東京商工リサーチはこのほど、2013年度「不適切な会計・経理を開示した上場企業」調査結果を発表した。同調査は、自社開示、金融庁、東京証券取引所などの公表資料をもとに、不適切・不正などの会計・経理を開示した上場企業(連結ベース)を対象に集計。産業分類は証券コード協議会の業種分類。発生当事者は、開示資料に詳細な記載がない場合、「会社」として集計した。

昨年に比べて大幅増大。2007年以来最多に

「不適切な会計・経理」を開示した企業数は年間を通じ拡大

2013年度に「不適切な会計・経理」を開示した企業数は38社で、2007年度に調査を開始以来最多だった。年度上・下半期別では、上半期(4~9月)が前年同期比54.5%(11社→17社)、下半期(10~3月)が同31.2%増(16社→21社)で、1年を通じてハイペースで推移した。

発生当事者「会社」が13社でトップ

当事者が「従業員」は「役員」より少数に

発生当事者別では、「会社」が13社で最多だった。次いで「子会社・関係会社」12社、「役員」8社、「従業員」5社の順。前年度から増加が目立ったのは、「役員」(2社→8社)、「会社」(9社→13社)で、不適切会計の温床が会社や役員などの経営幹部にまで及んでいることがわかった。代表者や取締役自らが、架空売上や原価操作などの不正による粉飾決算に手を染めるケースが増加。また、従業員が見せかけの販売成績を上げるために架空請求や原価付け替えなどにより、過年度決算の訂正を行ったケースもあった。

内容別「子会社によるもの」が上位

「子会社によるもの」では粉飾決算が増えた

内容別では、最多が「子会社によるもの」13社、次いで「架空・水増し売上」6社、「在庫操作」1社の順。「その他」の内訳は、「会計処理の誤り」が10社、「原価操作」が4社、「着服横領」が2社だった。「子会社によるもの」は、公表分を含め経営幹部による粉飾決算を主要原因とするものが増え、前年度の5社から13社に急増した(1社で内容が複数の場合は主たるもので集計)。13社の内訳は、最多が「架空売上」の7社。

産業別「運輸・情報通信業」が9社で最多

電気・ガス業は0社を維持。

産業別では、「運輸・情報通信業」が9社で最も多かった。次いで、「サービス業」7社、「製造業」「卸売業」が各6社、「小売業」5社と続く。前年度から増加したのは「サービス業」(2社→7社)、小売業(1社→5社)、運輸・情報通信業(6社→9社)だった。

市場別推移「ジャスダック」13社でトップ

マザーズは昨年のみ0社だった。東証2部は急増

市場別では、「ジャスダック」13社、「東証1部」10社、「東証2部」「東証マザーズ」「地方上場」が各5社の順だった。前年度から増加したのは「東証マザーズ」(0社→5社)、「名証セントレックス」(0社→3社)、東証2部(2社→5社)だった。

調査を開始した2007年度以降の累計では、上場企業数が多い東証1部が70社で最多だった。次いで、上場企業でもオーナー色の強い企業が多い新興市場のジャスダックが56社、東証マザーズが20社と続く。新興市場は財務基盤が比較的脆く、コンプライアンス意識の不徹底も影響していると見られる。