センチュリーが14日に取り扱い開始した「BLACK PAWN CHERRY緑軸キーボード」(緑軸キーボード)と、「BLACK PAWN CHERRY4軸混合キーボード」(4軸混合キーボード)は、非常に特殊なキーボードだ。

両機ともキー内部にZF Electronics社(旧Cherry社)のCHERRY MX軸を備えたメカニカルキーボードなのだが、前者の緑軸モデルでは一般向け製品での搭載がまれな工業用の緑軸、後者の4軸混合モデルでは赤/黒/青/茶の4軸を1枚のキーボード内で採用している。

4軸混合モデルはキースイッチの打ち心地を1枚のキーボードで試す目的で生まれ、2013年10月頃にキートップを排除して軸が露わになった店頭デモンストレーション用モデルが秋葉原界隈で散見されていた。一方、緑軸も4月上旬頃から詳細不明ながら店頭デモを開始しており、ファン垂涎の一品がついに登場した次第だ。

今回、いずれも台数限定販売となる両製品の試作機を試す機会に恵まれたので、簡単なファーストインプレッションを写真とともに紹介していこう。

上がキートップを外した状態の「BLACK PAWN CHERRY緑軸キーボード」、下が同じくキートップを外した「BLACK PAWN CHERRY4軸混合キーボード」。全キーに備えられたバックライト青色LEDも光らせてみる

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センチュリー、CHERRY MX赤/茶/黒/青の4軸混合キーボードと緑軸キーボード

緑軸、4軸混合、開けてみました!

「BLACK PAWN」シリーズは同社のCHERRY MX軸搭載キーボードシリーズとして2013年11月に製品化した。すでに赤軸モデル/黒軸モデル/青軸モデル/茶軸モデルのキーボード4製品が発売している。

今回発売した緑軸キーボードと4軸混合キーボードは、この「BLACK PAWN」シリーズの最新モデル。青色LEDや67キーの日本語JIS配列、DIPスイッチ機能、最大6キーの同時入力などは「BLACK PAWN」シリーズ共通だ。

緑軸キーボードではCHERRY MX 緑軸を採用。緑軸は工業向けの特殊スイッチでの採用が多く、同社が"超レア軸"とうたう通りコンシューマ向け製品では滅多に使われない軸だ。キー荷重60gと重厚な打鍵感が特徴の黒軸よりさらに重い80gの荷重に、青軸のような「カチッ」と鳴るクリック感が特徴。

"超レア軸"な緑軸キーボード。黒軸を超える80g荷重の重厚な打鍵感が特徴

4軸混合キーボードでは、店頭デモ登場時と同じ赤軸、茶軸、青軸、黒軸の4種類のキースイッチを1枚のキーボードに搭載。軸の配置は列で異なる。最上段の[Esc]キー~[Delete]キーまでが赤軸、その下の[Tab]キー~[Enter]キーまでが茶軸、中段の[CapsLock]キー~[}]キーまでが黒軸。手前2段は青軸。それぞれ異なる打鍵感が楽しめる。

4種類のキースイッチを1枚のキーボードに搭載した4軸混合キーボード。キートップを外すと列ごとに軸が並ぶ

いずれもPCとの接続はUSB。対応OSはWindows Vista / 7 / 8。同梱品はUSBケーブルと丸型のキートップ引き抜き工具、DIPスイッチ利用時のキー交換用エクストラキーキャップ(4種類)、取扱説明書/保証書。付属のUSB-microUSBケーブルは約1.5m長で特別な加工は施されておらず、手軽に取り回しできる。

同梱品。キートップはDIPスイッチでキー割り当てを変更した際に使う

外観と機能をチェック

それではまず外観の詳細を見ていこう。外観および機能は両機種共通だ。配列は日本語JIS配列の67キーで小型きょう体。本体サイズはW295×D102×H38mm、重量は約570gだ。

キーピッチは19mm、ストロークは4mm±0.5mm。キートップは日本語表記が省かれアルファベットのみの表示だ。[Fn]キーは下段のカーソルキー右のみ、[Windows]キーは[Space]キー左のみにに配置されており、基本的に特殊な配置はなくスムーズに使用できる。カーソルキーは小型化されず通常サイズで、PFUの69キー日本語JIS配列キーボード「Happy Hacking Keyboard Professional JP」の配列に近い。

前面

背面

左側面

右側面

本体底面にチルト用スタンドはなく、本体全体が手前向けに傾斜している。底面に滑り止めとウエイト(重し)を内蔵し、使用時に滑ることなく安定感は高い。なお、緑軸キーボードは300台、4軸混合キーボードは200台の限定販売。底面にはシリアルナンバー刻印入りアルミ製プレートが貼られ、特別感を醸し出す。

