東京都の新宿御苑では18日まで、ロハスクラブ主催「第9回ロハスデザイン大賞2014 新宿御苑展」を開催している。自然の力を活用した快適な住まいでの暮らしを知るべく、同イベントで展示されているエコハウスを取材してきた。
ロハスデザイン大賞のエキシビション
同展は、"ロハスなヒト・モノ・コト"を表彰する「ロハスデザイン大賞」のノミネート作品を展示するエキシビション。イベントでは、最終ノミネートの展示・投票に加えてロハスな活動の展示やステージイベント、ワークショップなども行われる。9回目となる今年のテーマは「ソーシャル・デザイン」だ。
5月の新緑がまぶしい新宿御苑は、平日の朝とは思えないのどかな雰囲気が漂う。協賛企業によるブースが並んでおり、芝生では子供たちの元気な声が響いていた。
エコハウスは木の香り
今回取材したエコハウス「Fun to Share ハウス」は、会場のほぼ中心に設置されている。毎年、その年のテーマに合わせて各社メーカーとともに建て、テーマについて考えられるようにしているとのこと。今年は、環境省が呼びかける「Fun to Share/みんなでシェアして、低炭素社会へ」を実現するための家づくりがされている。
エコハウスの横にはステージがあり、17日と18日にはステージイベントも行われる。エコハウスの外でお話を聞いていると、風が吹くたびに木の香りがしてきた。早速中を見学させてもらった。
技術が結集
中に入って一番に気付いたのは涼しさ。取材日は晴れで、外は汗ばむような気温だったが、冷房が付いているかのような「ひんやり」した感じがあったのだ。しかし、エコハウス内で使われていたのは扇風機1台のみ。なぜこれほど涼しいのか、それは、様々なメーカーの技術が結集しているからなのだ。
今年のエコハウスは、日差しや風通しなどの自然を活用し、耐震性にもすぐれた「パッシブハウス」を基本コンセプトにしている。低炭素社会につながる技術や知恵を集めた。パッシブハウスとは、自然の力を活用する「パッシブ(受け身)」な建物として、住宅設計によって「発電機や省エネ家電に頼らず、快適で地球に優しい生活をする家づくりの方法」で建てられてた建物のことだ。
風が吹き抜けるエコハウス
エコハウスの大部分はCLT(クロス・ラミネイティッド・ティンバー)でできている。国産間伐材でつくられた厚型パネルで、天然木材の心地よさと耐震性・断熱性を共存させたものだ。CLTにより、開口部が広く取られていることも涼しさの一因かもしれない。実際、エコハウスが建てられている場所は、新宿御苑の風通しが良い場所だった。エコハウス内を風が吹き抜けるようになっているのだ。
窓まわりにも、エネルギーを使わずに涼しさをもたらす工夫がされている。TOTO、DAIKEN、YKK APにより推進されている「グリーンモデル」は、「健康配慮」「長もち住宅」「CO2削減」という3つの視点から住まいを提案している。具体的には、外からの日差しをコントロールしやすい「オープンルーパー」の取り付けや、グリーンカーテンの「エスパリア」、打ち水の効果を持続させる「グリーンブロック」などだ。
今回のエコハウスでは、グリーンブロックへの打ち水体験ができる。打ち水をしたグリーンブロックに触れてみたが、冷たさが持続することを実感できた。また、窓を覆うグリーンカーテンはブドウなどの食べられる植物になっており、食べる楽しみもあるという。
暮らしが中心に
取材の最後、月刊『ソトコト』編集長の指出氏に、エコハウス展示の経緯をうかがった。同氏によれば、エコハウスを展示したきっかけは「環境問題や社会課題を考える際に、実物で実感してもらうと早く理解できるため、家や住まい方といった「暮らし」を考えられる展示が置いてあるといい」との理由による。
また、イベント自体が複合的な性質を持っているため、シンボルがあれば分かりやすいと考えたそうだ。「『ソトコト』というライフスタイルを扱うメディアや『ロハス』という仕組みについては、"暮らしが真ん中にあって、そこから世の中へ広がっていく"という考えがある」とのことだ。
低炭素社会というと、電気を使わない生活や不便さをイメージする人もいるかもしれないが、自然の力をうまく利用すれば、おのずと電力軽減ができる技術が生み出されている。5月の週末に、公園の新緑をめでながら地球にも自分にも心地よい暮らしを思い描くのも良いかもしれない。
会場は東京都新宿区内藤町11 新宿御苑で、時間は9時~16時(閉演は16時30分)。詳細は同イベントWebサイトなどで確認できる。。