ニフティは3月20日、スマートフォンアプリ開発を行うエンジニア向けの交流会「『ニフティクラウド meet-up!』~お手軽スマホアプリ開発のススメ!楽して作る人たちがその開発手法を語ります~」を開催した。当日は雨模様ながら、会場には続々と参加者たちが集結し、定員120名の会場はほぼ満席の盛況ぶりを見せた。
それではさっそく、当日の様子をレポートしよう。
アプリ開発を支援する「ニフティクラウド mobile backend」
ニフティ クラウド事業部の佐々木浩一氏 |
まずは、ニフティ クラウド事業部の佐々木浩一氏が「『スマホアプリ開発革命』クラウドで効率的な開発手法を一挙公開」と題した講演を行った。
佐々木氏は冒頭でまず、同社が展開するクラウド事業について解説。オンデマンドで簡単にインフラ構築が行える法人向けのパブリック型クラウドサービス「ニフティクラウド」に加え、「mBaaS(mobile Backend as a Service)」であるスマートフォン向けバックエンド環境「ニフティクラウド mobile backend」を紹介した。
mBaaSは、スマートフォン向けアプリ開発に必要となる汎用的な機能をAPIやSDKで提供し、効率良くサーバ連携アプリが開発できるクラウドサービスだ。サーバ側の機能をクラウドサービスとして提供することで、初期開発費用の大幅な削減およびそれによってもたらされるプロモーション費用の確保、サーバ側開発が要らないスピーディーなサービス展開、クライアントアプリ開発へのリソース集中、といったメリットが得られる。佐々木氏は、米国で2013年にmBaaS関連の買収・提携が相次いで話題となった例を挙げ、「いま一番ホットなクラウドサービスとして、日本も今年"mBaaS元年"を迎えるでしょう」と語った。
ニフティクラウド mobile backendでは、プッシュ通知/会員登録/データストア/SNS連携/ファイルストア/位置情報といった機能を利用可能。さらに、高品質かつ安心安全な国産サービス、国産ならではの充実したサポート体制、高スペック、充実したSDKの提供、基本機能が無料で使える安心の定額料金など、ニフティとして競合他社に対するアドバンテージも強調した。
加えて、講演では、ニフティクラウド mobile backendを用いた事例も公開した。例えばフジテレビジョンとEagleが提供する育成パズルゲーム「パズうま」では、大幅な開発コスト削減とリリースまでの期間短縮を実現している。コスト面では、スクラッチ開発で420万円かかるところを、128万円減となる292万円まで削減。工数については5.25人月から3.65人月まで削減できたという。
「ハローキティ ワールド」では、月額運用コストが海外ASP使用時の約40万円から約3万円になったという。これは年額換算で約444万円の運用コスト削減を実現したことになる。また 「三省堂辞書」では、プッシュ通知をわずか半日で実装することができ、コストを抑えつつもスピーディに機能を追加したそうだ。
佐々木氏は、さらなる強みとしてサードパーティのサービスとの連携もアピールした。2013年11月より連携を開始したアシアルのクライアントサイド開発「Monaca」をはじめ、今後もソニックスのAndroid端末テスト自動化サービス「Scirocco Cloud」、5 Rocks.のアプリ分析「5Rocks」などとの連携を進め、開発からマーケティングまでワンストップで提供できるようにしていくという。効率良くサーバ連携アプリが開発できるクラウドサービスから、さらにその先のマーケティングまで視野に入れ、発展していくニフティクラウド mobile backend。次は、どのようなサービスを提供してくれるのか楽しみだ。
大量のアプリをリリースし続けるためのポイント
Eagleの相澤謙一郎氏 |
続いての講演では、Eagleの相澤謙一郎氏が登壇。「カジュアルゲームを100本つくる方法」と題した講演を行った。
