日経BPコンサルティングが5月2日に公表した調査結果によれば「エリア」「通話品質」「通信品質」などの全項目においてNTTドコモが満足度トップだったという。本稿では、実施している取り組みを紹介しながら調査結果について考えてみたい。

同調査は、全国の5万5,000人を対象とした大規模なもの。15歳から59歳までの中高生・大学生・会社員・主婦といった異なる利用者層に「エリア」「通話品質」「通信品質」の3項目と、「自宅内」「職場/学校」「移動中」「街中の商業施設/レジャースポット」「旅先の宿泊施設/観光スポット」の5つの利用シーンにおける満足度を尋ねた結果、ドコモのサービスが最高評価された。それでは、さっそく調査の内容を詳しくみていきたい。

各通信事業者の「満足」回答率1位獲得都道府県数

エリアと品質で高評価の訳とは?

「通信品質」として、「つながりやすさ」「通信速度」「途切れのなさ」などに対して満足度を尋ねた結果、不満傾向を示したドコモユーザーは1割未満だった。また「通話品質」について「つながりやすさ」「音質のよさ(クリア、聞き取りやすい)」「ノイズがない」「途切れのなさ」などを尋ねたところ、これもドコモの満足度が最も高かった。

つながりやすさは、エリアの広さに関係する項目。ドコモでは現在、同社のLTE通信サービス「Xi」エリアの拡大を急ピッチに進めている。対応する基地局数は2014年3月末現在で52,000局に到達している。

なお、同調査において「満足/やや満足」の割合は、ドコモで78.2%、KDDI(au)で約7割、ソフトバンクモバイルで約6割の結果。いずれの通信事業者でも満足度が高く、エリア改善については各社が力を入れている背景がうかがえる。

ドコモにおいて通信速度の向上に大きく貢献しているのが、4つの周波数帯を利用した「クアッドバンドLTE」だ。これは2GHz/ 800MHz/1.5GHz/1.7GHzの周波数帯を使用することにより、下り最大150Mbpsの高速通信が可能になるもので、14年度内にはキャリア・アグリゲーションによるLTE-Advancedの提供を開始する予定だ。LTE-Advancedでは下り最大225Mbpsの通信速度を提供することで、Xiの利便性がさらに高まることが期待されている。

途切れのなさについては、一般的には基地局を密に打つなどの施策がとられている。ドコモでは1基地局で実質6局分の通信容量がある「6セクタ基地局」の設置などにより、効率的に対策を施すことができている。「エリア」「通話品質」「通信品質」の3項目で満足度が最も高かった理由には、これらドコモの技術力の高さがあることは間違いないだろう。ドコモの技術力と言えば、今夏からはLTE網で音声通話を利用できる「VoLTE」をスタートさせる予定だ。今後とも同社の動向から目が離せない。

利用シーンで高評価の訳とは?

本調査では、「自宅内」「職場/学校」「移動中」「街中の商業施設/レジャースポット」「旅先の宿泊施設/観光スポット」の5つの利用シーンでも、ドコモが優位という結果が出た。同社では「生活シーンのあらゆる場所で」快適な通信が行えるよう、様々な対策を行っている。その効果が調査結果に現れたと言えるのではないだろうか。例えば、自宅やオフィスにおいてはLTEと3Gの両方に対応した屋内向けの超小型基地局「Xiフェムトセル」の設置を進めている。これは、設置した半径数十メートル程度がエリア化されるものだ。

学校に関しては、全国の772の大学、4,714の高校をXiエリア化済み。学生の満足度が高い理由は、このあたりにあると推測できる。地下鉄の駅・駅間などを含め、全国の主要鉄道路線におけるXiエリア化も推し進めている。山手線の約98%、大阪環状線の99%でエリア化が完了、新幹線は全駅でエリア化が完了している。

このほか、商業施設やレジャースポットにおいてもエリア化が進んでいる。全国の買い物施設やレジャースポット、イベント・スポーツ施設5,000カ所(2013年9月末時点)に屋内専用のXi基地局を設置済みだ。ユニークな取り組みとしては、日本百名山においてもXi対応の小型基地局の設置を推進している。山間部など、エリア展開が困難な地域でもより機動的なエリア展開が可能になったという。世界遺産や日本の国立公園(全30拠点中20拠点)のエリア化も進めている。さらにイベント会場においても、移動基地局車を設置してLTE/FOMAやWi-Fiを利用できるようにしている。直近では宮城で行われた「ARABAKI ROCK FEST.14」(4月26日~27日)、「前橋マラソン」(4月20日)、「ニコニコ超会議3」(4月26日~27日)などで対策を実施した。

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本稿で紹介した通り、今回の調査でエリアや通話品質、通信品質でドコモの満足度が高かった背景には、同社のLTEサービス「Xi」のエリア拡充施策が大きく影響していると思われる。加えて、利用シーンで高評価だったことについては、自宅やオフィス、学校、公共交通機関など、生活シーンのあらゆる場所において計画的に対策を行ってきた同社の取り組みが評価されるようだ。

なお既報のとおり、ドコモは5月14日に2014夏モデルの発表会を開催する。同社の発表会では毎回、新モデルだけではなく今後のネットワーク計画や新サービスなども発表されている。本稿で触れた同社施策の今後も明らかになるかもしれないので、ぜひ注目したい。

(執筆:大石はるか)