エプソンは13日、導入コストゼロの新プリントサービス「エプソンのスマートチャージ」(以下、スマートチャージ)を発表した。インクジェット複合機・インク・保守サービスを、月々1万円(税別)からの定額従量料金で利用でき、2014年8月から提供する。

同日には発表会が開催され、エプソン販売 代表取締役社長の平野精一氏が登壇し、オールインワンパッケージのビジネスモデルとなる「エプソンのスマートチャージ」を投入する経緯を説明した。平野氏によると、リーマンショックで落ち込んだPCC用紙(いわゆる普通紙)市場が回復した一方で、プリンタ市場は微減しているという。これはコピー機のチャージ単価が下がり、なおかつコピー機のビジネスは、一般的に保守・消耗品がセットなので手間がかからない点が大きいとした。

エプソン販売 代表取締役社長の平野精一氏(写真左上)。コピー機市場は単価が下がり、メンテナンスに手間がかからないという。直近では、PPC用紙市場(≒オフィスプリント)がリーマンショック前の水準まで回復した一方、プリンタ利用は微減、コピー機市場は微増。コピー機市場の低単価化と容易な管理がポイントと判断

エプソンのビジネスプリンタ部門も順調に推移しているが、これをさらに伸ばすために、コピー機のようなビジネスモデルを導入する。これが今回のスマートチャージだ

月々1万円からの低価格と、オフィスコピー機並みのペーパー収納数。そしてトラブル時の対応性がスマートチャージのミソだ

一般的なコピー機は、購入またはリース契約で導入し、インク・トナー代や保守サービス費用がプラスされるビジネスモデルになっている。エプソンのスマートチャージは、本体のリース・インク・保守をすべてオールインワンにしているのが特徴だ。ただし、用紙代は含まれない。

スマートチャージは5年契約で月々1万円からの料金プランなので、導入にかかるコストが抑えられるだけでなく、保守費用も含まれている。プランに応じた最低枚数以上の印字を行わなければ、追加費用は不要だ。

写真左がスタンダードモデルで、下部トレーは250+500枚収納。写真右がフルセットモデルでで、下部トレーは250+500+500+500枚。さらに前面給紙と背面MP給紙がついている。なお、展示機には「PX-M7050FX」のモデル名が付いていたが、発表会やリリースには具体的な製品名の記載がなかった

こちらが料金プラン。保守サービスは基本的にオフィスアワーとなる「月~金の09:00~17:30」で、時間外は追加料金が発生する

平野氏に続いて、セイコーエプソン 取締役 プリンター事業部長の久保田孝一氏が新製品の概要を説明した。

セイコーエプソン 取締役 プリンター事業部長の久保田孝一氏

今回発表するインクジェット複合機製品(スマートチャージモデル)は、月間プリント枚数が1,000~5,000枚のユーザーをターゲットにしている。そのため、高生産性・高耐久性・大容量という3点がセールスポイントになるという。

高生産性に関しては、印刷速度が24ipmでおおむね20ppmのコピー機並みながら、5枚の印字なら30ppm製品よりも速いことをアピール。「ファーストプリントが早く、主に使われているのは5枚程度なのでメリットがある」とした。

プリンタ本体は30万枚の耐久性があり、月5,000枚の印字でも5年間は、給紙ローラーや廃インクボックスの交換で対応できるという。インクは75,000ページの印刷に対応し、月2,000枚の印刷を行うユーザーなら3年間は持つ計算だ。

同じ印字をレーザーコピー機で行う場合、概算でカートリッジ52本、感光体6本が必要になるので、これらの輸送・梱包・カートリッジコストも大幅に抑えることができる。そのほか、インクジェットゆえの低消費電力性、給紙ローラー交換のみで済むメンテナンスの容易さと、ビジネス文書に特化した画像処理を採用したことを紹介した。

複合機としてはファックス機能、スキャン機能を充実させ、ユーザーグループ管理での利用制限、印刷ジョブにパスワードを付けることによるセキュリティの強化、5インチタッチパネルとカラーユニバーサルデザインの採用による使い勝手の向上を図っている。

20PPM並の速度と30万枚の耐久性、そして用紙とインクのストック量が三大特徴だ

24ipmで5枚プリントなら30PPM機よりも速く、特にファーストプリントの速さが魅力

メカは30万枚の耐久性があり、月5,000枚印刷で計算すると5年の耐久性。この間は、消耗品となるペーパーローラーと廃インクボックスの交換だけでよいという

コピー機仕様なので多くの用紙を収納できる。フルセットなら4つの用紙トレーがあるので、サイズ違いやよく使うA4紙を大量に格納できるのがうれしい

あわせて、インクも75,000枚印刷に耐える大容量パウチパックを採用。顔料インクなのでマーカー等でにじまない。インクパックも5年持つとのこと。発表会では言及されていなかったが、コピー用紙にインクジェットで印字する際にありがちな「打ち出し直後インクの水分でヘナヘナになる」感じも、水分量の少ないインクによって軽減されているという

その他の特長として、エコロジー、メンテナンスフリー、高画質をアピール

このインクパックで75,000枚の印字に対応する。同じ枚数をレーザープリンタで行うと、トナーカートリッジ52本、感光ドラム6本を必要とする。ということで、実際に「ゴミの山」を展示してエコさ加減をアピールしていた

トナー定着のヒーターを必要としないので、消費電力的にもエコだ。これらの保守部品も不要なので、保守部品は給紙ローラーと廃インクボックス程度

最新のPrecisionCoreヘッドと顔料インク、そしてビジネス文書に合わせた画像処理で見やすい画質を実現している

最後に、エプソン販売 取締役 販売推進本部長の中野修義氏が登壇し、販売戦略に関して説明があった。

エプソン販売 取締役 販売推進本部長の中野修義氏

今回のターゲットは30PPM以下のコピー機市場で、その中でも月1000~5000枚程度の印刷を行うユーザー層。初年度2万台が目標となっている

経営側から見ると、コストは下げて管理性も上げたいが、一方で最新の機能やカラーで表現性と柔軟性を上げたいという要求に応えるのがスマートチャージと説明

(設置費用は別だが)初期費用「0円」で導入しやすく、かつ月額費用や超過枚数コストも抑えられている

スマートチャージの6大特徴。スマートフォンからの印字に関しては、Android Printing対応が発表され、Epson Connect対応プリンタはすべてAndroid Printingで利用可能となる

今回予定している価格モデル。個別質問で伺ったところ、契約年数に関しては販売店舗によって変更がありえるようだ

スマートチャージは売りっぱなしというものではないので、販売会社が保守できる体制が必要。発表時点で、全国53都道府県で120社が取り扱う。将来的には、250社が取り扱う予定となっている。今年の販売目標は2万台で今後製品数も増やす予定とのこと