まず相澤氏は、Eagleが手がける多彩な教育事業を紹介した。日本最大のiPhone/iPadアプリ開発講座「RainbowAppsスクール iPhoneアプリ講座」では、1500名以上の受講者を輩出。また、29泊30日の長期合宿でiPhoneアプリ開発を学ぶ「虎の穴」や、高校生を対象とした「iPhoneプログラミング道場」、企業向けの「iPhoneアプリ開発研修」なども行っている。
教育事業と並行し、同社は2010年の創業以来、自社アカウントから148本のiPhoneアプリをリリースしている。例えばフジテレビジョンとの共同企画「怒濤のゲームアプリ1000本ノック!!!」では現在までに103本をリリース。協業や受託も合わせると三百数十本のiPhone/Androidアプリを開発してきた。ダウンロード数は、自社アカウントと1000本ノック企画の累計で1200万を突破しているという。
そんなEagleがこれまでの経験から得た、アプリ開発で生き残るためのヒントとして挙げるものが以下の5つだ。
- プロを育てる(外部登用はきかない)orプロになる
- パートナー(コンテンツホルダー・開発会社)とレベニューもリスクも共有する
- 選択と集中、単一カテゴリまたはテンプレートで勝つ
- 既存事業(サービス)とのシナジーを効かせる
- 勝つまで続ける。勝ち続ける
相澤氏は、近年のネイティブゲーム市場における代表的なトピックスを紹介し、2013年の夏頃からブラウザゲームが姿を消した経緯を説明した上で、現在需要が見込めるアプリについても言及。「パズル&ドラゴンズ」に代表される"重厚長大型ネイティブソーシャルゲーム"、「太鼓の達人プラス」や「ケリ姫スイーツ」といった"やりこみ型ネイティブゲーム"、「マッチに火をつけろ」などの"母集団指示型ネイティブカジュアルゲーム" が主なジャンルとして挙げられた。
こうした分析結果から、同社ではやりこみ型ネイティブゲームを選択し、2013年8月に「ZOMBIE SEAZON」をリリース。息の長いスマッシュヒットを記録しているそうだ。
売上を最大化するためのKPIとしては、ダウンロード数と顧客単価を掲げ、その計算式を次のように紹介した。
売上 = ダウンロード数 × 1ダウンロードあたりの顧客単価
※ダウンロード数(CV) = PV × CVR
※顧客単価 = ダウンロード数 × 課金率 × 課金単価(1回あたりの課金単価×回数)
その上で、相澤氏は「これを最大化させるために重要なのが、運用面におけるユーザーとのコミュニケーションです」と説明する。まずは顧客満足度について分析し、離脱ポイントや離脱率、課金率や課金単価を把握。仮説を立てた上で改善し、バージョンアップやイベントによりユーザーへ告知する、という一連のサイクルを回すことが求められるという。
また、顧客単価を見据えた上での最適なプロモーション施策なくして、売上の最大化は実現できないとも語った。これらはもちろんZOMBIE SEAZONでも行われており、KPIの指標となるデータ取得では「flurry」や「Googleアナリティクス」を使用。事前登録やイベント、プッシュノーティフィケーションによりユーザーとのコミュニケーションを強化したほか、1日1回のTwitter/Facebook投稿でコイン300枚がもらえるという、SNSとインセンティブ設計の連携で拡散性アップも図っている。
しかし、ZOMBIE SEAZONにおいて問題となったのが工数の増大だ。そこで新たにリリースした1000本ノック企画の育成パズルゲーム「パズうま」では、ニフティクラウド mobile backendを導入することで工数1.5人月の削減を実現したのである。「弊社ではオンライン対戦機能に関しての実装経験が少なかったため、もしそこで大きく躓いていたらより多くの工数がかかってしまうところでした。そうした点でもニフティクラウド mobile backendにはかなり助けてもらいました」と語る相澤氏。顧客満足度を最大化する機能の実装という点において、ニフティクラウド mobile backendは売上の最大化と経費削減で大きく貢献したそうだ。
競争の激しいゲーム市場においてヒットするアプリを開発運用していくには、リソースが限られる環境下でもアプリに注力し続けなければならない現実があり、そのためにmBaaSがこれだけ注目されているのであろう。