので通話中のデータ転送でも高速

まずはNTTドコモのVoLTEだ。すでに2014年6月下旬から商用サービスがスタートされるし、VoLTEについての詳細は割愛して、ここではVoLTE対応ユーザーは何が嬉しいのか?、という一点に絞りたい(VoLTEはXiネットワークを用いて、高品質な音声通話を実現する新しい通話サービス)。

VoLTEは、もともとデータ転送専用だったLTEに音声通話を入れる技術。世界ではいくつか実用化されていたが、日本では、(世界の通信キャリアで最大のLTE関連)特許を保有するNTTドコモが最初にサービスイン

VoLTEになると周波数帯域が広がるとか、発呼が早い、より高品位なTV電話が使えると言っても、それはVoLTE同士の話。ある程度普及するまでは、相手に不自由するはずだ。なので、新料金プラン以外にメリットがあるかどうか、いまひとつではないか思っていた。が、意外なメリットがあった。

VoLTE以前のXi端末での音声通話は、LTEが音声通話をサポートしていなかったため、いったん3Gに回して通信を行う。つまり、音声通話中は常にFOMAモードでの利用であった。VoLTEの場合はLTEのままなので、VoLTE端末の場合は音声通話中のネットワーク利用が高速というメリットがある。

ただし、VoLTEが持つメリットの多くは、相手もVoLTEでないと享受できない。デモを見ていて相手を問わず使えると思ったのが、VoLTEだと通話中もデータ転送は高速なままという点だ

屋内位置測位にUWB(Ultra Wide Band)を使う

UWB(Ultra Wide Band:超高帯域無線)というと、Intelが一時期、近距離の広帯域通信としてプロモートしていたイメージがある。これを屋内測位に利用するデモが、NICTと三菱電機エンジニアリングのブースで行われた。

NICTは屋内に複数のUWB固定機を用意し、固定機から発した電波の応答時間をもとに距離を測定。最低3個の固定機を用いる三角測量によって、位置を特定するものだ。数十センチ単位という高い精度が得られるとのこと。すでにショッピングモールや倉庫会社と実証実験を行っており、精度はそれなりに確保できているようだ。三菱電機エンジニアリングのデモは4つのUWB親機を使用しており、xyzの三次元座標を表示できるという。

NICTの説明ボード。ちなみにこの展示エリアは測位関係でまとまっている。準天頂衛星や、屋内でGPSと同じ電波体を使って絶対位置を知らせるIMESも展示されていた。また、名古屋大学の研究は、スマホの加速度センサー、角速度センサー、磁気センサーと、Wi-Fi基地局の電波強度を組み合わせて、屋内測位を行うというものだ

位置特定のための発信機(2つ)。こちらの方式はPoEのハブを介して設置するので、倉庫やショッピングモールで実用試験が行われているように、比較的多数の設置が可能だ

開場直後に撮影したら1台しか映っていなかったが、充電中だったらしく、後で見たら台数が増えていた。精度は30cm程度だという

デモで使われていたタブレット。市販のAndroidタブレットにUMB受信機をかぶせている

こちらは三菱電機エンジニアリングのパネルとデモディスプレイ。システム構成を見ると、PCにUSB接続された伝送距離10mのノードが4つと、比較的狭いエリアに限定されるようだ

こちらがデモ環境。写真には写っていないが、アンテナのついている車はリモコンで動くので、車の移動がそのままディスプレイに表示される。4つのノードをすべて使うようなので、三次元位置の計測が可能だ

この技術を使った開発設計受託を行いますというデモンストレーション

ワイヤレス給電規格は第二世代に

携帯電話のワイヤレス給電としては、Wireless Power Consortium(WPC)のQiが普及している。これは電磁誘導方式を使用しているので、コイルの位置合わせが必要なのと、一対一(端末と充電器)の充電となる。対して、一昨年に設立されたAlliance for Wireless Power(A4WP)は、電磁界共鳴方式を用いており、位置合わせを厳密に行う必要がない。

今回、A4WPのプレジデント兼ボードチェアマンのカミール A. グライスキ博士が来日し、「スマートなワイヤレス給電を実現するAlliance for Wireless Power」という講演を行った。

講演を行ったカミール A. グライスキ博士(A4WPのプレジデント兼ボードチェアマン)。A4WPがrezenceブランドの進捗について講演するのは、日本で初めてとのこと

