2008年直木賞受賞作で天童荒太の小説『悼む人』が、主演・高良健吾とヒロイン・石田ゆり子で2015年公開に向けて映画化されることが決定し、堤幸彦監督がメガホンをとることが14日、明らかになった。
原作は、作家・天童荒太が7年の歳月を費やし、70万部を超えるベストセラーとなった『悼む人』(文藝春秋刊)。2012年に向井理主演で舞台化し、11都市で5万人を動員した堤幸彦が、舞台に続いて映画化に挑む。脚本は舞台も手掛けた大森寿美男氏。高良が主人公・坂築静人(さかつき しずと)、石田がヒロイン・奈義倖世(なぎ ゆきよ)を演じる。
人が亡くなった場所を巡り、その死を悼む男・坂築静人。その善意が信じられない週刊誌記者・蒔野抗太郎は、「不可解な行動=悼み」に疑念を抱き、裏を暴くため静人の身辺を調べはじめる。悼みの旅で静人と行動を共にする、かつて夫を殺した女・奈義倖世、癌におかされながら静人の帰りを待つ母・巡子、新たな命を授かった静人の妹・美汐。彼らの思いが絡み合い、静人の悼みへとつながっていく。
撮影の約1年前から、オファーを受けていたという高良。「監督がこの作品に懸ける想いに、自分なりの挑み方で、みんなで素晴らしい作品にしたい」とその思いを受け止め、「静人の行動がみなさんにどう映るのか、どう感じるのか、想像がつきません。僕自身、現場に立って毎日探していきます。静人の心に寄り添えるように」とコメント。「石田さんと精いっぱい、2人の役の覚悟にしがみつこうと思っています」と意気込んでいる。
一方の石田は、2011年の『死にゆく妻との旅路』以来、3年ぶりの映画出演。ドラマ『永遠の仔』(2000年)に出演して以来、原作者の天童氏と手紙を通じて交流していた石田は、同書を読み終えた後に「この物語を映像化することがあるのなら、ぜひとも参加したい」という思いをつづっていた。「それが本当に現実になるとは、正直思っておりませんでした」と驚きつつも、「でも、当たって砕けろの精神だったのです。…ですので、わたしは、立候補して、その願いがかなった幸せ者です」と喜びを表現している。
堤監督は、「私はこの作品を舞台なり映像なりでより多くの人々にご覧いただき、世の不条理の痛みを少しでも緩和できればと考えた」と説明。「私ごときの力量で大それた想いだが、作品にしたくて、いてもたってもいられなくなったのも事実である。また作品に敬意を表しこれまでの私なりの撮影手法を一度初期化し『デビュー作』のつもりで挑んでいる」と本作にかける思いを語った。