また、公衆無線LANの利活用としては、2020年の東京オリンピックを目標として、訪日外国人向けに快適な無線LAN環境を用意することで、観光促進に繋げられるように整備拡大を図る。

総務省が行なった調査によると、2011年に外国人旅行者が日本を旅行中に困ったこととして、無料Wi-Fiが整備されていないことを挙げていた。これは全体の1/3にのぼり、最も困った事案になっていたという。

その後、観光地を中心として無料Wi-Fiの整備が進み、2014年3月に行なわれた最新の調査では、「満足」が6割、「特段大きな問題はなかった」が3割に達し、多くの観光客にとって問題がない状態まで改善されている。

無線LANビジネス推進連絡会 会長でNTTブロードバンドプラットフォーム(NTT BP) 代表取締役社長の小林 忠男氏は、Wi-Fiの存在を「最初は携帯よりも早い高速インターネットとして普及し、スマホの普及と共にトラフィックをオフロードするもの」として重要視。その上で「公衆無線LANの拡がりによってマネタイズのビジネスモデルとしても確立されている」と話す。

東京オリンピックでも、訪日外国人に対して、どのようにWi-Fiを提供するか、それも、インフラ事業者や自治体、飲食店、一般企業という様々なプレイヤーが自由に商品化できるメリットを指摘し、「オリンピック関係なしに拡がっていくとは思うが、流れを加速するという意味でオリンピックがトリガーになる。安心、安全、便利に使うため、課題があるものの、無線LANビジネス推進連絡会として検討していきたい」(小林氏)とした。

公衆無線LANの訪日外国人開放は進みつつある

その後、無線LANビジネス推進連絡会 運用構築委員長の大内 良久氏が現在の外国人観光客向け公衆無線LANの取り組みを紹介。成田空港や京浜急行電鉄、NEXCO東日本/中日本/西日本といった交通インフラ事業者、東京お台場FreeWiFi、福岡市などの地場の公衆無線LAN、スターバックスコーヒージャパンの取り組みを説明した。

特に、成田空港と福岡市は、NTT BPなどと協力して「Japan Connected-free Wi-Fi」に参画。このプログラムは、訪日観光客に対して公衆無線LANを無料で提供するアライアンスで、セブン-イレブン・ジャパンやJR東日本も参加している。これらの事業者は、訪日外国人に対して積極的に無線LAN環境を提供することで、観光・集客を行なっているわけだ。

また、スターバックスコーヒージャパンでは、100万人の利用者がいるといい、そのうち2割の20万人が外国人観光客。海外で展開しているブランドとはいえ、相当数の利用者がいる状況から、Wi-Fi活用の一つの目安になるのではないだろうか。

セキュリティと利便性の両立を

外国人観光客への無線LAN開放は、日本人利用者の利用料負担によって提供されている側面もあるため、中には快く思わない利用者もいるだろう。その一方で、世界有数の公衆無線LANスポット数を持つ日本で最新のICT整備が進むことで、観光地としての魅力もさらに増すことだろう。

スポット数については、かなりの数が三大都市圏に集中しており、地方の観光地や、災害時の防災拠点などにはまだまだ数が揃っていない。また、日本は諸外国に比べてセキュリティを重視している公衆無線LANスポットが多いため、暗号化認証でIDやパスワードを要求される。これはセキュリティとのトレードオフで利便性を損ねているという指摘もあるという。

しかし、「海外では認証と暗号化をしていないフリーWi-Fiを利用してクレジットカード情報を引き抜かれるケースがある」(大内氏)ことから、IDやパスワードを使用しつつも、訪日外国人が自由に使えるような体制を今後も検討していくとしていた。