Webサービス・ネット・ガジェットを紹介する考古学的レビューブログ『みたいもん!』管理人であり、「ひらくPCバッグ」など、ネット発のカバンプロデュース、著書『マキコミの技術』などの執筆、企業などのアドバイザーも務めるいしたにまさき氏。
いしたに氏は、3月25日に発売した『ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条』(マイナビ新書 徳本昌大・高橋暁子共著)にアドバイスを寄せている。アドバイスの特別拡大版として、いしたに氏が考える「ソーシャルメディアやブログを通して自分の人生を変えていく」ための方法を聞く。
巻き込まれてなんぼ、泳がされてなんぼ
実は驚くことに、いしたに氏が今やっていることは、自分がやりたいと言って始めたもの、やりたくて始めたものは一つもないという。全部誰かがいしたに氏に相談したり、声をかけたりしたことから始まっているのだ。
例えばいしたに氏はこれまでに、「ひらくPCバッグ」「とれるカメラバッグ」などのバックをプロデュースしている。本当は、「僕はクリエイタータイプじゃなくて、社長には向いてない参謀タイプ」。ところが、「バッグを作らない?」と声をかけられたのがきっかけで、プロデュースすることとなったのだ。
書籍の執筆もそうだ。これまでに『ツイッター140文字が世界を変える』『クチコミの技術 広告に頼らない共感型マーケティング』『マキコミの技術』などのコグレマサト氏との共著、『ネットで成功しているのは<やめない人たち>である』などの単著を書いている。そのような著作の執筆も、編集者が声をかけてくれて始めたものだ。
何とブログさえも、やりたくて始めたものではない。元々はそのとき見ておかないと見られなくなる公演などをシェアするためのメーリングリストを書いていた。だから旧ブログ名は「日本全国見たいもんはみたいぞの会」だったのだ。
「読者に『楽しみにしているから投稿続けてください』と言われていて、その頃"ブログ"が始まり、これならWebでもできるかもということで移行したのが今のブログ」というわけだ。そのときに、コグレマサト氏の命名により、現在のブログ名である「みたいもん!」となった。「ずっと巻き込まれてきている。巻き込まれてなんぼ、泳がされてなんぼ」。
毎日書き続けるといいことが起きる
いしたに氏は、「とにかく毎日ブログを書くべき」と主張する。毎日書くことでブログが"基地"となり、陣地が広がっていくからだ。基地を作ることでいいことが起きるようになる。「毎日書くのが大変なのは最初だけ。だんだん書かない方が気持ち悪くなる」。
「開始後半年目ぐらいからいいことが起きてきて、1年くらいたつと更に起きてくる」といしたに氏は言う。実際に起きたことで言えば、例えばバッグのプロデュースだ。積極的にバッグというものを選んだわけではなく、ビジネス上の制約などいろいろと実現性の高いものを考えて「バッグ」に落ち着いた。積極的にバッグを選んだのではなく、どちらかというと消去法で決まったというわけだ。
いしたに氏「ところが、それまで好きだと思っていなかったのに、やってみたらバッグが大好きだったことに気付いた」
既に述べた通り、いしたに氏のしていることは、すべて好きだから始めたというわけではない。しかし、その中にいくつも巻き込まれてやってみたら好きだということに気がついたという。「とりあえずやってみたらいい」といしたに氏はアドバイスする。「未来の自分にとって何が役に立つかわからない。やりたいことがあったらやった方がいい」
さらに、「自分の好きにだまされるな、信用しちゃいけない」とも言う。自分ではラーメン好きと思っていても、ブログの記事がピザの方がずっと多いなら、本当はピザ好きということだ。「自分が思い込んでいることではなく、自然と多く書いてしまったことが好きなことであり、興味があること」(いしたに氏)。
出会いのデザインはブログがしてくれる
いしたに氏がブログを開始したのは2004年のことだ。「ブログの特徴はログが残ることであり、記事の数だけ自分の分身が増えているという感覚」という。
森山大道氏の著作で、『過去はいつも新しく、未来は常に懐かしい』というものがある。タイトル通り、過去は今の自分が発見することで生きてくるし、未来は今のやっていることの延長線上にあるから懐かしいものという意味だ。例えばいしたに氏等ヒマナイヌが過去に取り組んでいたライフスライスは、15年くらいたってやっと当時思い描いていた理想の形のデバイスが登場している。これも、ブログに記録された過去が新しく登場した例だ。
発見してもらうことに一番価値がある
「好きなものを書いているうちに誰かが気づいてくれる。そのためには、みんなが見つけられる場所に書いておく必要がある」といしたに氏はアドバイスする。それがブログであり、Facebookではダメだという。
さらに、「発見してもらうことに一番価値がある。いかに人に見てもらうか、発見してもらうかを意識して書くことが重要なのだ。
アルファブロガーでも、必ず見てもらえない時期を通過している。芸能人でもない限り、最初から見てもらえるということはない。しかし、ソーシャルメディアの普及で、人から見てもらえるチャンスは増えている。「今の自分に想像できない何かを未来に期待するならネットを使わない手はない。想像できる自分のままでいいならやる必要はない。そして、続けるのはやめないということ」。発見してもらうのは、別に3年後であってもいいのですから。
「出会いのデザインはブログがやってくれた」といしたに氏は語る。営業をしなくても声をかけてもらえるのは、ブログが毎日営業してくれている状態だからだ。
読者にとってプラスになる状況こそ著者にもプラス
「記事が読者にとってプラスになる状況を作らないと、著者にとってもプラスにならない」といしたに氏は語る。いしたに氏が主催するブログ講座に参加した、冒頭で紹介した『ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条』の著者である徳本昌大氏は、ブログを書く宿題で、家族でピザを焼いたことを書いたところ、『徳本さんはピザ屋? コミュニケーションデザインをやりたいんでしょ』と赤字を入れられたという。
10年前はブログを書いている人がいなかったからピザでもよかったが、今それで目立つのは難しい。さらに、徳本氏には本業があってネットに近いビジネスをしているため、「2ステップくらいでビジネスにつながるような話を書いた方が読者にとってプラスになる」とアドバイスされたそうだ。
いしたに氏のアドバイスも読める
同書は、何か思いがあるけれど、まだ変えられないでいる人が、ソーシャルメディアを使って不利を有利に変え、人生を変える実践の書となっている。今回登場してくれたいしたにまさき氏の他、コグレマサト氏、松村太郎氏、しゅうまい氏、小川晋平氏、高木芳紀氏、斉藤洋子氏、山田トモミ氏、上原誠司氏、中島大希氏の10人のブロガーが、10ヵ条それぞれに合わせたアドバイスを寄稿してくれているとのこと。
『ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条』(マイナビ新書 徳本昌大・高橋暁子共著)
第1ヵ条 専門たれ
第2ヵ条 アウトプットで自分もまわりも巻き込む
第3ヵ条 手を挙げる準備をしておく
第4ヵ条 緩い絆のコミュニティを作る
第5ヵ条 ソーシャルで出会い、つながり、リアルで会う
第6ヵ条 即レス、即アクションを心がけよ
第7ヵ条 Give&Give 貢献こそがソーシャルメディア
第8ヵ条 仲間を見つけて協力し合う
第9ヵ条 伝える力と聞く力をソーシャリアルで鍛えよ!
第10ヵ条 プラットフォーム(基盤)を作る
※いしたに氏は「第10ヵ条 プラットフォーム(基盤)を作る」に登場