5月1日、MicrosoftのWindows Commercial担当ゼネラルマネージャーであるErwin Visser(アーウィン・ヴィッサー)氏が来日し、「Windows for Business」というテーマで記者会見を行った。基本的な内容は4月の「Build 2014」における発表と同じだが、注目すべきは「ユニバーサルWindowsアプリ」である。以前の記事でも述べたように、WindowsとWindows Phone共通のアプリケーションを開発・提供するための仕組みだ。
ユニバーサルWindowsアプリは。将来的にXbox OneやWindows IoT (Internet of Things)、XamarinプラットホームによるiOS/Androidへの展開も予定しているが、まずはWindowsとWindows Phoneが対象となる。Visser氏はWindows Phone 8.1の特徴について、「(Windows Phone8.1が搭載する)APIの約95%は、Windows (8.1)と同じだ」と述べた。
さらに「たとえばタブレットでアプリケーションを使った作業中に、電話などで離席したとしよう。そんなときもスマートフォンで、同じアプリを先ほどまで使っていた状態で使い続けることができる」と述べている。これを"Windows 8.1とWindows Phone 8.1共通のエクスペリエンス"と称しているのだろう。
Visser氏が述べた例のほか、アプリケーション内で使用するデータの一元管理や、アプリケーション内課金の共有なども想定できる。iOSアプリにも同様の仕組みを備えたものがあるが、個別購入を求められることが多いように思う。
技術的には「Windowsランタイムアプリ」が背景に存在する。Windows Phone 8.1に対応するアプリケーションは、Windows Phone 7.x向けアプリやWindows Phone Silverlight (旧Windows Phoneランタイム)アプリ、といった既存のものにWindowsランタイムアプリが加わった。
日本では絵に描いた餅の「ユニバーサルWindowsアプリ」
Microsoftが既存のWindowsを保持しながらも、Windows Phoneに注力しているのは明らかだ。こうした"MicrosoftのWindows離れ"を懸念する声に配慮してか、Visser氏は「我々にとってWindowsはユニークかつ重要なプラットホームである」と前置きしつつも、「Windowsのイノベーションを起こすため、チャレンジャーの姿勢で取り組んでいる。我々が確立してきたPC市場と、タブレット/スマートフォンは異なる位置にある。エンジニアリングチームを含めた我々は、チャレンジャーにならなければならない」とも述べた。
確かにVisser氏の発言も状況分析も正しいが、ユニバーサルWindowsアプリの恩恵を受けるには肝心のWindows Phone 8.1が必要となる。参加者からはWindows Phone 8.1の国内展開タイミングを問う声も上がったが、「明確にできない。作業を続けているのは確かだ」と判で押したような回答にとどまった。まるで絵に描いた餅のようである。
Windows Phone 8.1を国内投入しても、すぐにiPhoneの牙城を崩せるとは思えないが、後発だからこそユニバーサルWindowsアプリのようなイノベーションを起こせるのは大きな強みだ。NokiaのDevices&Services部門買収も完了し、Windows Phoneを推進する準備は整いつつある。そろそろ国内でもWindows Phone 8.1を使用するシーンを目にしたいものだ。
スマートとは言い難いWindows 8.1のスマート検索
先週はこの他にも、OneDrive for Businessの容量を1TBにする発表など、いくつかニュースがあったが、個人的には「Bing blogs」の記事が気になった。Windows 8.1で利便性を向上させた検索機能をアピールする記事だが、そこに米国と日本の差を感じてしまう。
たとえば、プリンターのデバイスドライバーをインストールするため、検索チャームのテキストボックスに「install a printer」とタイプすると、「Device settings (デバイスの設定)」が現れる。だが、日本語環境では「プリンターのインストール」とタイプしても、Web検索のサジェストが列挙されるだけだ。ここでの正しいタイプ内容は「プリンター」。これで検索結果の先頭に「デバイスの設定」が現れる。
指定した単語を含む部分一致検索が行われるため、単語で検索しても構わないのだが、「より自然に検索する」とは言い難い。自然語検索というよりもキーワード検索の域を脱していないのだ。個人的に検索チャームは、目的のアクション(設定項目)にたどり付くための、冗長な手段を省く有用な機能だと捉えている。今後はスペルミスを踏まえた検索結果を示すといった機能拡張も行われるようだが、さらに日本語検索もスマート化するべく、日本マイクロソフトの開発チームに期待したい。
阿久津良和(Cactus)