米AMDは29日、同社の開発する次世代SoC「Mullins」と「Beema」のアーキテクチャ概要と製品ラインナップを公開した。前世代の「Kabini」や「Temash」から、性能/消費電力比を約2倍に改善したほか、セキュリティ機能の提供にARMの「Cortex-A5」コアを内蔵する。
MullinsとBeema(ともに開発コード名)は、3世代目となる省電力APUで、タブレット向けのMullinsが「Temash」の、薄型ノート向けのBeemaが「Kabini」の後継となる。2013年11月に行われたAPU 13や2014年1月のCESですでに概要は発表されていた。
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いずれも28nmプロセスで製造され、CPUコアをJaguarからPuma+(ともに開発コード名)に刷新。グラフィックスには、前世代から引き続きGCN(Graphics Core Next)アーキテクチャを統合する。またメモリコントローラはDDR3-1866に対応した。
AMDではMullinsの競合として「Bay Trail T」ことAtom Z3770や型番にYが付いた低電圧版「Haswell」ことCore i5-4200Y、Core i3-4010Yを挙げている。その一方のBeemaでは、Haswell世代のPentium 3556U、Bay Trail MのPentium N3510、Celeron N2820、Celeron N2805をターゲットとする。
省電力化の流れを引き継ぎ、インテリジェントな電力管理や回路の最適化、リーク電流の削減により、TDPを引き下げつつも、クロックを引き上げ、性能/消費電力比を約2倍に改善したという。
新たに盛り込まれた電力管理の仕組み「STAPM」(Skin Temperature Aware Power Management)では、プロセッサ自身ではなく、プロセッサを搭載するデバイスの表面温度を基準として、ユーザーが熱を感じる温度(ここでは40度と設定)に達するまで、クロックをブーストする。
「STAPM」の概要。グラフの横軸は時間、縦軸は温度。青線はジャンクション温度でオレンジ線がデバイスの表面温度を表している。表面温度が基準値に達するまで、クロックを上げ続け、基準値に達した場合クロックを下げるという動きになる |
プロセッサ温度を基準とした場合よりも、クロックを引き上げることが可能で、その分消費電力は高まるが、処理が短時間で終了するため、結果的に電力消費を削減できるという。これにより最大63%のパフォーマンス向上が得られると説明する。
このほか、メモリやディスプレイ周りでも省電力化の工夫が採用されており、メモリでは500mW、ディスプレイインタフェースでは200mWの削減が実現したとしている。
また、MullinsとBeemaには、セキュリティ機能の提供を目的として、ARMの「Cortex-A5」ベースとした「PSP」(platform security processor)を内蔵する。PSPでは暗号化処理に加えて、AMDのセキュリティ技術「TrustZone」によってデータを保護しつつ処理が行える。PSPは「TrustZone」のAPIである「TEE」(Trusted Execution Environment)によって提供されるという。