下町・日暮里はさながら和菓子のワンダーランド。江戸時代以来の伝統和菓子が味わえる一方で、「妖怪☆いちご大福」「いちご団子」「カレーどら焼き」などなど、新たに誕生した仰天和菓子が町中にあふれ、見てびっくり舌もびっくり。日暮里、和菓子のワンダーランド探訪はいかが?

噂の「妖怪☆いちご大福」(258円)と「妖怪☆あんず大福」(227円)

いちごをくわえたキュートな妖怪

春、いちごの季節が到来。この時期だけの季節の味「妖怪☆いちご大福」を今年こそは味わいたいと、日暮里へと足を向けた。日暮里は駅ナカ「エキュート」にも和菓子屋さんが数店を構えるほどの和菓子の町。その日暮里駅東口から徒歩7分ほどの住宅街の一角に、目指す「江戸うさぎ」はあった。

「いちご大福」のたなびく幟が「江戸うさぎ」の目印

江戸うさぎでは一昨年から、妖怪をイメージしたオリジナル大福を開発して大評判となっている。白くて丸いお餅に黒ゴマで目を作り、片側に大きな切り込みを作ってパクリと季節の果物をくわえさせる。通年で提供される「妖怪☆あんず大福」、秋から冬にかけての「妖怪☆栗大福」、春には「妖怪☆いちご大福」。この春の妖怪を食べてみたかったのだ。

人気の秘密はなんといっても、その形のかわいさだ。おとぼけ顔の白い大福の妖怪が、真っ赤ないちごをくわえている様はなんともキュートでしみじみさせられる。もちろん手作りで、いちごが口から適度にはみ出すようにお餅を包み、ゴマの目の位置を調整して表情に工夫を凝らすため、大量生産はできないそう。1日最大300個が限界だという。

このため、午前中には完売とのうわさ。なので、お店には昼前に到着し、無事買い求めることができた。店員さんによれば、「お電話をいただければ取り置きいたします」とのことなので、どうしても食べたい方は電話予約がいいだろう。

しかし、かわいすぎる大福ゆえ、食べるのに少しばかり困惑してしまった。いざ食べようと向かい合うと、妖怪くんの表情はいかにも愛らしく、ほんとに食べちゃっていいの!? とマジに悩むほど。意を決し、パクリ。うまい!! 柔らかな餅、まろやかな小豆のこし餡(あん)にいちごの爽やかさが見事なハーモニーを奏でる。

「江戸うさぎ」の妖怪シリーズ、夏には「妖怪☆水大福」が発売されるので、こちらも楽しみに待ちたい。

「しょうがせんべい」「かりんとうまんじゅう」など他にもいろいろ

●information
江戸うさぎ
東京都荒川区西日暮里2-14-11(日暮里駅徒歩7分)

夏目漱石も絶賛した老舗店

いちごを使った日暮里の季節の和菓子は「妖怪☆いちご大福」ばかりではない。江戸時代の文政2年(1819)創業という老舗中の老舗、「根ぎし芋坂 羽二重団子」の日暮里駅前支店では「イチゴ団子」が味わえる。

「羽二重団子」といえば、夏目漱石の『我が輩は猫である』にも「芋坂に行って団子を食いましょうか」と登場する老舗。そんな老舗の銘品であるこし餡団子といちごとが交互に串刺しにされている。「団子といちごは一緒に食べるのですか?」と店員さんに尋ねると、「お好みでどちらでも」との答えが返ってきた。

どうせなら、と一緒に口に入れる。もちもちした団子の触感とみずみずしいいちごが混じり合って不思議な味わいだ。こちらも「春のスペシャル」と銘打っているようにいちごの季節だけの限定商品である。海苔を巻いた団子、きな粉の団子、2つの串団子にサラダが付いた「HABUTAEランチ」もなかなかオツな昼ご飯であった。

春のスペシャルと銘打った「イチゴ団子」250円(税別)

「HABUTAEランチ」700円(税別)も日暮里駅前店の人気メニュー

ちなみに日暮里駅前店から5分ほどの距離にある「羽二重団子」本店では、「しずくあん」など伝統の団子だけが提供され、「イチゴ団子」は扱ってはいないので注意したい。

「羽二重団子」日暮里駅前店

伝統と歴史を感じさせる本店

「大福の王様」に芸が細かい「カリーどら焼」も

和菓子のワンダーランドめぐりは、続いてこちらも老舗の「竹隆庵 岡埜で」。この店の本店は日暮里とは隣町の台東区根岸にあるが、日暮里店もある。

「竹隆庵 岡埜」を代表する和菓子は「こごめ大福」。江戸時代、庶民の間では「こごめ餅」という餅が人気だったが、その餅に餡を入れたものを上野輪王寺の偉いお坊さんに献上したところお褒めの言葉をいただき、商品化された。そんな誕生エピソードを持つ逸品だ。

しっかりと重厚感のある餅の中に、たっぷりのこし餡が入っている。その量たるや普通の大福の3倍はあろうかというほどで、和菓子好きからは「大福の王様」と呼ばれているらしい。

「竹隆庵 岡埜」の銘品「こごめ大福」1個230円(税別)

こうした銘品を提供する一方で、「竹隆庵 岡埜」は「カリーどら焼」なる老舗らしからぬイロモノ的な和菓子もラインナップしていて油断がならない。そのパッケージはといえば、カリーちゃんというメイド服の少女のイラストに「世界のAKIBA」の文字、完全に萌え系である。

お味はといえば、どら焼の中に甘めのカレーが入っているのは予想の通りだが、カレーにはちゃんと肉が、さらには福神漬けまで入っていて芸が細かい。このあたりのこだわりが、さすが老舗と思わせてくれる。

萌え系パッケージの「カリーどら焼」。福神漬けが食べるとシャキシャキ

かくしてワンダーランド日暮里では、伝統の銘品和菓子はもちろんのこと、聞いてびっくり見てびっくり、おまけに食べてもびっくりのユニーク和菓子たちにもいろいろ出合える。あなたも楽しい和菓子を探して、下町・日暮里散策はいかがだろう。