世界では今、日本の"bento"が注目されている。そもそも外国には弁当という文化はなく、外に持っていくランチボックスといえば、ちょっとしたサンドイッチにフルーツと特に手の込んだものではない。この日本の弁当文化に、最初に目をつけたのはフランスであり、その後、イギリスやドイツ、アメリカなどにも伝播していった。そこで、フランス人たちは日本のどんな弁当の具を好むのか調べてみた。

「mussubi」が提供する日替わり弁当「bento special」(13ユーロ、約1,840円)の一例

見るからに愛らしい日替わり弁当

フランス人の日本の弁当への熱は、どの方向に向かっているのか。パリに店舗を構える、日本人女性による「mussubi(ムスビ)」という弁当屋の日替わり弁当「bento special」(13ユーロ、約1,840円)のうち、人気の具をうかがった。

「bento special」で人気の主菜
・鮭の照り焼きレモン
・野菜とおからのガレット 生姜醤油ソース(ベジタリアン)
・タラの西京焼き
・さつまいもとかぼちゃの種のガレット(ベジタリアン)
・糸こんにゃくとパプリカの味噌春巻き(ベジタリアン)
・タラの香草パン粉焼き

日替わり弁当の「bento special」は、おむすび3種とおかず6種がちょっとずつ入っているという弁当だ。おかずは主菜2種と野菜の副菜4種。おむすびと主菜は日替わりで、複数ある中から客自身がチョイスする。野菜の副菜については、毎日固定のものが2種、日替わりが2種となっている。

ひとつの弁当箱にお好みでメニューを選べるスタイルのため、純粋に「●●弁当が人気」というわけにはいかないが、中でも人気がある主菜が上記のものだと、mussubi店長の今井めぐみさんは言う。

フランス人の舌には醤油と味噌が合う?

この人気の主菜を元に、フランス人の嗜好についてちょっと考えてみた。まず、"照り焼き""醤油ソース"に注目してほしい。そもそもフランス人の舌には、"醤油だれ"が特に合うようだ。フランス人は焼きとりのたれのような甘い醤油味の"飯だれ"や、"スクレ"と呼ばれる甘みのある醤油を白米にかけ、好んで食べるのだという。スクレはバニラアイスにもかけるというから驚きだ。

mussubiでは、過去に鮭の色んなアレンジメニューを試したが、結局は"照り焼き"が一番人気で落ち着いたという。「鮭の照り焼きレモン」のたれは、いわゆるトロッとしたたれではない。焼いたアツアツの鮭を、サラッサラの照り焼きだれとレモン汁を合わせたものに漬け込んでいるというスッキリしたもの。醤油のサラッとした感覚が存分に味わえそうな料理だ。

「タラの西京焼き」は味噌味。フランスでは味噌汁も好まれているといわれている。特に味噌やごまをベースとした料理の人気が高いのは、グルテン(小麦)アレルギーの人でも食べられることが理由のひとつでもあるようだ。

いずれにしても、醤油に味噌にごまと、意外にも日本伝統の味がフランス人に受け入れられていることが分かる。

またある時の「bento special」。全体的にヘルシーなメニューが好まれているよう

"bento"の魅力はヘルシーさ

日本では人気弁当メニューといえば「唐揚げ」だが、mussubiでは影が薄いという。それよりもむしろ、野菜やおから、さつまいもにかぼちゃなどの野菜が人気のようだ。とはいえ、統計的にいうとフランス人のベジタリアン人口はそれほど多くないらしい。

では、なぜベジタリアン食が人気なのか。それは、昨今のヘルシーブームからきていると考えた方が良さそうだ。フランスのトレンドを追う若者層が、こぞって弁当レシピ本を買い求めるのも、日本食のヘルシーさを求めているところが大きいのではないだろうか。そう考えれば、肉より魚や野菜などの主菜が選ばれるのには納得がいく。

店長今井さんによれば、フランスでは最近、わかめや昆布などの「海藻類」がブームだという、フランスでは食の雑誌で取り上げられたり、オーガニック専門店でも買えたりと日常生活に浸透している。この海藻類ブームにのっとり、mussubiでもわかめやひじき、昆布などのおむすびや副菜などを提供しているという。 そこで、日替わり弁当「bento special」の人気のおむすびや副菜についても聞いてみることにした。

「bento special」で人気のおむすび
・わかめとごま
・ズッキーニ味噌
・パルメザンチーズと麻の実
・ドライトマトとけしの実
・レンズ豆と玉ねぎの炊き込みご飯
・おかか
・梅干し
・レタスと黒胡椒

「bento special」で人気の副菜
・白菜とりんごとくるみの柚子胡椒和え
・キノアとルッコラとひじきの梅和え
・大根とカブのレモン昆布マリネ
・クレソンとトレビスとマッシュルームの粒マスタード白和え
・セロリといんげん豆の味噌マリネ
・ひじきのペペロンチーノ
・卯の花

最近ではフランス人の若い女性たちも、キャラ弁づくりに励んでいるという。mussubiのコロンとしたおむすびやおかずの色とりどりさなど、"bento"を見て楽しむ魅力も、フランス人たちの感度を大いに刺激しているのではないだろうか。

●imfomation
mussubi
89 rue d’hauteville 75010 PARIS
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※「bento special」中のspecialのeはアクサン・テギュ。記事中の情報・価格は2014年4月取材時のもの