世界最大規模のラグジュアリー トラベル リテーラーであるDFSグループ。日本では、2002年の「沖縄振興特別措置法」の改正により設けられた特定免税店制度に基づき、沖縄県那覇市に日本初の市内型免税店として“DFSギャラリア 沖縄”を開店。以降、今年で10周年を迎えたのを機に、このほど“トラベラーズ ギャラリア沖縄 by DFS(Tギャラリア 沖縄 by DFS)”として生まれ変わった。
リニューアルオープンにあたって、このほど沖縄、東京で開催された記念セレモニーへ出席するために来日した、同社ストラテジー&マーケットディベロップメント エグゼクティブ・バイスプレジデントのJim Beighley氏と沖縄ディーエフエス 代表取締役 小川光永氏に、旅行産業における同社の役割や最近の旅行者のトレンドについて話を伺った。
――まずDFSと旅行業界・産業にはどのような繋がりがあるのか、教えて下さい。
Jim Beighley氏「DFSは、リテール業界の中でも旅行者にフォーカスした会社です。そして、DFSは旅行者をターゲットにしているため、旅行代理店はもちろん、航空会社、宿泊施設、政府観光局など、旅行産業に関わるあらゆる組織とパートナーシップを組んで活動しています。具体的に言いますと、例えば日本の旅行代理店と一緒に旅行者がどこに行きたいか、何をしたいのかなどのニーズを聞き、そのニーズに応えるために、実際の旅行先においてもさまざまな事業者とパートナーシップを組んでいます」
――旅行者に限定した特殊な事業形態とも言えるDFSですが、事業者側から見た一般店舗とは異なる大きな要素というのはなんでしょうか。
Jim Beighley氏「DFSというのはお客様が旅をしないと来ていただけないお店です。そのため、まず旅行をしていただくというのが大前提にあります。それゆえ、旅行者のニーズを知り、その需要に応えるべく強いパートナーシップを結ぶことで旅行産業を盛り上げ、お客様に足を運んでもらえるお店を作り上げていく。そういった点が重要です」
――なるほど。
Jim Beighley氏「旅行というのは、ショッピングも重要な要素のひとつです。例えばグアムで言うと、あれだけの日本人の観光客が訪れるようになったのはDFSがオープンしたからと言っても過言ではありません。ショッピング施設がなかったグアムに、DFSができたことにより、ショッピングという旅行者を呼び込む新たな価値を提供できるようになったのです」
「そして、海外旅行客を呼び込むことができるようになったのは旅行会社にとっては非常にプラスです。沖縄の場合も、ここ10年で沖縄の旅行者が100万人ぐらい増えています。旅行の重要な要素であるショッピングという体験を我々が旅行者のニーズにあった形態で提供することは、旅行会社としては旅行先の可能性を広げる要素になっていくのです」
――確かに免税品というのは、海外でしか買えないと思っていましたが、それが沖縄で可能になるというのは旅行者だけでなく、沖縄にとっても大きなメリットですよね。
小川氏「DFSができるまでは、沖縄で買い物というと、ちんすこうや民芸品というのが中心でした。もちろん、DFSでもそうした商品も大事なものとして取り扱っていますが、それに加えて沖縄振興策という特別な法律の中で、国内旅行だけれども免税で買い物ができるようになり、DFSが進出したことで、それが地域や旅行代理店にとって、"海外に行かなくても免税でショッピングができますよ"というアピールになるわけです。そういう意味ではそれぞれが持ちつ持たれつの関係になっています」
――Tギャラリア 沖縄だから置いてある、地域ならではの商品などもあるのでしょうか。
小川氏「DFSの強みは、ラグジュアリーブランドであることです。そこはディスプレイひとつとっても海外各国で統一感のあるもので、DFSとしてのブランディングを助ける要素のひとつです。そして、今回新しくなった“Tギャラリア”の中のブランディングのひとつの重要な要素として、“ローカライゼーション”というコンセプトがあります。商品に限らず、お店の中での匂い、お店全体の雰囲気にその土地らしさを打ち出しています。商品でいうと、それぞれの地域でしか買えないもの、例えばハワイだとコアの木で作った飾りや工芸品。沖縄だと琉球ガラスなどですね。これらは、Tギャラリアの"五感に訴えかけたい"という大事なコンセプトのもと行っているものです。我々は旅行者が何を望んでいるかを常にキャッチして日々進化していかなければなりません」
――それほどまでに旅行と密接に関わっているDFSだからこそ分かる、最近の海外旅行者が旅に求める“コト”を教えて下さい。
Jim Beighley氏「旅行をするときに何かを求めて、何か目的意識を持って旅行するという傾向が強くなってきていると思います。ひと昔前は、海外旅行といえば、観光をして写真を撮って、現地のグルメを味わって満足して帰るという人が多かったのですが、今は土地土地での何か特別な経験、例えば現地の家庭にステイして生活様式を経験するとか、地方料理、お祭りに参加するとか、そうした特別な体験を求める旅行者が増えてきていますね」
――そうした旅行者にとって、最近特に人気のある旅行先や特徴的な旅行形態はありますか?
Jim Beighley氏「トレンドはいくつかあって、どこにいくかによってそのトレンドは変わってきますが、カンボジアやベトナムといった発展途上国が最近人気の傾向にあります。また、親、子、孫の3世代で旅行に行くというのも最近のトレンドのひとつです」
――旅行者のショッピングのトレンドは?
Jim Beighley氏「昔はお土産が中心で、たくさん買って近所に配ったりというような人が多かったのですが、最近は自分のために何かを買う人が増えています。例えばその土地でしか買えないものや、住んでいる街にはないような新しいブランド、聞いたことがなかったけど気になるようなブランドを求める人が多くなっています」
「また、最近の旅行者は現地でいろいろなアクティビティを楽しみたい傾向にあるので、買い物をする時間がだんだんと少なくなってきています。そういうなかで、DFSはひとつの建物の中で700以上のブランドを網羅し、ファッションから化粧品、ジュエリー、時計、お土産物まで揃うので、効率的にお買い物をしていただくことができ、我々側もお客様のニーズに応えてどんどんお店自体を進化させています」