猫を飼っている人ならば分かっていただけると思いますが、猫の体からは言葉では説明できない良い匂いがしますよね。ミルクやバターの匂いに似ているという表現がされますが、個人的に天日干しした布団の匂いに似ていると感じます。私も猫の匂いが好きで、よく猫の額あたりを嗅いでいます。
猫の匂いのファンは多く、入院猫の面会にくる飼い主さんが愛猫の匂いを嗅いでいる光景によく遭遇します。愛猫の匂いは飼い主さんに安心感を与えるのでしょう。猫はなぜ匂いまで素晴らしいのでしょうか。
(画像は本文と関係ありません)
猫が臭くない理由
まず、猫は良い匂いがするだけでなく、動物なのに嫌な臭いがしません。猫を飼ったことがない方がしばしば主張する「猫は臭い」というのは、尿臭のことを指摘していることがほとんどです。確かに猫の尿臭は強烈です。これは尿の濃度が他の動物よりも高いためです。猫が臭いと誤解されることがないよう、猫トイレはきれいにしておきましょう。
猫は待ち伏せ型
猫はもちろん獣ですが、猫を嗅いで獣臭いと思う人はいないでしょう。猫は待ち伏せ型の狩猟動物です。そのため獲物が近づいた際に、居場所が体臭でばれてしまっては狩りを成功させることはできません。その結果、動物の中では体臭が少なくなったのだと言われています。
猫はきれい好き
猫は、暇さえあれば毛繕いをしています。元々体臭が少ないうえに、さらにこまめにお掃除をするのですから、獣臭さがほとんどないのも納得です。
また猫にとって毛繕いは、体調のバロメーターにもなっています。「毛並みがボサボサになったな」と感じたら一度動物病院で相談しましょう。
猫は日なたぼっこが好き
猫は太陽の動きに敏感です。午前と午後でお昼寝する場所を変えるのは当たり前、日なたを求めて数歩の移動をいとわないのが猫です。
天日干しの殺菌効果によって、臭いの原因になる皮膚の細菌やカビを退治できます。天日干しは毛並みをサラサラに乾燥させる効果もあるので、さらに細菌やカビが増殖しなくなります。
匂いの原因は?
猫の体臭が少ない理由はわかりましたが、あのなんとも言えない甘い匂いの原因は何なのでしょう。
太陽の匂い?
天日干しした布団の匂い、いわゆる「太陽の匂い」。これは布団に付着した汗、脂肪、洗剤等が、太陽の熱で分解された匂いと言われています。具体的には、アルコールや脂肪酸がこれにあたります。
猫の毛皮に洗剤は付いていませんが、汗や脂質はもちろん付いています。猫は毎日日なたぼっこをするので常に干したての布団のような匂いがするのかもしれません。
猫フェロモンの匂い?
一般的にフェロモンというと異性を刺激する「性フェロモン」をイメージしますが、他にも外敵の存在を仲間にしらせる「警報ホルモン」、ストレスを緩和させる「安寧ホルモン」などがあります。
特に安寧ホルモンが猫の匂いに含まれていれば、良い匂いと感じるのかもしれません。しかし、フェロモンは同じ種の動物にしか効果はありません。そして誤解されることが多いですが、フェロモンは基本的に無臭です。
そのため、猫のフェロモンが人間である私たちにリラックス効果をもたらしているとは考えにくいです。
まとめ
猫の毛並みから漂う匂いは、匂いが似ていること、匂いの原因として矛盾がないことから「太陽の匂い」ではないかと推測されます。
しかし、天日干しした布団の匂いとは若干異なるので、猫特有のなにかが匂いの原因になっているのでしょう。それはフサフサの毛並みによる触感の良さが影響しているのかもしれないですし、大好きな愛猫から香ってくるので余計に良い匂いに感じるのかもしれません。
理由はともあれ、まだ嗅いだことは無い方はぜひ一度猫の匂いを嗅いでみてください。なんとも言えない匂いに癒やされることでしょう。
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■著者プロフィール
山本宗伸
職業は獣医師。猫の病院「Syu Syu CAT Clinic」で副院長として診療にあたっています。医学的な部分はもちろん、それ以外の猫に関する疑問にもわかりやすくお答えします。猫にまつわる身近な謎を掘り下げる猫ブログ「nekopedia」も時々更新。