底面

スタンドは非搭載

限定モデルのシリアルナンバープレートが輝く。左側が緑軸キーボード、右側が4軸混合キーボードだが、4軸モデルは店頭試打向け試用機のためナンバー刻印自体が省かれている。製品版では、限定300台の緑軸のシリアルナンバーは1/300~300/300、限定200台の4軸モデルでは1/200~200/200となる

機能面では、ショートカット機能とバックライト青色LED、DIPスイッチに触れておこう。

ショートカット機能では、[Fn]キーと他キーとの同時押しで、F1~F9やPage Up/Down、Print Screenなどから、Webブラウザや電卓の起動、音量調節などの特殊ショートカットも利用可能。キートップ前面には、[Fn]キーと同時押しで使用できる機能が記載される。

キートップ前面には[Fn]キーと組み合わせられるショートカット機能を記載

また、主に暗所での利用を想定したバックライト青色LEDは全キーに搭載。最大輝度ではキーを打つ手元が眩しいほど明るいが、輝度は7段階で輝度が調節できる。輝度設定は本体メモリに保存され、PC終了後に再度PCを立ち上げた場合でも輝度設定が保たれる。なお、ゲーミング仕様のキーボードのように、キートップの英字はバックライトLEDにより光る仕組み。

バックライト青色LED最大輝度

最小輝度。輝度も[Fn]キーと他キーの同時押しで手軽に調節できる

上記の写真ではわかりにくいが、最大輝度の場合非常に眩しい。キートップの文字は透け感があり、LEDにより青く光る

ちなみに[Space]キーにもLEDは搭載されているが、[Space]キーには英字刻印はなく、LEDが光っていてもわからない仕様

DIPスイッチは背面に搭載。1)[Windows]キー→キー操作ロック(変更)、2)[CapsLock]キー⇔[Ctrl]キー(入れ替え)、3)[Esc]キー⇔[E/J]キー(入れ替え)、4)[Windows]キー→[Fn]キー(変更)、の4種類が割り当てられている。このDIPスイッチ対応のキーキャップも同梱される。

個人的には入力言語の切り替えが手軽に行える[Esc]キーと[E/J]キーの入れ替えが特に重宝した。通常でも[Fn]キーと[Esc]キーとの同時押しで[E/J]キーとなるが、E/Jの切り替え頻度が高いため、同時押しという一手間が(手軽に)省けることは魅力的だ。

背面右にあるDIPスイッチ

説明書にはディップスイッチの機能が紹介されている

結論「満足度の高いコレクターズ・アイテム」

筆者は通常Cherry MX 黒軸キーボードを使用している。今回の緑軸キーボードは「黒軸より重い打ち心地」(80g荷重)という事前情報があったが、最初に数回押した印象は「意外と軽い」だった。だが、実際に数日間使用し長文入力など行ってみると、確かに黒軸(60g荷重)より力が必要だ。反発は黒軸ほど感じられない。

青軸より押し下げ圧が高いため強く底打ちしてしまうためか、押した時のクリック音も青軸より大きく感じた。キー反応は良好で、4軸混合キーボードとともに、6キーの同時押しも実際に確認できた。

4軸混合キーボードでは、なんといっても赤/茶/黒/青 4軸の打ち心地が楽しめる点がポイント。「BLACK PAWN」シリーズに限らず内部に軸を採用するメカニカルキーボードはCherry MX軸を採用しているモデルが多いが、4軸を1枚のキーボードに搭載するキーボードは今後もまず出てこないだろう。

欲をいえば、例えば[Enter]キーや[Shift]キーなど小指で使うキーは赤軸で軽く、[Space]キーなど親指で押すキーは黒軸などの設計があればよかったが、実用ではなく試用機として生まれたキーボードなので致し方ない所と思われる。

ほか、共通機能となってしまうが前述の通り青色LEDは初期状態で最大輝度となっており非常に眩しい。[Fn]+[C]で暗く、[Fn]+[V]で明るくなるので、好みに応じて調節したい(ちなみにオンオフは[Fn]+[V])。

4軸混合キーボードは限定200台、緑軸キーボードは限定300台での提供だが、Web上ではまだ購入可能。いずれも実用性というよりはコアなファン向けのコレクター製品の位置付けといえる。今後同様の製品が出回る可能性は少ないと思われ、どうしても気になるユーザーはポチッてしまっても良いだろう(4月30日時点ではまだ在庫あり)。15,800円と若干お高めが、誰かに自慢できる一品であることには間違いない。

「BLACK PAWN」シリーズ共通と思われるがキー内部の機構も興味深かった。左側は緑軸キーボードの[Shift]キー。通常、[Shift]キーや[Enter]キーなど打鍵範囲の広いキーにはスタビライザという金具が付いているが、この両機種ではスタビライザを排して、よりキーが固定できる支えを備えている

一般的なキーボード(写真はCherry MX 黒軸)の[Shift]キーがこちら。銀色の金具がスタビライザ

キートップのフォントは透け感があり、LEDの位置に合わせて上側に配置されている

4軸混合キーボードは非常に壮観! 満足度が高い