埼玉県本庄市には、なんときゅうり入りのどら焼きが存在するという。しかし、頭の中でイメージしてみるも、見た目ばかりか味さえ想像がつかない。そもそも、なぜその2つを組み合わせようと思ったのだろうか?
名物の朝採れきゅうりを名物菓子に!
その疑問に答えてくれたのが、埼玉県本庄市の製菓店「和菓子の恵み あさ美」の阿佐美広さん。
「本庄市は花のついた朝採りきゅうりで有名なんです。築地市場にも大量に出荷されているんですが、このことをもっと多くの人に知ってもらうべく、2006年に埼玉県の北部振興策のひとつとして、きゅうりを使って名物になるものを作ろうという話が持ち上がったんです」。
そうして、本庄市内の菓子組合に菓子開発の依頼がきたという。ところが、10店舗以上がまんじゅうやもなか、焼き菓子、ソフトクリームなどの新製品開発に挑んだものの、なんせきゅうりとのスイーツ素材との相性が思わしくなく、次々と撤退。最後まで残った4店舗が「どらQ」という名のどら焼きを生み出し、商品名を統一して、味や作り方はおのおの工夫を凝らすことに決まったという。
「2008年に商品販売をスタートしたんですが、最初のうちはみなさん、"えぇ!? きゅうり!?"って感じでなかなか受け入れてもらえませんでした」。
映画をきっかけに注目! 今ではいろんな味が
ところが、その後、公開された地元を舞台にした映画『JAZZ爺MEN』に「どらQ」が登場するや、事態は好転。映画を見た人が「どらQ」目当てに来店したり、地元の祭りイベントでも販売する機会を得たりと、一気に注目度が高まった。
「今では、本庄市のマスコット・はにぽんの大好物としても知られているようで、お土産に買ってくれる人が増えました」と阿佐美さん。
確かに、はにぽんの公式プロフィールの「好きなもの」欄にははっきりと「どらQ」が名前を連ねている(ちなみにその他の好きなものが「みんなの笑顔」etcというところがかわいい!)。
「どらQ」はもちろん味や原料にもこだわりがある。「皮は国産の小麦粉を使ってしっとりふんわり仕上げています。間に挟んでいるのは、きゅうりとの相性を重視して白あんをベースにしたメロンあんと、角切りにしたきゅうり。きゅうりはメロンの皮と似ているので、とっても相性がいいんですよ」。
その他、青梅ピューレで作った青梅あんをサンドしたバージョンもある。「両方とも、冷やしていただくとさらにおいしく召し上がれますよ」とのこと。これからの季節にぴったりの爽やかな逸品だ。さらに、現在はトマトバージョンも画策中ということで、夏野菜が旬の時期には新たな商品が誕生しそうで楽しみだ。
ちなみに「あさ美」のネットショップでは、精巧なつくりのねりきりも人気だが、このねりきり、なんと約90種類も用意があるのだとか。「どらQ」ともども、ぜひチェックしてみてほしい。
※記事中の情報・価格は2014年5月取材時のもの