2月のソチ五輪、3月の世界選手権などで多くの感動と興奮をファンに与えてくれたフィギュアスケート。その競技の知られざる魅力やトリビア、選手の素顔をかつてフィギュアスケート選手として第一線で活躍した澤田亜紀さんが、プロの目線から紹介する。今回は競技会のオフシーズンに各地で行われている「アイスショー」の楽しみ方だ。
日本で唯一のプロチームが行うアイスショーとは
長いようで短い試合シーズンが終わり、テレビでフィギュアスケートを見る機会が少なくなりました。久しくフィギュアスケートを見ておられない方もいらっしゃるのではないでしょうか。
競技会は冬がメーンですが、オフシーズンの夏にはアイスショーが開催されます。今回、フィギュアスケート経験者という目線から、アイスショーの見どころについてお伝えしたいと思います。
今年は3月26日から29日にかけて、世界選手権が日本の埼玉県で行われたこともあり、例年より多くのアイスショーが開催されている印象があります。現在行われているアイスショーに「プリンスアイスワールド」がありますが、これは日本で唯一のプロチームが行うアイスショーです。各公演に現役選手もゲストで出演するなど、人気のあるアイスショーの一つとなっています。
愛犬との"共演"や傘の小道具でファンを魅了する浅田選手
私も過去に1度だけ出演させていただいたことがありますが、プロスケーター30人程で行うグループ演技は、一つの作品としてとても迫力があってすばらしいです。ふだんは競技会で禁止されている宙返りを行うスケーターらを見るのも楽しいのですが、やはり「大人数で一つの作品を作る」という国内の他のアイスショーにはない点が、一番の醍醐味(だいごみ)だと思います。
グループ演技の合間には、プロスケーターや現役選手の演技が行われます。現在の自分のプログラムを滑るスケーターやアイスショー用に作ったプログラムを演じる演者など、人によって演技内容はさまざまです。
競技会用プログラムはジャッジを意識して作られているものが多く、ジャッジ席から見たときに見栄えがするように作られています。ただ、アイスショーは会場にいる方全員を意識しないといけないため、選手の個性が一番出るプログラムです。
例えば浅田選手は、プリンスアイスワールドに限らず、過去のエキシビジョンで愛犬・エアロと共演したり、映画を再現するような傘などの小道具を使用したり、客席に握手をしにいったりするなど、お客さんと一緒に楽しんで滑るための工夫があるなという印象が私にはあります。また、何回も見に来てくださる方のために、毎公演、演技するプログラムを変えるスケーターもいます。何度も会場に足を運ばれている方は、どのプログラムを滑るのかを予想するのも楽しいかもしれませんね。
アイスショーの隠れた見どころ「ジュニア」「ノービス」
プリンスアイスワールドの他にも各地でたくさんのアイスショーが開催されます。その中でぜひとも注目してほしいなと思うことがあります。それはアイスショー開催地のエリアで活躍している地元スケーターや、ジュニア(13~18歳)選手やノービス(9~12歳)選手の出演です(地元スケーターやジュニア・ノービス選手が出演しないアイスショーもあります)。
世界で活躍するトップ選手の演技に注目が行きがちですが、トップ以外の選手にも、すばらしい魅力が隠されています。世界で活躍するトップ選手になるため、日々努力をしている選手ばかりなので、「いつか夢の舞台へ! 」という気持ちが演技から伝わってくると思います。アイスショーをきっかけにその選手のことを知り、またシーズンを経てその選手が成長していく過程を見守るのも、フィギュアスケートの一つの楽しみ方だと思います。
先ほども触れましたが、アイスショーにはさまざまなスケーターが出演します。次のシーズンを見越して新しい技にチャレンジする選手、自分の得意分野を見せるためにプログラムを構成する選手、プロスケーターとして新たな魅力を引き出すスケーター、夢に向かって頑張る地元スケーター……。それぞれのスケーターの、思い思いの演技を見ることができるかと思います。
今回私がご紹介した見どころに限らず、選手やプロスケーターの「想い」を見てくださっている方がそれぞれ感じていただくことで、アイスショーを楽しんでもらえたらなと思います。
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筆者プロフィール : 澤田亜紀(さわだ あき)
1988年10月7日、大阪府大阪市生まれ。関西大学文学部卒業。5歳でスケートを始め、ジュニアGP大会では、優勝1回を含め、6度表彰台に立った。また2004年の全日本選手権4位、2007年の四大陸選手権4位という成績を残している。2011年に現役を引退し、現在は母校・関西大学を拠点に、コーチとして活動している。