グライスキ博士によると、現在、A4WPのメンバーは100を超え、日本からも15社が参加。2013年にはコンシューマー向けのブランド「rezence」を制定している。2014年3月にはBSS(Baseline System Specification)1.2.1が完成し、4月には相互可用性テストとなるplugtest #4を開催。来月(2014年6月)にも製品が発表されるという。

上記のBSS 1.2は、主にスマートフォン向けの規格だ。送電側はClass 2/3/4として、それぞれ10/16/25Wまでの出力を規定している。受電側は、Category 2(最大3.5Wで主にフィーチャーフォン用)、Category 3(最大6.5Wで主にスマートフォン用)が規定されている。Class 2/3/4は、それぞれ1/2/3台までのCategory 2/3の機器を、同時に充電できる複数台対応がセールスポイントだ。

今後の予定だが、2014年中にもっとハイパワーの受電を可能とするCategory 4/5/6/7とClass 5/6/7を含むBSS 1.3を制定する。これによって、ノートPCの利用(ワイヤレス給電)を視野に入れるという。ただし、送電側が最大50W、受電側が30Wとなっているので、実用に耐えるかどうかはやや疑問が残る。

日本企業も15社がA4WPに加盟。A4WPの規格では、6.78MHzの周波数で電力供給を行う。余談だが、到達距離や利用目的の違いから、他の周波数を使用したデモを別ブースで行っていた企業もあった

給電側の規格となるチャート。小型機器のみとなるClass 1の制定は後回しで、今回登場しているのはClass 2/3/4の三種類。複数台充電が可能なので、最大台数表記がないと分かりにくいと思ったが、明確な説明がなかったのが残念

Baseline System Specificationの表。現在固まっているのはスマートフォンまでのBSS 1.2だ。2014年中に、現在はα版となっているタブレットとPCを含む大電力のBSS 1.3を制定する予定。2015年には、ウェアラブル機器も給電できるBSS 1.4を制定するという。小型機器の場合はアンテナが小さいので、効率面でのチャレンジがあるようだ

調査会社のデータを引き合いに、2015年からは非接触給電市場が急激に伸びるので、第二世代の我々が市場を取るとアピール

参加企業のロゴ。ただ、ここに載っていない企業もあるようだ。rezenceのブランドロゴは、これとZマークだけの二種類を使うようだ

左はQualcommによる試作製品。右はボードメンバーでもあるGill ElectronicsによるiPhone用ジャケットで、まずこれが製品化されるようだ。下のデスクは、日本の業務用家具でシェアの高いオリバーによる試作品

一方のQi陣営は、本来なら最大10~15Wと言われるミドルパワーの規格が制定されるはずが遅れており、今回はあまり展示がなかった。ただ、Qiも次世代は電磁共鳴方式を採用し、かつ次世代チャージャーでも現行世代(電磁誘導)をサポートするという説明があった。

Qiは、この写真の裏でコーヒーを飲みながら説明が受けられるというスタイル。本来ならタブレットクラスの充電が可能なものが展示されていたのだろう

災害時のスマホ利用も展示

災害によって移動体通信が途絶した際の復旧手段として、NICTとKDDI研究所がそれぞれ発表を行っていた。

NICTはラジオコントロールの飛行機を飛ばして、災害地の中継基地局へ中継するというもの。現場への飛行時間と、現場の上空旋回しているときしか使えない問題はあるものの、リアルタイム伝送が行える。

KDDI研究所は、無人機を飛ばすのは同じだが、リアルタイム伝送ではなく出発地からメールデータを運び、災害地にメールを伝送するというものだ。

NICTのパネル。無人飛行機でリアルタイム中継を行う方式。飛行時間や通信時間はバッテリの大型化で対処できそうだが、距離が離れると中継できなくなりそうだ

NICTが実験に利用したラジオコントロール飛行機は、米エアロバイロンメント社製「PUMA-AE」。飛行機の重量は2.8kgで、500g程度の荷物を積んで2~4時間ほど飛行させられる電動機だ

こちらはKDDI研究所のパネル。説明を聞きながらの率直な感想は「伝書鳩」

リアルタイム性がないという欠点があるものの、複数の場所を巡回することによって、分断された被災地とデータをやり取りできるので、実用性が高そうだ