キャパシティ管理機能でデータを自動収集、自動計算
この課題を解決する際に最近よく用いられているのが、キャパシティ管理機能を持つ仮想環境向けの運用管理ソフトウェアです。市場にはいくつかの製品がありますが、以下では、VMware vCenter Operations Manager (以下 vC Ops) を一例として、どのようなことができるのかを説明します。
vC Ops では、仮想基盤の管理ソフトウェア(たとえばVMware vCenter Server)からデータを自動的に収集して、キャパシティ管理に関するさまざまな情報を自動計算し、管理者に見やすい形で整理して表示してくれます。
たとえば、「仮想マシンの平均プロファイル」が下記のように自動的に計算されます。仮想マシンの平均プロファイルとは、仮想マシンの平均的なリソース割当量/使用量のことです。
ここから、仮想マシンが平均で 1.9 の仮想CPUを割り当てられており、実際に利用しているのは694 MHz分のCPUであるということがわかります。CPUでもメモリでも、「割り当てられた」値と「需要」の値が別々に表示されています。「利用量ベース」のリソース管理では、「需要」の値をベースに管理が行われます。
ピーク時だけに絞った平均プロファイルを計算することも可能です。下記は、ピークを自動抽出して(抽出の方法は設定で決めます)、その時間帯のデータのみを用いてプロファイルを計算しています。「有効な需要」の値が増えていることがわかります。
残り容量の自動計算
残り容量も自動的に計算されます。CPUやメモリ、ディスクなど、さまざまなリソースの残り容量が表示されていることがわかります。自分で時系列データを分析することなく、このような分析が自動で行われるのがよいところです。構成変更などがあっても、自動的に追従して値がアップデートされていきます。
ここでは、仮想マシン数で残り容量が表示されています。CPUが残り何GHz、メモリが残り何GB といった直接的な表現だと、人間がその数字の意味を解釈する必要があります。vC Opsでは、前述した仮想マシンの平均プロファイルを用いることで、仮想マシン数で残り容量を表示し、より直感的に残り容量がわかるようになっています。もちろん、GHz/GBといった量で表示することも可能です。
また、ここにはもう一つ工夫があり、さまざまなリソースの中で、もっとも枯渇しているものが強調表示されます。ここでは、CPUが最も残り容量が少ないので、そちらが太字で表示されています。CPUの使い方に注意する必要があることがここからわかるわけです。
最適な統合率も自動計算
vC Opsは、最適な統合率も自動計算します。実際の画面を見てみましょう。
- 「仮想マシン/ホストの比」、すなわち統合率
- 「vCPU:CPUの比」、すなわちCPUオーバーコミットの比率
- 「vMEM:物理メモリの比」、すなわちメモリオーバコミットの比率
この3つの指標に関して、現在値と最適値の2つが示されています。このガイドに従って統合率を上げて行けば良いというわけです。
こうして最適な統合率が求められたら、ここに近づけるようにホストあたりの仮想マシン数を少しずつ増やして行きます。一度に統合率を上げるとパフォーマンスへの影響が大きいので、少しずつ増やし、様子を見ながら上げて行くのがよいでしょう。
ここで役立つのが、vSphere DRSのような動的負荷分散の機能です。仮想マシンを新たにクラスタに加えると、最適なリソース分散状態になるように、仮想マシンを適切なホストに割り当ててくれます。負荷の変動などにもうまく追従して、負荷分散を行います。
実際のシステムにおいては、クラスタごとに最適な統合率を変えるというのも有効な方策です。たとえば、 コストパフォーマンス重視の開発/テスト系と、性能/安定性重視の本番系ではサービスレベルが異なるので、統合率を変えたほうが適切なことが多いでしょう。
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ここまで、仮想環境の運用管理について3回の記事でポイントを紹介してきました。今回紹介したものは仮想環境向けの運用管理ソフトウェアの機能の一部であり、このほかにも性能管理や仮想マシンサイズのアセスメントなど、仮想環境の運用管理に役立つ機能が多くあります。vC Opsには無償評価版もありますので(下部の参考リンク参照)、興味のある方はぜひお試しください。仮想アプライアンスとして提供されているため、ご自身の環境で簡単に試すことができるようになっています。
参考リンク
- vSphere with Operations Management 無償評価版へのリンク(サーバ仮想化プラットフォームvSphereにvC Opsが加わった製品の評価版になります)